松本穂香のマイルール「分かりません、は絶対言わない。“考えること”が自分の自信に変わるから」
auのCMシリーズ「意識高すぎ!高杉くん」で、神木隆之介さん演じる“高杉くん”に「意識高すぎだよ!」とツッコミをいれる女子高生役が印象的な女優・松本穂香さん。NHK連続テレビ小説『ひよっこ』や映画『青空エール』など数々の話題作に出演し、2019年11月15日(金)公開の映画『わたしは光をにぎっている』では、主人公の宮川澪を演じる。
芸能界デビューから早4年。今や映画やドラマで大活躍中の彼女だが、役者の世界に入るまでは何事も長続きせず、自分の居場所を見つけることができないと悩んでいたという。そんな彼女が、移り変わりの激しい芸能界で「女優・松本穂香」の名前を確立できたのはなぜなのだろうか?
“何をやっても続かない自分”はダメな人だと思っていた
2019年11月に公開予定の映画『わたしは光をにぎっている』で、ふるさとから上京してきたものの、なかなか自分の居場所を見つけることができない主人公・宮川澪を演じた松本さん。映画の台本をもらった時から、澪と自分には共通するところも多く、“素の状態”で演じられたと松本さんは振り返ってくれた。
「今回の作品では、澪の感情で『理解できない』と思うことがありませんでした。登場人物との掛け合いを見ながらも、こういう風に返しちゃう気持ち分かるなあって(笑)。澪が東京に出てきて自分の居場所がないこと、始めたアルバイトをすぐに辞めてしまうところなど、昔の自分に似ているなと思いましたね」
芸能界に入るまで、何を始めても長続きしないことにコンプレックスを感じていたという松本さん。でも、今当時のことを振り返ると、それは決して悪いことではなかったのかもしれないと思えるのだそう。
「15歳くらいまで、何を始めても長続きしない自分に対して、『私ってなんてダメなんだろう』と思っていました。クラスにいても明るいタイプではなくって、自分から発言もしなかったし、居場所がなくて委縮してしまっていたというか。
でも、高校で演劇部に入ってから、自分でも驚くほど演技の世界にのめり込んでいったです。今思うと、それまでの私は『ダメ』ではなくて、単純にやりたいことを見つけるのに時間が掛かってしまっただけなんだなって。演技をしながら“これが私の天職だ!”ってビビっときたわけではないんですけど、気付いたら続いていて、この期に及んで全く辞めたいと思わないんだから、きっとこれが『私のやりたいこと』だったのかなって思います」
映画主演を射止めた「当たり前+α」の工夫
女優の道といえば、まさに競合がひしめく超激戦区だ。何千、何万人と俳優志望者がいる中で、主人公の座を射止めるのはたった一人。そんな世界に身を置きながら、映画『わたしは光をにぎっている』では、中川龍太郎監督から「松本穂香を撮りたい」とラブコールをもらった松本さん。「選ばれる女優」になるために工夫していることは何なのか。
「シンプルに『役をいただけたことの期待に、全力で応えたい』と思っています。期待をかけてくれた人たちに『松本穂香を選んで良かった』って思ってもらいたいので。あとは、『分かりません』『できません』は絶対に言わないようにしています。役をいただけること自体がすごくありがたいことだと思うので、やるからにはやる。中途半端が一番恥ずかしいですからね」
ただ、松本さんは “期待に全力で応える=単にがむしゃらに演じる”ことだとは考えていない。「当たり前のこと+α」を常々意識していると続けた。
「私は昔から、皆がやっていることとか、流行っていることにはあまり興味がなくて、ちょっと変わったことをやりたいなって思うタイプだったんですよね。それが今でも残っていて、ただ与えられた役を一生懸命に演じるのではなく、『当たり前にやるべきこと+α』を意識するようにしています。一生懸命にやるのは誰でもできるけど、そこにひと工夫を加えることが大事だと思っていて。そうすることで“誰でもできる役”ではなくて、“私だから演じられる役”ができるんじゃないかなって思います」
