キャリア Vol.772

ストリッパーの世界に飛び込んだ元外資系コンサルの生き様「ストリップ劇場では“飾らない自分”でいられる」

仕事の数は星の数ほどあるけれど、そんな中でも「なぜその仕事を!?」つい、そう聞きたくなってしまうような職業を選んだ人たちに20’s type編集部が深掘りインタビュー。知られざる仕事の裏側、実は深〜いやりがいを聞いたら、“仕事選び”の本質と、日々の仕事を楽しむ秘訣が見えてきた――。

「今までの人生、いわゆる王道を歩んできました。でも強く、ストリッパーに憧れてしまったんです」

そう話すのは、東京都内を中心に活躍中の現役ストリッパー・宇佐美なつさん。ストリッパーとしてステージに立つ彼女は現在26歳。大学卒業後、25歳までは外資系コンサルティングファームでITコンサルタントとして働いていたというから驚きだ

一般的にエリートと言われる生き方を捨ててまで、ストリッパーになりたかった理由は一体何なのか……。知られざる「ストリッパーの世界」の魅力とともに、彼女が仕事に求めるものについて教えてもらった。

宇佐美なつさん
宇佐美なつさん
外資系コンサルティングファームに新卒入社。ITコンサルタントを経て、2019年7月にストリッパーへ転身。現在は渋谷にある劇場などでステージに立っている。
Twitter:@usami_natsu
ストリッパーの仕事内容

ステージ上で音楽に合わせ服を脱いでいく。踊り子とも呼ばれる。1ステージ15分の間に披露するダンスは、自分で振り付けをする場合も。働く周期は基本的には踊り子次第で、宇佐美さんの場合は現在10日勤務→10日休みの周期で舞台に立っている。

ストリッパーの収入

10日の勤務で、一般的な初任給1カ月分+α程度。年収ベースでは前職の外資系コンサルタントの時よりは減ったものの、同世代に比べると十分にもらっているという。

初めて足を踏み入れた日から“ストリップ劇場の沼”に落ちた

宇佐美さんがストリップ劇場に初めて足を踏み入れたのは、社会人1年目の頃。その時はストリッパーになるどころか、もともと興味があったというわけでもなかったという。

「飲み会の帰りに、その場のノリで『ストリップ劇場って女の人も入れるらしいよ、気になるね』って話になって、友だちと見に行ったのが始まりです。今思うと、別にもともとストリップに強く惹かれていたわけでもなく、ただ何となく、でしたね」

しかし、予期せぬことにこの日がきっかけでストリップの“沼”にはまっていったという宇佐美さん。

「初めて見た舞台は、自分の持っていたイメージと違い過ぎて驚きました。劇場の中はきれいだし、ステージの内容は多種多様で、クオリティーも高い。良い意味でイメージとのギャップを見せつけられ、別のステージも見てみたいと思うようになって。それから気付けば3年以上、渋谷を中心に関東のストリップ劇場に顔を出す常連になってしまいました(笑)」

当時の宇佐美さんの勤務先は、超有名外資系コンサルティングファーム。いくら「好きだったから」「はまったから」と言って、コンサルタントのキャリアを捨ててストリッパーに転身というのは、すぐに決められなかったのではないか。

しかし、「そんなに悩まなかったんですよ」と宇佐美さんは微笑む。

「劇場に通っているうちに、自分もストリッパーとして踊ってみたいという気持ちが増していったんです。仕事への不満は全然なかったんですが、強いて言うなら3年間同じ会社に在籍して、これから自分がどの時期に昇進して、どんなポジションでプロジェクトを回して……という未来が予想できるようになってしまった。もう少し予想不可能な日々を過ごしたいと思うようになっていたタイミングで、ストリップのステージを見ながら『私だったらこんなステージや衣装がいいな』と妄想を広げている自分に気付いたんです」

誰にも相談しないまま、常連だったストリップ劇場の面接を受け、2カ月後のデビューに向けて準備を進めていった宇佐美さん。コンサルタントの仕事に未練はなかったが、この大幅なキャリアチェンジについて、家族や友だちの反応は気にならなかったのか。

