キャリア Vol.761

モテたい、勝ちたい、一番だって言われたい! “銀河系パチスロイケメンアイドル”寺井一択の破天荒な人生論

仕事の数は星の数ほどあるけれど、そんな中でも「なぜその仕事を!?」つい、そう聞きたくなってしまうような職業を選んだ人たちに20’s type編集部が深掘りインタビュー。知られざる仕事の裏側、実は深〜いやりがいを聞いたら、“仕事選び”の本質と、日々の仕事を楽しむ秘訣が見えてきた――。

「僕ね、本当は“ええとこの子”なんですよ。大学生の時にパチスロやってるって親に言った時は、めっちゃ驚かれましたし(笑)。」

そう飄々とした口調で語るのは、現在“パチスロエンターテイナー(銀河系パチスロイケメンアイドル…?)”としてYouTubeを中心に絶大な人気を博す寺井一択さんだ。

浪人時代からパチスロに没頭し、関西の難関大学に入学後もその欲求は止まらなかった。大学を中退し、大好きな「パチスロ業界」で生きていくことを決めた寺井さん。愛情に溢れた家庭、難関大学への入学、と“順当な道”を歩んできた彼が、言葉通り「破天荒」な道を選び働き続ける理由とは?

パチスロエンターテイナー 寺井一択さん
パチスロエンターテイナー 寺井一択さん
1992年生まれ。高校卒業後、浪人生時代にパチスロにハマる。関西の有名大学に入学するが中退。その後、ネット系パチスロ攻略サイトのライターを経て、スクープTVに所属。2014年、YouTubeでの動画配信にてデビュー。15年、冠番組『寺井一択の寺やる!』の配信をスタートし、18年には同じくYouTubeで『寺井ちゃんねる』を開設。パチンコ・パチスロ動画業界内の「四天王」に挙げられるほど人気となる。現在Twitterのフォロワー数は16万人に※2019年8月現在
◆Twitter:@terai_ScooP
◆YouTube『寺井ちゃんねる
パチスロアイドルの仕事内容

パチンコ・スロットに関わる動画を自ら企画・構成・出演しYouTubeにアップしている。また、全国のパチンコ店を訪問し、来店客と交流(実戦来店)も行う。

パチスロアイドルの収入

始めたばかりの頃は、牛丼屋で卵を追加するか迷うくらい。今では、女の子と遊びに行けば、当然のようにご飯代・買い物代・ホテル代・帰りのタクシー代など、全てを出してあげられるくらいにはなった。

「ただ問題は、そんな機会が滅多にないことですけどね……」(寺井さん)

毎日12時間のパチンコ店通い。
大学生で月に30万〜50万円は稼いでいた

寺井さんは、幼い頃はピアノを習い、上品な両親に育てられた、いわゆる“ええとこの子”だった。しかし、小学5年生の頃には、すでにパチンコ・パチスロに興味を持っていたというから驚きだ。

「友達とゲームセンターのメダルゲームにハマっていた時のことでした。パチスロ形式のゲーム機に100円を入れて回し、当たったらメダルが大量に出てきたんです。『こんなに簡単にメダルが手に入るなら、メダルゲームよりパチスロの方がええな……』と思い、大人になったら絶対にパチンコ店に行こうと決めていました(笑)」

パチスロを初体験したのは、高校卒業後、予備校に通い始めてから。友人の誘いを機に、3日と空けずにパチンコ店に通い続けるようになった

「当時は親から毎日もらっていた食事代の1000円を軍資金にしていました。パチスロに勝ったらおいしいものを食べる、負けたら飯抜き。勝ち続けることも多く、その稼ぎで1講座7万円の予備校の講習代を自分で払ったりもしましたが、負けが続いて3㎏痩せたこともあります。“パチスロ・ダイエット”ですね(笑)」

寺井一択
浪人時代のクズエピソードを真剣に語る寺井さん

浪人時代には毎日パチスロに興じていたにも関わらず、無事難関大学に合格。入学後も、毎日のようにパチンコ店通いを続け、「授業を受けに行ったはずが、なぜかパチンコホールにいる」という状態に。

