営業マンが抱えがちなストレスとその解消法
※こちらの記事は『セールスハックス』より転載しております
営業マンはストレスを抱えがちな仕事だと言われます。毎月の高い目標、上司からの期待やプレッシャー、お客様からの厳しい要求、業界によってはお酒や土日のゴルフ接待などもあり、精神的にも肉体的にも厳しい仕事です。
営業現場はスポーツの世界と似ています。超えるべき競合企業があり、職場の同僚はチームメイトでありながらライバルです。そして、業績や営業成績という数字で勝敗がはっきりわかります。ほかの職場と比べると競争社会であり、営業マンはさまざまなプレッシャーを感じることでしょう。
適度な緊張感はむしろ生産性を高めると言われます。営業マンにとっても、ノルマがあることやライバルがいることが、成長を促している面はあるでしょう。しかし、ストレスが多い職種なので自己管理を徹底する必要はあります。今回は、営業マンが抱えがちなストレスの種類と解消法をご紹介します。
なぜ営業マンはストレスを抱えてしまうのか
一般に営業職には、コミュニケーション力がそれなりにある人材が配属されるものです。そのため、おそらく多くの営業マンは、お客様に商品やサービスを提案し「ありがとう」と言われることに喜びややりがいを感じることがあるはずです。
しかし、目標を100%以上達成するためには、多くのお客様の「ありがとう」を集める必要があります。毎日の訪問件数や商談件数などはできる限り増やさなければなりません。営業職自体は個人的な業務であっても、数字を落とすと他の営業マンにしわ寄せがいくなど「チームに迷惑をかけてはならない」という責任感も常に感じます。
広告業界のように、営業マンがプロジェクトマネージャー的に社内や協力企業の人たちをまとめながら仕事をすることもあります。トラブルが発生すれば自分のミスでなくてもお詫びに訪問し、場合によってはお客様と会社の板挟みになりながら調整しなければなりません。営業と一口に言っても、企画、営業、事務、クレーム対応、マネジメントなど役割はかなり幅広いと言えます。
さらに、営業マンは会社の「顔」でもあるため、どんなときも誰に対しても前向きで感じよく冷静であらねばなりません。最近は感情労働という言葉が注目されてきましたが、サービス職や看護師などに比べれば気を抜ける時間は多いものの、営業マンも感情労働の一種類だと言われています。常に自分の感情をコントロールしているため、ストレスが自然に溜まってしまうのです。
営業マンが抱えがちな6つのストレス
営業マンが抱えがちなストレスの中で、6つの代表的なストレスを紹介します。
予算やノルマからのストレス
営業マンのストレスの多くは、予算やノルマからのストレスです。簡単に達成できる目標数字がくることはあまりなく、人事評価もほとんどの場合数字が指標になります。目標数字の設定方法や担当となるエリア・取引先によって多少の運不運もあるのですが、言い訳は許されず結果がすべての世界です。
営業成績が上がらないと上司から叱責されたり、同僚からの評価が下がり社内で軽んじられてしまうこともあるかもしれません。営業マン自身も目標を達成するか未達か、成績上位か下位かで自己肯定感がかなり変わります。数字は営業マンにとって自信の源泉であり、どんなに努力しても数字という結果が伴わないと自信を持つことはできずストレスを抱えることになります。
顧客からのストレス
お客様からのストレスは、業界によって度合いが異なります。例えば、人材業界のように人事部門がお客様であれば、担当者も人材を公平に評価したり、人材を面接する際に相手に好印象を与えることができるような人が大多数です。おおむね営業マンにも礼節をもってパートナーとして接してくれます。
しかし、建設業界や製造業など発注する側と受注する側の上下関係が比較的はっきりしている業界では、納期や価格に対する要求もかなり厳しい傾向があり、いわゆる「下請け」という立場を実感する場合もあるでしょう。
また、どんな業界にも無理難題な要求や叱責を繰り返す発注担当者はいます。お客様と営業マンという立場はあくまでビジネスの世界でのことなのですが、人間としての上下関係と思ってしまう人は少なくなく、それが営業マンのストレスにつながってしまいます。
業務量からのストレス
営業マンは、新規開拓営業や既存顧客のフォロー営業、提案書類・見積書の作成や事務処理業務など、幅広く業務を抱えていることがあります。営業以外の仕事の割合もかなりあります。それにより営業活動にに時間を割けなくなってしまうのは営業マンのストレスです。
