キャリア Vol.745

【落合陽一×LinkedIn村上臣】が示す、“終身雇用なんてあり得ない時代”に働き続けるための条件とは?

数々の最先端テクノロジーが一堂に会したショーケースイベント『SoftBank World 2019』が、7月18日、19日の2日間にわたり、ザ・プリンスパークタワー東京で開催された。

1日目最後の特別公演には、メディアアーティストの落合陽一さんとLinkedInの村上臣さんが登場。「DX(※)時代の生き方、働き方」というテーマで、トークセッションを行った。

暮らしやビジネスが急速に変化するDX時代の「生き方・働き方」を、2人はどう考察するのだろうか。本記事ではトークセッションの一部を紹介する。

※デジタルトランスフォーメーション。デジタルテクノロジーを駆使して、経営の在り方やビジネスプロセスそのものを再構築すること

落合陽一、村上臣
<写真左>村上臣さん
大学在学中に有限会社「電脳隊」を設立し、その後統合されたピー・アイ・エムとヤフーの合併に伴い2000年8月にヤフーに入社、2012年にはヤフーの執行役員兼CMOを務める。2017年、世界最大のビジネスSNSを運営するLinkedInの日本代表(カントリーマネージャー)に就任
<写真右>落合陽一さん
1987年生まれ。東京大学大学院国際情報学府博士課程修了。メディアアーティストとして数々の個展を開催する一方、研究者、大学教員、経営者など多くの顔を持つ。近著は『日本進化論』(SB クリエイティブ)、『デジタルネイチャー』(PLANETS)など

多彩な顔を持つ落合陽一のキャリア
「僕は常に表現しているだけ」

村上:落合さんは研究者、経営者、メディアアーティスト、大学教員という4つの顔をお持ちですよね。多様な働き方が生まれるであろう「DX時代」のロールモデルとして、まずは自身がなぜそのような働き方をするようになったのか、理由を教えていただけますか?

落合:まず「研究者として新しいものを作り、それを社会に流通させるために経営者として事業化する」ということは、僕にとっては自然な流れでした。研究者が経営をするのは、日本では珍しいかもしれませんが、アメリカでは普通のこと。実際にアメリカの大学教授は、大体がベンチャー企業を経営しています。加えて、僕はずっとメディアアートの勉強をしてきたので、昔からアーティストとしての顔も持っていました。

落合陽一

そして、研究者、経営者、アーティストとして社会と接するようになると、今度は「もっと社会を良くするために後身を育てたい」とか、「自分の考えを世間に翻訳してくれるような弟子を育てたい」と思うようになって……。気付いたら大学教授にもなっていました。

僕自身は「こうあったらいいな」ということを“表現すること”に重きを置いてきて、その手段として研究があり、作品があった。つまり、社会が僕に“研究者”とか“メディアアーティスト”というタグを付けただけで、僕は「やりたい」と思ったことをやってきただけなんですよ。

村上:戦略的に分野を増やしてきたというよりは、自分の感性や欲求に従った結果、今の落合さんが出来上がったということですね。

DX時代に必要なのは「やりたいこと」を見つける力

村上:これまでの日本では終身雇用が主流で、いわば“会社が個人のキャリアを決める”というような傾向がありました。「転勤の辞令が出ても基本断れないけど、それに従っていれば定年まで勤めることができ、定年後は退職金が出る」という約束事の下、お互いが合意していたんですよね。

しかし終身雇用が崩壊し、DX時代を迎えるにあたって、落合さんのように「自分で進むべき道を決める」という力が必要になるはずです。

ただ、その中でも「得意なことをやる」とか、「今までやってきたことを極める」というように、進むべき道を決める判断軸は人によって異なる気もするのですが、落合さんが今まで「やりたいこと」にフォーカスを当てて行動してきた理由はあるのでしょうか?

村上臣

落合:僕は“原体験”が大事だと思っていて。「得意なこと」だけで勝負をしようとするのは、すごく限定的でテクニカルな話になってしまいますが、そうではなくて、今まで生きてきた中で形成されてきた「好きなこと」や「やりたいこと」の方がモチベーションにつながるはずなんですよ。

ですから、アートの授業を通して学生にも、「君はなんでそれを作ろうとしたの?」とよく聞くんです。すると大体、本人がまだ認識していない原体験につながって、「これがやりたいんだ」と気付く。そうすると作品に向き合う熱量なんかも変わってきますよね。

村上:僕は学生のキャリア相談に乗る機会があるのですが、最近は「やりたいことが無い」という子が多いですよね。志が無いというんでしょうか…。こういう学生については、どう思いますか?