気付いたら、10時の開店から22時の閉店までパチンコ店にいるんです。大学で第4志望の学部に入ってしまったんで、授業にも全く興味がなくて。『寺井って、いつも欠席だけど、どんな奴や?』と、大学ではレアキャラみたいになっていたようです(笑)。白い目で見られていたのかもしれないけど、僕、もともと友達が少ないから全然気になりませんでした」

実際、月に30万〜50万円は稼ぐほど勝っていたそうで、大学の学費はパチスロで勝ったお金でまかなっていたそう。しかし、そこ勝っていても、「職業として意識することはなかった」と話す。

「あの頃のパチンコ・パチスロ業界は、当たる法則をもとに台を探せば、すぐに勝てる時代でした。楽して儲かれば誰だって好きになるだろうってもんで、これで生きていこうとは思わなかった。とはいえ『パチスロ通いを続けていたら、自分はダメになる』とも思わなかったんですよ。実際、パチスロ通い続けても、大学に受かっちゃいましたから。あの時、大学に落ちていれば、普通の社会人の道を歩んでいたかもしれないですけどね(笑)」

親に大反対されても、「めっちゃワクワクして、イケる気しかしなかった」

パチスロ漬けの日々を送っていた寺井さんが、パチンコ業界で生きていくことになった理由は、「働きたくない」と思ったからだという。

寺井一択
「絶対に、働きたくなかったんです……」(寺井さん)

「家の事情で大学を中退したんですけど、全く働きたくなかったんです。疲れた顔で電車に乗っているサラリーマンを見て、自分はなりたくないなと。当時趣味の一貫でパチスロサイトにコラムを投稿していたんで、中退後には、パチスロ攻略サイトのライターをやることにしました。パチンコ店でバイトしながら、休みの日もパチスロ、ライターとしてもパチスロ(笑)

その頃、趣味でパチスロ系の動画も見ていたという寺井さん。ふと「これ、僕の方がおもろいことできるんちゃう?」と思い、パチンコ・パチスロ無料動画サイト『スクープTV』の面接を受けた。従来のパチンコ・パチスロ動画では少数派だった路線で動画を制作したところ、大反響を得たのだ。

「当時のパチンコ・パチスロ動画は、『この台を打ったらいくら当たりました』という報告系のものばかり。そこに笑いとバラエティー、そしてストーリー性というエッセンスを足したら、僕でも人気者になれるんちゃうかとそこで、人気パチスロ動画サイトだった『スクープTV』の面接を受け、翌年、動画デビューしました。

バラエティー色の強いパチスロ実戦動画をつくるんですけど、罰ゲームで僕がビンタされるシーンなんかもあって。母は『大事に育ててきた子なのに、下品なことさせられて!もう辞めな!』と大反対でした。でも僕は、どんどんパチスロの仕事がくることに、めっちゃワクワクしてて。ありがたいことに父が『好きなことをやれ』と言ってくれていたので、辞める気なんてゼロでしたね」

寺井さんは次第にキャラを確立し、やがて、冠番組『寺井一択の寺やる!』をスタートする。この時、「パチンコ・パチスロ動画のてっぺん獲ったる!」と大々的に目標を掲げ、番組開始から3年が経つ現在、それを現実のものにしようとしている。

寺井一択

「現在はTwitterのフォロワーも16万人になり、この業界内ではトップクラスの位置付けとなってます。『僕、スターじゃね? 今までLINEしても返信くれなかった女の子から“寺井くん、スゴ〜イ”なんて連絡くるんちゃう?』なんて、妄想しながらやっています。まあ今のところ、何も起きてないんですけど(笑)」

「無理に走らんくても、ゆっくり歩いたらいい」。
のんびりパチンコでも打ってみたら、何かが見つかるかも?