JMACの「営業マンの有効活動時間の拡大ポイントとは」という記事によると、日本の営業マンが面談に使える時間は生産財営業マンが約25%、小売業界の営業マンが31%となっており、かなりの時間を会議や書類整理、移動時間に費やしています。優先順位の高くない業務に追われ、商談に時間をさけないでいる営業マンの状況がうかがえます。
社内関係者からのストレス
営業マンにとっては、社内の人間関係もストレス要因になりかねません。特に上司と相性がよくないとストレスがたまります。上司も会社の上層部から毎月の目標達成を指示されているためか気持ちの余裕がないことが多く、営業マンに厳しい対応をとることはよくあります。
元営業マンが上司だと自分の営業スタイルを押し付けたり、景気が良かったころの感覚で部下を否定したりする場合があります。他部署から赴任したり、新規開拓経験があまりない上司は、営業が訪問してから成約につなげるまで3ヶ月あるいは半年かかる場合もあると理解できず、表に出ている数字だけで営業マンの頑張りが足りないと決めつける場合もあります。直属の上司の「無理解」は営業マンにとってのかなりのストレスです。
さらに、営業マンはマーケティング担当者、クリエイター、技術者など他部署と連携して仕事を進めることも多いのですが、多くの会社で営業部門と技術部門、関連部門などのコミュニケーションはそうスムーズではなく、間に入る営業マンがストレスを感じることは少なくありません。社内営業はお客様相手のように割り切ることができないため、より営業マンのストレスになりやすいのです。
自社の商品・サービスからのストレス
業界No.1企業の営業マンであれば、誰でもある程度の自信をもって商品を営業することができます。しかし、中堅・中小企業の営業マンは商品やサービスに自信を持てないことがしばしばです。「自分なら他社のものを買う……」と思うような商品を売るときには、後ろめたさや諦めの気持ちがよぎります。
お客様には自分と違う価値観があるため、一概にそう決めつけることはできないのですが、お客様の立場に立って考える営業マンほど他社より劣っていると感じる商品を売ることにストレスを感じます。「売ってもお客様に貢献できないのでは」という思いから提案も控えめになりがちです。
商品力の強化過程の企業の営業マンは、お客様の役に立てるように商品・サービスに直接関係しないような情報提供も積極的に行うなどの努力を重ねます。お客様の中にも、トップ企業だけでなく複数の企業と協力関係を築こうとする人は少なくないので、営業マンが自社の課題を解決するような提案をしていれば発注する企業は少なくありません。しかし、商品力が強い企業の営業マンよりも努力する必要はあり、商品・サービスに対するストレスを感じてしまうことはあるでしょう。
自分に対するストレス
営業マンは、モチベーションを維持できるかどうかが成果に影響する仕事です。しかし、人間の感情には波がありやる気がでない時期もあります。 新人のころは一生懸命だったのに、売上げがある程度上がった段階でペースダウンしてしまったり、新規開拓営業をしばらく行わずにいたところなぜか怖くなってできなくなったという営業マンもいます。
営業マンにとって「自分が頑張れていない」というのは営業成績の低下、社内での競争に敗れることにつながるため、恐怖でありストレスだと言えるでしょう。
ストレス解消のポイント
ストレス解消のポイントは、ストレスにできるだけ早めに気づいてケアすることです。ストレスの初期症状は、肩こり、頭痛、だるさ、寝起きの悪さ、食欲不振、酒やタバコへの過度な依存、意欲がわかない、集中力が続かないなど小さなものですが、同じ症状が2週間以上続く場合は要注意と言われています。一見身体の不調に思えることもストレスが原因の場合もありますので、見逃さないようにしましょう。
何がストレスの元なのかを見極める
人によってストレスの原因になることは違います。ストレスを解消するには、自分自身がストレスと感じている原因が何かを見極めることが大切です。営業マンの場合、数字のプレッシャーや人間関係のなどの精神的な疲れ、業務の多忙さによる身体的な疲れなどがストレスの原因になりやすいと言えます。
度合いがわからない場合は、過去3ヶ月で仕事上で感情が大きな変化したことを思い出し、出来事と感情を並列に書いてみます。そうすると、自分がどのようなことをストレスに感じやすいかが可視化できます。案外、楽しいことも疲れの原因になっているときがあります。
