「一人でも理解者がいれば、ありのままでいられる」ミレニアル世代の経営者が考える“自分らしい”働き方
近年、よく耳にする「自分らしく働く」というワード。では、現代を生きる20’sの”自分らしさ”とは何なのだろうか。
そこで、ミレニアル世代の女性に向けて「自分らしく、夢を叶える」事業を展開しているSHE株式会社の中山紗彩さんに聞いてみた。SHEでは、20代~30代の女性たちが、自分が本当に”好き”なものを見つけ、それを生かして働くための学びや仕事機会をサポート提供する場所、『SHElikes(シーライクス)』というサービスを提供している。多くの20代を見てきた若手経営者に、自身の経験も踏まえて語ってもらおう。
人の目よりも「納得感」を大事にしたい20代女性が増加中
出世にはあまり興味がなく、自分らしさを大切にしている人が多いと言われる今の20代。そんな志向の変化を、中山さんはSHEを運営する上で強く感じている。
「以前SHEが20代女性に向けて行ったアンケートでは、多くの人が、幼少期からアーティストやデザイナーなどの『クリエーティブな仕事』への憧れを持っていることが分かりました。そして大人になった今も、ただの作業ではなく自分で考えて価値を創造していくような『クリエーティビティー』が求められる仕事がしたいと思っている人が多かった。幼い頃から持つ自分の志向を貫き、やりたいことに向かって進もうとする姿勢は、この世代ならではの特徴と言えます。そういう姿が、ともすると上の年代には、夢見がちな印象に映るかもしれないですね」
従来の「若手」の多くは、会社やクライアントから与えられた仕事をこなすことが求められていた。だからこそ、要望に応えるために長時間労働をするような、“ガッツ”で乗り切る姿勢が美徳とされていたのだろう。しかし時代の変化とともに若手ビジネスパーソンに求められるスキルも変化している。
「今は世の中にモノやサービスがあふれ、機能面での差別化が難しい。そんな時代には、情緒的な価値を生み出すことが重要になってくると思います。単一的なスキルやマインドではなく、ニッチな専門性を持つ人や、自分ならではの仕事を生み出すことができる人がこれまで以上に求められるようになっていくはずです。
そのために不可欠なのが、心のゆとりや自分の”好き”という気持ち。やるべきタスクで頭がいっぱいの状態では、仕事でクリエーティビティーを発揮することはできませんから。実は今の20代ビジネスパーソンの志向って、時代のニーズとマッチしているんだと思います」
一度就職の経験を経たことで「自分の価値が創造できる仕事がしたい」と改めて気付く人も少なくないそうだ。
「例えば親世代は『安定した大手有名企業で働くのがいいことだ』という価値観の人も多いですが、最近は、人からどう見えるかではなく、自分自身の納得感を大切にする人が増えてきていると感じます。『尊敬できる人と働ける』とか、『扱っているサービスや仕事内容に共感できる』とか、自分が心からやりたいと思える仕事に就きたいと考えている20代の女性はすごく多いんです。SHEにも、自分が望む仕事に必要な専門スキルを身に付けて、キャリアチェンジしたいと考える女性たちが集まってきていますね」
問題児扱いされた学生時代。やるせない思いが生んだ“強い信念”
中山さん自身も、91年生まれのミレニアル世代だ。そして彼女もまた“自分だけの価値”を発揮することに、働く価値を見出している。
「私の両親や祖父母も会社を経営していたので、幼い頃から自然と『働くことは、自分を生かして世の中への価値提供をすることだ』と思っていました。自分は何がやりたいのか、どんなことができるのかを考え、私にしかできないことを創造していきたいという気持ちがあったんです。だからこそ、自分自身も、そして周りも、納得感のある自分らしい人生を歩めるような世界をつくりたい。そんな想いからSHEを運営しています」
その背景には、無意味なルールを守らなければいけない環境下で、不満をつのらせていた学生時代の経験がある。
「私は小学校から高校まで一貫の女子校に通っていて、10代の頃は厳しい制約やルールの中に押し込まれるような生活をずっと送っていたんです。理不尽と感じるルールに対して、なぜ守らなければいけないのか? と先生に聞いても、返ってくるのは『決まりだから』の一言。満足のいく対話ができず、問題児扱いされることもありました」
そんなモヤモヤを救ったのは、20代で外の世界に飛び出し、いろいろなチャレンジをしたからこそ。
「21歳の時に、何か自分達にできることをやろう、と仲間内で考えて、パジャマのファッションショー『パジャコレ』を開催しました。それがすごく好評で、協賛企業も30社ほどついて。そこから、企業の商品開発やマーケティング支援なども手掛けるようになったんです。この経験を通じて、起業家の方など、多くの方との繋がりもできました。
その後、就職したリクリートでは新規事業の立ち上げを経験したり、転職先のスタートアップでも取締役として自分が主体となって仕事を進めることができました。そこで、自分でとことん考えて、納得して価値をつくっていくことが充実感につながっていくと学んだんです」
やるせない思いを抱えながら過ごした時期があったからこそ、「自分で決めた、自身にしかできない価値」を発揮したいと強く思った。そんな中山さんの想いが、SHEを立ち上げた根幹にある。
“ポジティブな理解者”が、自分らしさを強めていく
では中山さんが目指す「納得感のある、自分の価値を発揮できる仕事」とは、どのように見つければいいのだろうか。
「周りの意見に左右されるのではなく、自分が心から熱狂できる領域をまず探すのがいいと思います。心から共感できないものには、のめりこめないはずですから。私の場合は熱狂できるものを探すために、とりあえず行動を起こすことを意識していました。
初めてチャレンジした『パジャコレ』も、最初から大きな結果を見据えていたわけではなかった。リアルイベントやマーケティングなど、興味がある分野を組み合わせて、とにかくできることをやってみよう、からスタートしたものなんです」
行動を起こすことにハードルを感じてしまい、一歩踏み出せない人には、「まずは仲間をつくってみるといいと思う」と中山さん。
「私は、同じ熱量や、ポジティブな意識を持った人が集まる組織に身を置いて、そこでビジョンを共にできる人を見つけられた。『パジャコレ』は、学外の活動をやっている人の集まりの中で企画したものですし、SHEを一緒に創業したCCOの福田と出会ったリクルートも、熱量の高い人が集まる組織でした」
一人でも理解者がいれば、自分らしく、ありのままでいられる。その思いを強く持つようになったのは、窮屈に過ごしていた学生時代に、母からかけられた一言がきっかけだ。
「学校の規則や先生たちの言葉に、納得いかないながらも最初のうちは従っていました。その様子に母が気付いて『自分が考え抜いて正しいと思うことなら、周りの目を気にせず、思いをぶつけたらいい』と言ってくれたんです。そこから、人に媚びたり合わせたりするのはやめて、自分の思いに従って行動しよう、と思えるようになりました。そうやって理解し寄り添ってくれる人がいたことで、救われたんです。だから私も誰かに寄り添える人になりたいですし、自分らしく生きたい人たちの拠り所になれるよう、SHEを育てていきたいと思っています」
自ら好きな道を選び、認めてくれる仲間を見つけ、自分だけの価値を創造すること。それが中山さんが考える、“自分らしい働き方”なのだ。
「自分の美学にとことん向き合って、そこに沿う選択をすること。そうして生まれた“自分が本当に納得できること”に熱量を持って取り組めば、成果は自ずとついてくるんだと思います」
取材・文/中村英里 編集・撮影/大室倫子(編集部)
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