落合:そういう気持ちも理解できますよ。凄く分かりやすい例で、『輪るピングドラム』というアニメがあるんですが、その作中の言葉が良くて。

「世界は幾つもの箱だよ。人は体を折り曲げて、自分の箱に入るんだ。ずっと一生そのまま。やがて箱の中で忘れちゃうんだ。自分がどんな形をしていたのか、何が好きだったのか、だれを好きだったのか…だからさ、僕は箱から出るんだ」という台詞。

輪るピングドラム

つまり、人間は箱にはまろうとすると、“好きなこと”を忘れてしまうんです。多くの人が経験したことがあると思うのですが、大学受験の時って、好きなことを忘れませんでしたか?受験期は、テストの点数や成績表などでスコア化され、それによって評価され続けます。そういう生活を送るなかで、“得意なこと”は目につくけど、“本当にやりたかったこと”は忘れがちなんですよね。

村上:たしかに、就活においても同じで、今までの終身雇用の世界では「会社が求めている人物像に合わせていく」という風潮がありました。だから自己分析シートを書くときも、面接をするにしても、「企業の箱に合うか合わないか」というように、“箱ありき”の考え方になってしまうというか。

それでも就職後、履歴書や職務経歴書を書く機会があれば、改めて「自分が今まで何をしてきて、どんなスキルを持っていて、何に興味があるのか」ということを自分自身で振り返るきっかけにもなります。でも、転職活動をしたことが無い人の中にはこうした“キャリアの棚卸し”を一切してこなかった人も少なくないかもしれませんね。

村上臣、落合陽一

落合:もったいないですよね。でも意外と、大人になってからでも、ワークショップなどを通して自分のやりたいことに気付く人も多いんですよ。主体的に人と関わったり、新しい視点を得ながら自分を振り返ることで、自分を形成していた“何か”を見つけることができるのかもしれません。

あと、自分のやりたいことを明確にするためには、“他人に自分のことを掘り下げてもらう”という経験も重要ですね。「君は〇〇なの?」とか、「なんで〇〇したの?」という風に繰り返し投げ掛けてもらうことで、自分の過去や判断軸が明確になっていくんです。

DX時代を生き抜くために、個人の“意識改革”を

村上:そういった経験を通して、自分の中の「芯」を見つけることができれば、多様な働き方が求められるDX時代においても自分主体で存在できるようになれそうですね。企業とのつながりも、依存ではなく対等な立場になるというか。

落合:そうですね。それも踏まえた上で、DX時代では、「個人にまつわる契約」がものすごく重要な時代になると思います。
これから企業や組織とのつながりは「雇われる」のではなく「契約をする」という感覚に変わっていく。日本ではまだメジャーな考え方ではないですが、アメリカやヨーロッパでは既にこうした“契約社会”が成立しています。

落合陽一

村上:確かにこれからは、「自分は何をする人なのか」をお互いが握って雇用契約をすることが大切なのかもしれません。「DX」というとどうしても、デジタルの進化の方に重点を置きがちですが、忘れてはいけないのは“中心には人がいる”ということですよね。そう考えると、DX時代は“個人のトランスフォーメーション(=進化)”がキーになる気がします。

落合:あまり認識されていないような気がするけど、個人がDXをする上で、一番重要なのはキャッシュレス化じゃないかな。個人が誰かを信用するという“証”は既にオンライン化してきていて、例えば「LINEで友達になりましょう」とか「Facebookで繋がりましょう」というやり取りがありますよね。“お金”はその次の段階なので、キャッシュレスでなければ「個人間の信頼で成り立つ労働活動」は実現しないはず。

村上:物理的な通貨には弊害もありますから、個人とお金が行き来する上ではキャッシュレス前提の世の中じゃないと難しいですよね。さらに、キャッシュレスだけじゃなく、「すべてがデジタルで回っている世界」にならないと、多様化する社会は起こり得ないのかもしれませんね。

落合:そう考えると、デジタルの時代は「無形のモノに価値を置く時代」ですね。無形のモノというのが、信頼なのか、データなのか、情報なのかは、まだ分からないけど…。一人一人がそういう風に意識を変えていくことで、目の前にあるお札に対して「何でこの紙を信頼していたんだっけ?」という発想が生まれる。そういうところから個人のDXは始まるんだと思います。

取材・文/赤池沙希 撮影/河西ことみ(編集部)

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