業務の効率化の方法を考える
もし、ストレスの原因が多忙さ、長時間労働による疲れにある場合は業務の効率化を考えてみましょう。営業マンの業務は多岐にわたっています。新規開拓営業(飛び込み、テレアポ、SNS営業)、既存顧客への提案営業、アフターフォロー、提案書類作成業務、事務処理業務などがあります。この中でまず「やらなくていいこと」や「時間をかけない業務」を明確にして効率化する方法を考えます。あるいは優先順位を明確にします。
業務を効率化できるのであれば、デジタルツールの活用を視野に入れてもよいでしょう。提案書類の構想段階はPCに向かうより手書きが有効だという意見もあるので、アナログ、デジタルそれぞれの長所を取り入れることがおすすめです。
(例)
・パソコン作業はキーボード ショートカットを活用する
・よく送るメール文面は目的別(案内、謝罪、催促他)にテンプレート化する
・提案書類はフォーマット化させておく
ストレス元の認識を変える
ストレスの原因には、自分で解決できることとできないことがあります。もしストレスの原因が業界や会社の慣行などであれば、自分では問題解決することが難しいかもしれません。そのような時には、正面から原因に立ち向かうのではなく、ストレス元に対する認識を変える対処法があります。
心理学の世界では「ストレスコーピング」というストレスを解消する手法が有名です。ストレスの原因を解決する「問題焦点型」、ストレスを感じたあとに発散する「ストレス解消型」以外に、「情動焦点型」と言われるストレス元に対する認識を変える方法があります。例えば、営業の仕事が合わないと感じていても「将来の出世や起業のために現場を経験することは必ず学びがある」と考えれば、日々何か学ぶことがあるはずです。
関係者に相談する
ストレスは人に話すことだけでも、ある程度軽減できます。近年は社員のモチベーション向上やメンタルヘルスケアのために、管理職にコーチングの技術を研修したり、若手社員にメンターをつけたりする会社が増えています。面談の機会があれば、社内の関係者に遠慮なく相談してみましょう。
悩みを相談することに抵抗があるのならば「営業マン時代はどのようにストレスを解消してきたのですか?」と指導を仰ぐような質問をしてもよいでしょう。先輩や上司の中には、相談されたら熱心にアドバイスしてくれる人がいるものです。
休息をとる
最近は戦略的休憩という言葉も登場しています。作業であれ頭脳労働であれ、根を詰めて業務を続けるよりも適度に休息をとるほうが生産性が上がることがいろいろな研究調査でわかってきたからです。脳はぼーとしているときにも(意識しないでも)活性化していると言われます。散歩中やお風呂の時間にアイデアが浮かぶのはそのためなのです。
近年は、働き方改革が推進されており営業マンも移動時間にリモートで業務をすることが奨励されていますが、商談などで緊張した神経を休めたり、お客様のためによい提案を考えるたりするためにも、適切な休息をとるように心がけましょう。「休憩も業務の一環」という考え方が必要です。
手軽なストレス解消法を活用する
世の中にはいろいろなストレス解消法があふれています。、コーヒーを飲む、ガムをかむ、音楽を聴くなど多くの人が日常的に行っていることも有効です。古くからの方法であれ最新の方法であれ自分に合うと感じたら試してみましょう。
瞑想する
近年はビジネスマンの間でも、マインドフルネスが注目されています。瞑想はいろいろな国で古来から行われてきましたが、マインドフルネスは瞑想から宗教色を排除したプログラムであることが特徴です。
集中力、記憶力、ストレス軽減、人間関係の改善、モチベーション向上などなどさまざまな効果があると言われており、Google、インテル、Facebookなどの有名企業でも取り入れられています。
紙に感情を書く、日誌をつける
ネガティブな自分の感情を紙に書きだすだけで、気持ちが整理でき落ち着くと言われています。人に相談する場合は、内容を選んだり相手の反応が期待通りでないと落胆することもありますが、自分だけが見るという前提なので正直な心情を吐露できる点がポイントです。 気持ちを吐き出すことですっきりするのです。