寺井さんにとって、パチンコ・パチスロは大好きなものであり、生活の一部。だからこそ「仕事」という意識はあまりないという。

自分が楽しいと思うことなんで、『仕事だからやらなきゃ』って思わないんです。パチスロを使ってどんな面白いことをやろうかって、いつも考えているだけ。僕と同じようにパチンコ好きな人たちが見てくれていると思うと、震えるほど楽しいんですよね。今でもTwitterでエゴサーチして、自分に関するツイートが山ほどあるのを見てほくそ笑みますし、時々リプライを飛ばしたりします。するとファンの方たちが『本人降臨したー!』と、めっちゃ喜んでくれるから、それが気持ちよくって」

とはいえ、自ら企画・構成・出演する動画を3日に一本作るのは、視聴者側が想像している以上に大変な作業だ。しかも毎回、「面白さ」を求められ、反応・反響もダイレクトに分かってしまう。プレッシャーはないのだろうか。

「僕は基本的にはめっちゃネガティブで暗い奴なんですけど、『面白いことをする』ことに関しては変に自信があったりもする。だからプレッシャーとかはないですね。結局のところ、自分が満足するためにやっているだけなので」

続けて寺井さんの話を聞くと、決して「好きなことだから」だけではないモチベーションの源泉が垣間見れた。

「もちろんパチスロが好きってのは大前提にあるんですけど、ただただ『自分自身が“スゲー奴”だと思われたい、モテたい』っていうのがモチベーションになっていると思います。浅いですよー、僕は(笑)。行動の全てが『いいもの食って、いい女抱いて、いい車乗りてえ!』的な欲求ですもん。周りの高学歴な友人たちはパチスロに興味がなく、僕には全く関心を持ってくれていないので、まだまだ自分が思い描いてる自分になれていない。だからこそ、もっと有名にならねば!って闘争心みたいなものも沸いてきます」

寺井一択
「逆に、“モテたい”って思わずにがんばれる人っていると思います?」(寺井さん)

周囲の評価は関係なく、自分が満足できる境地を目指し、求道者のように面白パチスロ動画を作り続けていく。「働きたくない」から始まった寺井さんの仕事人生だが、そんな熱いハートを持つ背景には「細胞レベルで嫉妬深いっていうのもありますね」と続けた。

「小さい頃から全くモテなかった経験があるので、僕の場合は嫉妬やひがみという“負の感情”がバネになるんですよ。どのくらい嫉妬深いかといえば、小さい頃、自分の母親が幼児向け番組を見て『あの子、可愛い。踊りが上手ね』って言っただけで、『俺の方が可愛い! 俺の方が踊れる!』と主張するくらい嫉妬深い(笑)。もう、細胞レベルの嫉妬深さ。だからこそ、動画の世界でも、誰にも負けたくないと思っています。パチンコ・パチスロ動画業界ではトップクラスのスターになりましたが、動画業界全体で見るとまだまだ。今はYouTuberとしてもスターを目指しています。全ては『全人類で最も面白くモテる男になるため』に、今後もチャレンジし続けたいですね」

こんなにも「大好きで没頭できるもの」に出会い、まっすぐに上を目指す寺井さん。その姿に羨ましさすら感じるが、一方で「皆が僕みたいに好きなことがなくてもいいと思う」と話す。

「最近は漫画やドラマのせいで、『夢に向かって走り出そう!』的な風潮があって、僕みたいに好き放題している人間が羨ましがられたりする。でも、別にやりたいことなんて見つけなくてもいいと思います。好きなことって無理やり探し出すものじゃなくて、向こうから急にやってくるものなので」

パチンコに例えると、「『当たれ当たれ!』と思っていたら全く当たらんかったり、適当に暇つぶしで座った台が、嘘みたいに当たったりするのと同じ」と、寺井さん。

別に無理に走らんくても、ゆっくり歩いたらいい。それで特に夢が見つからなくても、自分が幸せならそれでいいと思います。僕だって、周りから『パチスロなんて……』と言われることもあるけど、自分が幸せなんですもん。もしどんなことがしたいか悩んでいる20代がいるとしたら、のんびりパチンコでも打ってみたらどうでしょうか。そこからインスピレーションが湧いて、何かが生まれるかもしれません。まあ、僕みたいに負けて地面に寝転がるだけかもしれませんけど(笑)」

寺井一択
「負けても責任はとらんよ」

取材・文/上野真理子 撮影/桑原美樹

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