【Kis-My-Ft2玉森裕太インタビュー】「表舞台に立つ僕と、普段の僕は全然違う」4年ぶりの映画主演で見せた進化
アイドルグループ・Kis-My-Ft2の一員として輝く一方で、ドラマや映画など俳優としての活躍も目覚ましい玉森裕太さん。2019年5月31日公開の映画『パラレルワールド・ラブストーリー』では4年ぶりに映画主演を務め、新境地を切り開いた。
アイドルという立場でありながら、自他ともに認めるシャイな性格だという玉森さん。前に出るのがあまり得意ではない、というのはファンの間でも有名な話だ。
「僕は自分に自信がないタイプ。自分で大丈夫なのかなって怖気づくことは今でもよくあります」と照れくさそうに話す玉森さんだが、その仕事に取り組む姿勢を聞いてみると、プロフェッショナルとしての“芯の強さ”を垣間見ることができた。
※本記事は姉妹サイト『Woman type』より一部編集して転載しています。
役作りは「自分の良いところ・嫌なところ」を書き出すことから始めた
今回『パラレルワールド・ラブストーリー』でメガホンを取った森義隆監督とは、2013年に発表されたショートムービー『LUCKY SEVEN!!』以来、2度目のタッグ。「玉森くんと心中する覚悟を決めていた」と並々ならぬ意気込みを述べる森監督に対し、玉森さんは「監督はドSです(笑)」とユーモアたっぷりにコメントした。
「監督から『自分という人間と向き合ってほしい』と言われて、まずやってみたのが自分のことを箇条書きにしてみること。玉森裕太、28歳、という基本プロフィールからスタートして、どういう性格なのか、自分の良いところも嫌なところも、分かる範囲ですべて書き出してみたんです。こんなふうに自分自身と向き合う機会なんて今までほとんどありませんでした」
そう言って、玉森さんは照れ臭そうに目尻を垂らす。
「おかげで新しい発見がいっぱいありました。僕って嫌なやつだよなと思うこともいっぱいあったし。具体的にどこがっていうのは、 恥ずかしくてここでは言えませんけどね(笑)」
そうくすぐったそうに微笑む横顔は、多くの女性たちを夢中にさせるのも納得の愛らしさ。だが、スクリーンに映る玉森さんの顔は、今まで見たことないほど大人っぽくて、苦悩に満ちていて、「映画俳優・玉森裕太」の真価を堂々とフィルムに焼き付けている。
「難しい役でしたが、撮影期間中はすごく芝居に集中できた手応えがありました。僕は基本、あまり引きずらない性格なんですけど、クランクアップの後はしばらく何も考えられないぐらい、何をしても力が入らなかったんです。それだけ今回の役は自分の限界まで、全力で演じてさせてもらいました」
「怒られるのはうれしい」
意外な言葉の裏にある真意
玉森さんが演じた崇史は、目覚めるたびに異なる2つの世界を行き来し、混乱と嫉妬に翻弄されるキャラクター。その精神状態を体現させるため、森監督は玉森さんに「ギリギリまでプレッシャーをかけた」と証言している。
「監督と僕の関係は、SとMみたいなもの(笑)。でもそんなふうに追い込んでもらえるのって良いことだし、苦だとは思わない。厳しくされるのが、うれしかったんです」
それは、ちょっと意外な答えだった。今の世の中は、「褒めて伸ばす」が主流。公益財団法人日本生産性本部の調査でも、上司から叱られると「やる気を失う」と回答した一般社員が59.4%と、「やる気になる」の40.0%を大きく上回った(第4回「職場のコミュニケーションに関する意識調査」より)。
だが、そんな「追い込んでもらえるのっていいこと」という言葉に、競争の激しい芸能界で玉森さんが10代の頃から活躍できている理由が垣間見えた。
「最近すごく感じているんですよ、怒られることがなくなったなって。それこそジュニアのときは毎日アホみたいに怒られていたのに(笑)。いろんな人から怒ってもらえたおかげで成長できた実感があるんです」
玉森さんが事務所に入所したのは2002年。まだ11歳の頃だ。ダンススキルも、礼儀や業界の慣習も何も知らないまっさらな少年は、多くの叱咤激励を糧に、ぐんぐんと成長していった。