また、客観的になる効果もあります。例えば、業務を合理化するときは細かい仕事まですべて書き出し可視化します。そうすると無駄に時間をかけていることや重複していることがわかります。感情もすべて書き出してみると「連絡業務や調整業務に追われるとイライラする」「社内のAさんと話すのが意外にストレスだった」など自分の状況とストレス度合いが把握できます。
あるいは、自分の仕事や心情を日々記録する方法もあります。セルフモニタリングと言われる手法で、日々自分をモニタリングすることで客観的になりモチベーションの維持につながると言われています。サッカーの本田圭祐選手やフィギュアスケートの羽生結弦選手は、毎日のように自分の練習や状態について記録しているそうです。
自分の状況を可視化することで「明日はこうしよう」と向上するための改善ポイントが浮かびやすくなるでしょう。
5秒ルール
面倒な業務や気の進まない仕事は、ついつい先延ばしにしてしまうものです。簡単な仕事なのにギリギリまで手をつけないがために、相手に迷惑をかけてしまうこともあります。先延ばししていること自体もストレスなりします。
ここでご紹介したい5秒ルールとは、米国のテレビ司会者メル・ロビンスが提唱している「なにかやりたいと思ったら5秒以内にスタートするという手法」です。5秒以上たつと脳が行動にブレーキをかけるため、思いついたら「5、4、3、2、1、開始!」とカウントダウンしてとりあえず5秒以内にスタートするクセをつけましょう。行動力をアップさせたいときやモチベーションを上げたいときにも効果的です。
姿勢を正す
近年は、姿勢を正しくすると脳内のテストステロンが増加して集中力が増し、生産性がアップするという研究結果も出ています。学校などで厳しく言われてきた姿勢を正すという行為は、ただの精神論ではなく本当に効果があるようです。
仕事中に自然に姿勢を正すテクニックに、両足のかかとを15秒ごとに交互にわずか1cmだけ上げる「かかと上げ」があります。座り仕事でも立ち仕事でも、周りに気づかれずに行えるためお薦めです。身体に力を入れずに、床からつくかつかないかの高さをイメージして、ゆっくりかかとを上げるのがコツです。
トップセールスマンの本を部屋に置く
ストレスを抱えているときは、トップセールスマンの本を読むのも効果的です。本物の営業マンの素晴らしい人間性や仕事に対する姿勢に触れることで「こんな営業マンになりたい」と憧れる気持ちや、自分も頑張ろうという前向きな気持ちになれます。特に何十年も売れ続けているベストセラーは読みやすく内容も深いため、手元に置いてたまに読み返しましょう。
(例)
・私はどうして販売外交に成功したか (Life & business series) フランク・ベトガー(著)
・「保険のない国から来た私がトップセールスになれた理由」周 小異(著)
・なぜ、相手の話を「聞く」だけで営業がうまくいくのか? 青木 毅 (著)
継続的にパフォーマンスをあげる営業マンになるためには
厚生労働省の2017年の調査によると、働く人の約6割近くが不安や悩み、ストレスを抱えているいう結果が出ています。今が何かとストレスがたまりやすい時代であることは間違いありません。とは言え、営業マンはモチベーションの高さが営業成績に直接的に影響する仕事です。自分の心身を管理しストレスに早めに気づいてケアをし、良好なメンタルの状態を保つ必要があります。
ストレスケアも問題解決能力の一つだと考えて、実践していきましょう。ビジネスマンでもいわゆるハイパフォーマーと言われる人たちは、スポーツジムに通ったり整体や鍼灸に通ったりと、身体のケアに余念がないものです。米国ではお抱えのカウンセラーを持つCEO、日本でもひいきの占い師を持っている経営者も少なくありません。
大きな仕事をしている人や精神的に強そうな人たちも、自分の努力だけでなく人の協力を得ながらモチベーションを維持しているのです。営業マンもできる限り自分の心身を管理し、頼るべき人には頼り、モチベーションを維持していくことが継続的にパフォーマンスを上げる秘訣です。
まとめ
「ゾーンに入る」という言葉があります。極度に集中しているため周囲の時間がゆっくり流れているように感じるほど、脳が活性化している状態です。仕事を頑張るのだけでなく、リラックスする時間も意識的に作って自律神経を日々整えると、ゾーンに入りやすくなると言われています。日々のストレスを上手に解消してメンタルを整え、仕事のパフォーマンスを向上させていきましょう。
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