副業部下を持つリーダーたちが告白! 本当に“身になる”副業のポイント【浜田敬子×城みのり×管大輔】
近年副業を解禁する企業が増えた。副業を経験することは、本業とは違う新しい自分の可能性を見出し、5年後、10年後のキャリアの幅を広げることにつながる。
ただその一方で、副業をすることで仕事と私生活のバランスが崩れ、体調を崩してしまったり本業がおろそかになってしまったりする場合もあるようだ。20’sが副業と本業のバランスを上手く取り、力をつけていく仕事の仕方はあるのだろうか。
そのヒントを2019年4月4日に行われたイベント『スキルアップに繋がる副業には”秘密”がある!副業戦国時代を生き抜く「キャリア術」を学ぼう!』から紹介する。数多くの“副業部下”を見てきたリーダー3人に、“本当に身になる副業”を教えてもらおう。
登壇者
Business Insider Japan統括編集長・ 浜田敬子さん
1989年に朝日新聞社に入社。99年AERA編集部へ、2014年編集長に就任。16年5月より朝日新聞社総合プロデュース室プロデューサーを経て、17年3月末退社。同年4月より世界17ヶ国に展開するオンライン経済メディア『Business Insider』の日本版統括編集長に就任。『羽鳥慎一モーニングショー』や『サンデーモーニング』などにコメンテーターとして出演している
株式会社グローバル・カルテット 代表取締役・城 みのりさん
2002年、米アパレルメーカーの国外ライセンス管理を行う事業会社を共同設立。08年に事業譲渡し、事業会社でマーケティング部のアシスタント業務に就く。その後、マーケティングリサーチャーとして勤務。出産、育休を経て職場復帰するも16年8月に退職し、フリーランスのリサーチャーに。18年3月株式会社グローバル・カルテットを設立
株式会社ガイアックス ソーシャルメディアマーケティング事業部 事業部長・管大輔さん
2013年、株式会社ガイアックス入社。26歳で同社最年少の事業部長に抜擢。働き方改革に取り組んだ結果、事業部の離職率を約40%から0%に低下させ、売り上げを5倍にした実績を持つ
本業を含めた「全体のタスク管理」が、副業成功の鍵を握る
――今日は3社から、副業部下を持つマネジャーに集まってもらいました。皆さんはどのような形で副業部下をマネジメントしているんですか?
管大輔(以下、管):うちは会社が副業を全面的に解禁しているので、副業をしているメンバーは多いです。最近は入社時点ですでに副業を持っていることも珍しくないですね。なのでマネジメントする側は、副業ありきでメンバーの業務やキャリアを考えていますね。
城みのり(以下、城):うちの場合はメンバーのほとんどが当社の業務を副業としています。完全リモートワークのリサーチ業務をお願いしているので、私は主にオンライン上で業務管理を行なっています。
浜田敬子(以下、浜田):うちは会社自体は副業を完全に認めているわけではないのですが、私が個人的に認めてもらっているので、部下にも原稿の執筆依頼やTVの出演依頼がきたときにはOKを出しているという感じです。とはいえ単発の仕事がほとんどなので、業務管理とかはそれぞれに任せていますね。
――メンバーをマネジメントする側から見て、「副業社員が陥りがちな失敗」ってありますか?
城:最初は「工数管理」をうまくできない人が多いですね。工数を少なく見積り過ぎて業務過多になってしまったり、逆に多く見積もりすぎて、時間が余ってしまったということもあります。
管:工数管理ができなくて「パンクする」という失敗はよく聞きますね。実際に副業をしているメンバーで、「日に日に元気がなくなってきているし、本業のパフォーマンスも落ちているな……」と感じるときがあって。よくよく聞いてみたら、本業と副業の業務整理ができていなくてパンクしているということが判明しました。
――その方は副業で何をやっていたんですか?
管:スタートアップの会社でマーケティング支援をしていました。その会社は土日のイベントがあったりして、副業にしては業務が多かったようです。彼はいつも「本業で終わらない仕事は残業でカバー」していたのが、その残業時間も全て副業に取られてしまっていました。そのせいで、今までのペースで仕事ができなくなっていたと。そこで、彼には毎週1回、副業も含めたタスク管理のレビューをすることにしたんです。
――副業も含めたタスク管理! そこまでやってあげたんですね。
管:副業がうまく回っている人を見ると、副業を始めたことで本業の質も上がるパターンが多い。でも、全体のタスクブレイクができていないと、そういう良いスパイラルに入ることができなくて、失敗してしまうんです。なので、副業を含めた全体のタスク管理を手伝ってあげることで、本業にも良い影響があると思っています。
副業で明確な「目標」と「覚悟」を持つことは、本業にも役立つ
――副業を始めるときにどんなマインドが必要だと思いますか?
管:「成果を出す覚悟」です。そうでないと、今後にもつながらないですし、周りからの信頼もなくなってしまう。僕がメンバーにいつも言っているのは、「副業はどんどんやっていいけれど、本業・副業どちらも成果を出す覚悟でやり切って」ということです。
城:その通りだと思います。あとは、「1年先を見るイメージ」も大事ですね。副業を始める時期が同じでも、「こういう風になりたい」という目標を持っているメンバーと、仕事だからと淡々と行うメンバーとでは、成長のスピードが全然違うと感じます。
――実際に成長された方のエピソードがあればぜひ聞かせてください。
城:あるメンバーは、「1年後、子どもの受験が終わったらフルタイムでしっかり働きたい」と話をしていて、そのためには今どういうことに注力していくと自分の目標が叶うかを考えてチームで副業をしていました。そうやって目標を持ったことで、モチベーションもアウトプットの質もどんどん上がり続けたんです。そして1年がたった今年の4月から、副業で培ったスキルを生かしてリサーチ関連のシンクタンクで働いています。たとえ副業だとしても、明確な目標があった方が本業にも役立つし、良いことづくめだと思いましたね。
やりたいことがないなら、無理して副業する必要はない
――覚悟と目標を持って「副業を始めたい」と考えても、自分のスキルが通用するか分からなくて、一歩踏み出せない人も多そうです。
城:その仕事が1から10までできないから断る、というのはすごくもったいない。自分ができる部分はどこなのかを提案して、まずはやってみたらいいのに、と思います。せっかく一部でもできることがあるのに、自己評価が低くて手を出さない方は意外と多いんですよ。
――なるほど。スキルが足りないと「お金がもらえなくてもいいからスキルアップを」と考えてしまいそうですが、いかがでしょうか?
浜田:私も最初は金額交渉が苦手で、「いくらでもいいです」と言っていたのですが、そうすると自分のバリューがどんどん下がってしまうんだと気付きました。私がやらなくてもいい仕事まで、余計に請け負うことになってしまう。だから最近は「いつもはこのくらいの金額でお受けしています」と伝えるようにしています。副業をするときは、「自分の1時間はいくらなのか」と、値付けをちゃんと考えた方がいいと思いますよ。
――管さんはいかがですか? 副業を始めようと考えている方にアドバイスをお願いします。
管:副業をする上で、本業とは別の仕事がしたいだけなのか、どうしてもやりたいことがあるのか、自分がどちらなのかを考えることが大切だと思います。どうしてもやりたいことがあって、それが副業という形になった、くらいの思いの強さが大事ですから。そこまで気持ちが高まっていないのなら、本業に力を注いだ方がいいこともあります。そうやって社内でのポジションが上がれば、いざやりたいことができたときに自分の意見を通しやすくなるでしょうし。やりたいことがないなら無理して副業にトライする必要はない、ということも選択肢の一つとして考えておくべきです。
文/安藤記子 撮影/大室倫子
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