「怒られるって、それだけ自分のために誰かがエネルギーを使ってくれているということ。逆に、そういうことをしてもらえなくなるのって、すごく悲しいことでもあると思うんです。だから怒られると今でもちょっとうれしくなるんですよ。追い込んでもらえるとうれしいのは、それに似たところがあるのかもしれない」
玉森さんの言葉は、キャリアをある程度重ねた世代なら、きっと共感できるはずだ。いつの間にか何となく仕事をこなせるようになり、新人の頃のように自分の不手際や力不足を注意されたり叱責される機会は格段に減った。それはストレスという意味では確かに減っているけれど、その反面、心の中はざわついてしまう。果たして本当に自分は成長できているのだろうか、と。
玉森さんが4年ぶりの主演映画で俳優としての進化を証明したのも、追い込まれる環境に自ら飛び込んでいくタフさがあったからだろう。
自他共に認めるシャイな性格。切り替える秘訣は“腹をくくる”こと
一方で、映画主演となれば作品的にも興行的にも背負うものが大きい。玉森さんも「プレッシャーはものすごく感じました」と素直に打ち明ける。
「そもそも表舞台に立っているときの僕と、普段の僕は全然違う。プライベートでは、基本そんなにニコニコしていないですしね(笑)」
そうはにかむ表情に、恥ずかしがり屋の素顔が覗く。だが、決して前に出る性格ではないにもかかわらず、玉森さんはステージに立てば堂々と観客を魅了し、こうしてグループ外の活動でも責任あるポジションを任されている。
同じように、自分の性格と、仕事で求められる性質にギャップを感じている読者はきっと多いはず。玉森さんはどうやって自分のマインドを切り替えているのだろう。
「何だろうなあ……。すごく究極的な話になっちゃうんですけど、結局は“やらないと終わらない”じゃないですか。逆を言うと、どんなことでも、やれば終わる。そう腹を決めちゃうのは大事かなという気がします」
そんな潔すぎる回答も、玉森さんらしい。確かに、「やれば終わる」という腹決めは、時に憂鬱になりがちな仕事シーンにおいて、とても大切な心掛けだ。そう答えてから、もう少し考えるようにして玉森さんは一度言葉を区切り、「ただやるだけじゃなくて……」とこんな話を始めた。
「仕事である以上、やったことに対して何かしら評価だったり影響がついてくる。あまりそういうのを気にする方ではないんですけど、やっぱり気になることも確かなので。ちゃんと自分の中で目標を立てて、それをクリアすることは意識しています」
今回の映画でも、玉森さんは監督からのあるオーダーをずっと胸に刻みこんでいた。
「監督からは何度も『惹き込んでほしい』と言われていました。ガッと感情を外側に発散するんじゃなくて、内面に秘めることで、つい観る人を惹きこむような芝居をしてほしいって。僕はずっとお芝居って発散するものだと思ってたから、それはすごく難しい課題でした」
今まで演じたことのないような役。今まで知らなかったアプローチ。玉森さんにとってこの崇史は、そうした未知のものに正面から対峙する役だった。だからこそ、観客もまた今まで見たことのない玉森裕太にスクリーンで出会えるのだ。
「監督の望んでいたことがちゃんとできていたのかは自分では分からないけれど、おかげでいろんなことを学べた現場になりました。この“惹きこむ芝居”をやり遂げたことは、これからの武器になる。また次に生かせる機会があれば、有効活用したいなって思います」
控えめな性格の芯にあるのは、こうした謹厳実直さ。目の前で眩しく輝くトップアイドルは、まぎれもない努力のプロフェッショナルだった。
取材・文/横川良明
累計発行部数150万部を超える東野圭吾の大ベストセラー小説「パラレルワールド・ラブストーリー」。映像化不可能と言われ続けてきた傑作ミステリーが、ついに待望の映画化!
監督:森義隆
原作:東野圭吾
脚本:一雫ライオン
キャスト:玉森裕太、吉岡里帆、染谷将太 他
配給:松竹
http://www.parallelworld-lovestory.jp/
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