“個性で稼ぐ”これからの生き方って? スキルシェアサービス『REQU』プロダクトオーナーに聞く
「副業解禁」という言葉が飛び交った2018年。「パラレルキャリア」なんてワードを耳にする機会も増えたけれど、実際問題、本業とは別の場で収入を得るなんてことは、特別なスキルを持った人のみに限られた“自分とは関わりのない話”だと思っている人も多いのでは?
でも実は、資格や実績では測りきれない“自分の個性”が価値になる時代がやってきている。そう話すのが、株式会社サイバーエージェントの岡本あずささんだ。
スキルシェアリングサービス『REQU(リキュー)』のプロダクトオーナーとして活躍する岡本さんは、今、「好きなことが経済になる」社会を目指して奮闘中。「個の時代」と言われる現代ならではの働き方/生き方を、岡本さんと共に考えてみた。
※この記事は姉妹媒体『Woman type』に掲載されたものを転載しています。
本業を生かし、『REQU』でスキルシェア。
半年で1000万円以上売り上げた一般人も
続々とプロダクトが生まれるサイバーエージェントから、2018年6月、また新規サービスが生まれた。それが、『REQU』だ。個人のスキルを商品として売買し、お金に換えるスキルシェアリングサービスの一つとして、開始以来、着実にカスタマー数を増やしている。
審査を通った強い発信力を持ったセラー(販売者)を多く抱えた『REQU』では、サイト制作やイラスト作成など従来のクラウドソーシングサービスに見られるスキルシェアにとどまらず、恋愛相談やダイエットアドバイスなど、多彩な商品を展開。薬丸裕英さん、倉持由香さんなどの著名人からさまざまな分野で活躍するインフルエンサーまで、幅広いジャンルのセラーが支持を集めている。しかし、こうした有名人だけに限らず、一般の人でも商品次第で一気に販売数を増やせるのが『REQU』の特徴だ。
「例えば、それまで知る人ぞ知る存在だった地方在住のボディーメイクトレーナーさんが、『REQU』を使って講座を販売し、一躍ブレイクしたケースも。また、別の20代の女性の方で、約1000万円の売上を半年の間に叩き出した方もいらっしゃいます」
他にも婚活コンサルタントや美容家など、女性が気になる情報を発信するセラーが『REQU』では数多く活躍している。人気の秘密は、オーダーメイド感。情報過多のこの時代、自分に最適な情報を取捨選択するのは難しい。持ち前の知識やノウハウを生かし、カスタマー一人一人に合ったプランを作成できるセラーや、パーソナライズが可能な商品にリクエストが殺到している。
“スキル”ではなく“個性”を経済に変換する時代
だが、そんなふうに見ず知らずの人から必要とされるスキルを持っている人なんてごくわずか。多くの人にとってこうしたスキルシェアリングサービスはカスタマーとして利用するものでしかないと思いきや、岡本さんは「誰にでもセラーになれる可能性はある」と話す。
「確かにスキルシェアリングサービスと聞くと、何か特別なスキルがなければセラーにはなれないと思うかもしれません。でも、『REQU』で売買されるのは、“スキル”ではなく“個性”だと定義しています」
資格や実績に裏付けされた“スキル”ではなく、その人が持っている“個性”が商品になる。それが、コンセプトだと言う。
「私たちのベースにあるのは、個人の個性を価値にしていきたいという想い。自分では特に有益だと気付いていないけど、実は誰かの役に立つ情報って誰でも持っているはず。そうした個性を経済にすることが、『REQU』のミッションです」
例えば、岡本さんの趣味はピクニック。それも単にピクニックに出かけるだけでなく、オシャレな椅子やテーブルを用意したり、お花で飾ったり、参加した人のテンションが思わず上がる、キュートで華やかなピクニックに“盛る”ことに並々ならぬこだわりがあるのだそう。
「ある時、私のピクニック写真を見た会社の同僚が、『お金を払うから私のピクニックもコーディネートして』って言ってくれたことがありました。自分の中にある“好き”が、実は他の誰かにとってお金を払ってでも手に入れたいものであることって、実は十分にあり得る話。『REQU』を使うことで、まだ顕在化されていない自分の中にある価値を需要に変換することができるんです」
オシャレが好きならファッションコーディネート。絵を描くことが得意な人なら似顔絵。普通ならビジネスにつながるとは思えない趣味や特技がヒット商品となり、人気セラーとなる。ひと昔前なら夢物語にしか聞こえなかったそんなストーリーも、SNSの浸透した現代では十分に可能性のある話だ。
「好きなことにとことん執着することが価値につながるのが今の世の中。そして、好きなことを発信し続けることで、本業に役立つ面もあるんです」
例えば、セラーとして認知度を上げていくためには、自己プロデュース能力が不可欠。どうやったら自分の商品を多くの人に知ってもらえるか。多くのリクエストを集める人気セラーはどんな発信をしているのか。仮説と検証を繰り返すことで、徐々に基盤が形成される。こうしたPDCAをまわす力が、仕事において有用なことは説明不要だろう。
人から言われる「ありがとう」の数が幸せを左右する
副収入としてのメリットはもちろんあるが、『REQU』がもたらすメリットはお金だけではない。それ以上に、会社員生活だけでは味わえない喜びがセラーにはある。
「一番はたくさんの人から『ありがとう』と言ってもらえること。誰かの役に立っていると思えば、それだけで頑張れますよね。『何のために働いているんだろう』ってふと立ち止まって考えたくなることって、仕事をしていれば誰にでもある。そんなとき、人から『ありがとう』と言ってもらえるだけで、自分は必要としてもらえるんだって気持ちになれる。そういう幸せな経済を『REQU』でつくりたいと思っています」
もちろん会社での仕事でも喜びを感じる場面はある。だが、どうしても「やって当たり前」と思われていたり、エンドユーザーと接する機会がなくて、自分の仕事がどう社会に貢献しているのか見えにくいことがあるのも現実だ。
好きなことを発信することで、知らない誰かが幸せになる。その感謝を直接感じることで自己肯定感を高める。会社員ではないバイネームの世界には、そんな幸せなスパイラルがある。
「『ありがとう』と人から言われる回数が、月に1回の人と100回の人。どちらが幸せかと言えば、年収や生活がどうであろうと、100回の人の方が幸せだと思います。普段なかなか仕事でそういう喜びを感じられない人にとって、『REQU』でのセラーが『ありがとう』を感じられる場になれたら嬉しいし、セラーが発信した情報でまたたくさんの人が幸せになれる。そういう幸せの連鎖を生み出していきたいんです」
副業元年と呼ばれた2018年が終わり、2019年は副業ライフの確立期。スキルではなく、自分の好きなことや個性を経済にするという『REQU』のマインドが、日本の副業に対する概念を変えていくのかもしれない。
取材・文/横川良明 編集・撮影/栗原千明(編集部)
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