キャリア Vol.760

【hey 佐藤裕介】「AIは感情を理解できない」はダウトだ。来るAI時代に備えておくべきマインドセット

AI時代の「仕事の本質」を問い直す
「機械に代わられない働き方をしよう」「自分らしく働こう」AI時代にシフトする中で、そんな言葉が世の中に溢れるようになったけれど、そもそも“人間らしく働く”ってどういうことだろう? さまざまなキャリアの大人たちに、これからの未来に、働く上で大事なことを聞いた。

今回本特集に登場してもらうのは、20代で2社を上場させた経営者、ヘイ株式会社の佐藤裕介さんだ。

ヘイ株式会社 代表取締役社長 佐藤裕介
ヘイ株式会社 代表取締役社長 佐藤裕介さん
大学時代に起業し、動画配信の仕組みなどを開発。2008年、Googleに入社し、広告製品開発を担当した。2010年末、COOとしてフリークアウトの創業に参画。同時に株式会社イグニスにも取締役として参画し、2014年6月にはフリークアウト、イグニス共にマザーズ上場。17年1月、フリークアウト・ホールディングス共同代表に就任した後、18年2月にはヘイの代表取締役社長に就任。エンジェル投資家としても活動

AIには欲しい未来を決められない
湧き上がる好奇心を逃さないで

最近、「AI時代の人間の仕事は、感情や感覚を扱うことだ」って、よく言いますよね。でも僕は、それって“ダウト”だと思っているんです。なぜなら人間の心理を予測することより、目や耳など人間にデフォルトで備わっている機能を人工的に作り、精度を高めることの方がよほど難しいから。自動運転技術の完成が遅れているのも、目の代わりになるセンサーの技術開発がとても難しいからです。そうこうしているうちに、AIは人間の感情や気持ちをいち早く理解できるようになっていきますよ。

すでにTikTokのタイムラインやAmazonのレコメンドって、すごい精度じゃないですか。ほんのちょっと好きな言葉をつぶやいたり、好きな動画を見ただけで、自分の大好きなコンテンツだけがぶわっと並ぶ。それって、AIが僕たちの気持ちを理解しているということですよね。

確かにコンピュータは数字やデータを処理するのが圧倒的に得意だし早いです。だけどコンピュータには、データを基に何を成し遂げたいとか、どんな未来を描きたいのかを決めることはできません。AIの仕事は、人間が描いた未来を、入力されたコマンドをもとに実行していくことです。いくらAIが発達しても、成し遂げるべき目標やそのために必要な前提条件を設定することはできない。まず僕たちが「こういう未来が欲しいんだ」って、自分の意志で決めなきゃいけないんです。

だからこれからの時代、僕たち人間がやるべきことは、「自分が何をやりたいのか」を知り、それを「目標」や「前提条件」という形に変換して、成し遂げること。そもそも「何かをやりたい」とワクワクすることや、やりたい気持ちがむくむくと「湧いてくる」こと自体がとても人間らしいことなんだと思います。

とは言え、「やりたいことを知れ」なんて、今まで授業や就活で自己分析に取り組んできた皆さんは、その難しさをよく分かっていますよね。お分かりの通り、「何かをやりたい気持ち」なんて、無尽蔵に湧いてくるものではありません。だからこそ今は、好奇心ややりたいことの“芽”みたいなものに敏感になった方がいいし、やりたい気持ちが発露する瞬間を大切にして欲しいと思います。

人生で何かを“成す”には
甘えず厳しい強さを持て

ヘイ株式会社 代表取締役社長 佐藤裕介

やりたいことを見つけること自体が、難しい。それは社会に出て10年以上経っている僕も同じです。何でも面白そうな気がする時もあれば、何にも興味がないような気がする時もあるんですよね。

だけど10年以上このテーマについて考えてきた僕が思うのは、「やりたいこと」って、見つけたり掘り当てたりするものではないということ。ちょっとした“芽”を長い時間を掛けて育てて、メンテナンスしていくものだと思うんです。

だから今もし、やりたいことがなかったとしても焦る必要はありません。自分が魅力的だと感じていることを言語化したり、せっかく芽生えた気持ちを壊さないように大切に温めていけばいい。人間誰しも、心が揺れ動く瞬間があるはずです。それは仕事に結びつかなさそうでも、くだらないことでもいい。自分の感情が揺さぶられる瞬間を、繊細に取り扱うことで育まれていくはずです。

僕の場合は、それを専門家と一対一で話して客観的に言語化してもらうコーチングという作業を長年やっていて。専門家でなくても、友だちや恋人など、誰でもいいので他人と対話し、客観的に「自分は何に興味があるのか」を分析してもらうことで、考えが深まっていくと思います。

それができたら、今度は自分の感情をかなぐり捨てて、徹底して客観的になること。自分のやりたいことをAIに指示するためには、「目標」や「条件」という文言に変換しなければなりません。そのためには「自分は今、こういう指示を出したい」という言語化が必要です。

言語化するためには、感情論ではなく冷静にファクトや事実を見極めねばなりません。今って何か事件が起こると、ネット上の評価が全てになってしまいますよね。ネットでは事実かどうかよりも、共感できるものほど「いいね!」の数が膨れ上がり、その数で評価が決まる傾向にあります。皆タイムラインに流れる“世論っぽい意見”の中から、自分にとって“エモい”ものだけピックアップして、自分の意見かのように表明している。それは本当に危険なことです。共感もエモさも捨てて、事実に基いて物事を判断する力を養った方がよっぽど良いと思います。

そして最後に、AI時代を生き抜くためには、強くなることが大事です。人生でやりたいことを成すためには、困難を乗り越えていくための強さが必要。だけどそう簡単なことではないので、皆ちょっとうまくいかないだけで世の中のせいにしたり、大きな障壁があるかのような美談にし始めますよね。

でも、やりたいことなんて結局自分自身の内面のことでしょう。それを自分以外の何かのせいにして逃げていたって、実現できるわけがありません。

今の自分を冷静に見極め、やりたいことを成し遂げるためにストイックに取り組む。それができる厳しさや強さを身に付けて、自分の欲しい未来を手にできる人こそ「人間らしい」働き方が実現できるんだと思います。

取材・文/石川 香苗子 撮影/赤松洋太

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