「実は親と前職の関係者には、未だに隠しています。小学校の頃から私立に通わせてもらって、良い大学、会社に入って……と生きてきたので、親に言ったら勘当されちゃうんじゃないかなと。自分の仕事をやましいと思っているわけではないですけどね。一方で、私が転職したことを知っている友だちは『意外だね』と驚きはしたものの、応援してくれています。当たり前のように背中を押してくれたので、つくづく自分は友だちに恵まれているなと思いますね」

ステージでは、飾らない自分を肯定してもらえる

ストリップと聞くと「ステージの上で裸の女性が踊っている、いやらしいもの」というイメージを持つ人も多いはず。自ら進んでストリッパーになりたいと思った彼女に共感するのは難しいかもしれない。

「確かにストリップって、何となく男性がニヤニヤしながら“エロ目線”で見ていたり、踊り子さんを冷やかしているようなイメージがある人も多いと思います。私も最初はそうだったんですけど、行ってみたら全然違いました。

観客の皆さんは、踊り子が気持ち良くステージに立てるように盛り上げてくれたり、ちゃんと順番を守り節度を持って写真を撮影してくれたり、かなり民度が高い場所。ここでは踊り子が主役で、決して見下されるようなことはないんです」

踊り子が主役の場。それはまさに宇佐美さんがストリップの世界にはまっていった理由の一つだ。

「踊り子が主役だなと感じるのは、観客の皆さんがつくる空気感だけではありません。実は、踊り子って皆が皆、いわゆるモデル体型というわけではないんです。ふくよかな人もいれば、やせ型の方もいる。でも、自分のありのままの姿を美しいと思わせるのが、ストリップの世界です。見ていても、踊っていても、『飾らない自分でいていい』と自分が肯定された気分になれる場。きっと一度見に来たらハマる人が多いと思いますよ」

また、実際に自分がストリッパーになったことで、新たに見えた世界もあるという。

「民度が高く、女性を尊重している世界とはいえ、やっぱり飲み会帰りのサラリーマンやノリで来てみただけの人も多くいらっしゃいます。彼らの中には私たちを見下していたり、冷やかしに来たりする方がいるのも事実。でも、そういう人たちが来たときこそ、ストリッパーの腕の見せ所だと思うんですよね。そこで惑わされずに堂々と振る舞うことで、彼らが騒ぐのを辞めて息をひそめて見入ってくれたときや、ステージ後に『すごかった! イメージが変わりました』って興奮しながらお話してくださるときは、心の中で思わずガッツポーズしてしまいます」

私はかわいそうなんかじゃない。

そんな宇佐美さんが、ストリッパーの仕事にやりがいを感じるのは、自分自身が魅了された世界で、活躍している毎日そのものだという。

「私自身が常連だったこともあって、自分が表現したい世界をはっきりと持っていたんです。そんな世界観を思う存分披露できる今が楽しくてしょうがない。また、それを見たお客さまから褒められたりすると『このステージは“宇佐美なつ”だからできたんだ』と自信を持つことができます」

とはいえ、前職にいたときに比べて給料が下がったり、生活リズムが変わったり、業界の常識も全く違う世界に身を置いて感じたつらさもあるはず。そんな中でもストリッパーを続けられているのはなぜなのか。

私の仕事選びの基準って、刺激的な毎日を送れるかどうかということなんです。そういう意味で、今は毎日が刺激的で楽しくて仕方がありません。それにこの業界は自分で勤務スタイルを決めることができるので、私は10連勤したら10連休、その後また10連勤……というサイクルで働いている。この勤務体系が意外と自分には合っていて、メリハリをつけながら仕事ができるのはうれしいですね」

最後に今後、宇佐美さんがこれから実現したいことを聞いてみた。

「いわゆる“夜のお仕事”をしているというと、嫌々仕事しているとか、かわいそうだという偏見を持たれがちじゃないですか。でも私のように自ら進んでこの仕事を選ぶ人も多いんですよ。だから、私のステージを通して、あらゆる偏見とか固定概念を覆せたらいいなと思っています

前職の時もそうでしたが、もし明日の私を予想できるようになったら、この仕事を辞めてまた別の刺激的な毎日を求めるかもしれません。でも、今は今が楽しくて仕方がないので、そう思えるうちは、見た人に何か強いインスピレーションを与えられるような踊り子でいたいですね」

取材・文/於ありさ 撮影/河西ことみ(編集部) 写真/先方提供

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