例えば、2016年にドラマ『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子』で松本さんがメイド役を演じた時。撮影初期こそセリフは少ない役だったが、「他の人には演じられないようなメイドになろう」と思い、口を緩くして独特の話し方でメイド役を演じた。結果的にその演技が高く評価され、「メイド役のセリフをもっと増やそう」と台本が書き換えられたのだという。
誰に指示されたわけでもなく、そういった工夫を考え実践することの積み重ねが、松本さんが同世代の俳優たちよりも頭一つ抜ける存在となった所以なのだろう。
「私は誰よりも役のことを考えている」
自信があるから、監督にも意見が言えた
ではなぜ松本さんは自分なりの「+α」を思いつき、行動に移すことができるのか。「“私はできることを全てやった”という自信があるから、工夫につなげられるんだと思います」とにこやかに話してくれた。
「例えば、セリフの少ない役だったとしても『きっとこのセリフを言うまでに、彼女にはこういう背景があって、だからこんな性格で、こんな思いで発言するはず……』というところまで想像力を働かせるんです。もしそれが監督の思っていたことと違って、ムダになったとしても“考えた”という事実は自分の自信になりますから。私は器用なタイプではないから、そうやってコツコツ自信を積み重ねていくことで、行動できるようになれたらいいなと常々思っているんです」
実際に、『わたしは光をにぎっている』の撮影中、中川監督から「澪の演技はもっとこういう感じだと思うんだけど」と言われたことに対して、「澪は私なんです。だから澪はこういう風に動くはずです」と反論したという松本さん。
「生意気ですよね(笑)。もちろんちゃんと、その後に謝りましたよ。でも、私は監督に意見が言えるくらい澪のことを一番に考えている、理解しているんだって自信があったんです」
ここまで一つ一つの役に全力で向き合い、その名前を全国に広めてきた松本さん。その活躍の影には、自分が求められている役について、徹底的に考え抜くこと。考えた後も、自分なりにひと工夫を加えること、という姿勢があった。
たとえ小さなことであっても、「考えて、工夫する」ことを繰り返す。それが、競合ひしめく若手女優のなかで、彼女が“松本穂香”というブランドをつくりあげる第一歩になったのだろう。
取材・文/於ありさ 撮影/野村雄治
Information
映画『わたしは光をにぎっている』
2019年11月15日(金)、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
亡き両親に代わって育ててくれた祖母・久仁子の入院を機に東京へ出てくることになった澪。都会の空気に馴染めないでいたが「目の前のできることから、ひとつずつ」という久仁子の言葉をきっかけに、居候先の銭湯を手伝うようになる。昔ながらの商店街の人たちとの交流も生まれ、都会の暮らしの中に喜びを見出し始めたある日、その場所が区画整理によりもうすぐなくなることを聞かされる。その事実に戸惑いながらも澪は、「しゃんと終わらせる」決意をするー。
出演:松本穂香 渡辺大知 徳永えり 吉村界人 忍成修吾/光石研/樫山文枝
監督・脚本:中川龍太郎
脚本:末木はるみ 佐近圭太郎
主題歌:カネコアヤノ「光の方へ」
製作:WIT STUDIO 制作:Tokyo New Cinema
配給:ファントム・フィルム
©2019 WIT STUDIO / Tokyo New Cinem
http://phantom-film.com/watashi_hikari/
RELATED POSTSあわせて読みたい
【小橋賢児が壮絶な過去から学んだもの】「男は30歳から」なのに僕はその時どん底にいた。
佐藤二朗が教えてくれた、“夢を叶える大人”が20代で絶対にやらないこと
Instagramフォロワー数30万人超! 植野有砂が“遠慮がちな20代”に物申す「世の中を変えるのは私たち。もっとエネルギーを爆発させて」
叶姉妹の自己プロデュース力がスゴイ「私たちに不可能なタスクはございません」
ムロツヨシ&岡田将生――“好感度大”の旬な男たちに仕事論を聞いたら、愛される人の条件が分かった