転職する前に知っておきたかった! 20代でスタートアップに転職して驚いたこと10選
最近、大手・中堅勤めの20代が、裁量の大きな働き方や短期間でのスピーディーな成長を求め、スタートアップに転職するケースが増えてきた。
企業理念に共感した少数精鋭の仲間たちと一緒に、高い目標に向かって試行錯誤を重ねながら全速力で走っていく……。そんな毎日は、大変なことはあれどきっと充実感に満ちていて、キラキラ輝いているに違いない……。スタートアップでの仕事に、そんなイメージを抱いている人も多いのでは?
しかし、実際に20代で設立5年以内のスタートアップに中途入社した人の中には、入社前後で「大きなギャップを感じた」と語る人も少なくない。
20代でスタートアップに転職した広報女性2人も、「誤解されやすいですが、SNSで見せているほど、キラキラしてはいませんよ。仕事は泥くさいことも多いです」と笑う。
「仕事はすごく充実しています」と笑顔を見せる二人。しかし、スタートアップへの転職を検討している人に対しては、「夢を見過ぎて入社すると、痛い目を見るかも」と少し辛口な意見も。二人がスタートアップに入社して驚いたこと、気付いたことを自由に語ってもらった。
※この記事は、姉妹媒体『Woman type』より転載しています。
【1】人事評価制度がなかった
私が入社したばかりの頃、今の会社には人事評価制度が何もありませんでした(笑)。入社して1年が経って、最近ようやく整いつつありますけどね。そもそも社員を“評価する”という概念がなくて。給与は据え置き、中には3年間まったく昇給していない先輩もいました。
コアとなる事業には力を入れていても、バックオフィスの整備は手薄になりがちというスタートアップは少なくない。
経理担当がいなかったので、以前は社長が給料日に自分で銀行に行き、社員のお給料を振り込んでいました(笑)
人事評価制度、経理システム、福利厚生……大手・中堅企業ならあって当たり前のものも、これから整備する段階にある企業も多い。昇進・昇格の基準などについては、入社前の面接などで採用担当に確認しておくとよいだろう。
【2】「未経験歓迎」と言いつつ、欲しいのは即戦力だった
例えば、『広報ポジション、未経験歓迎』って求人を出していたとしても、入社後に求められるのは即戦力人材です。なぜなら、社内初の広報採用という場合も多くて、仕事を教えてくれる人がいないから。私もそうだったのですが、入社当時は『広報やったことないんですけど、何すればいいですか!?』っていう状態でした。
設立から間もない無名のスタートアップでは、経験者を採用するのが難しい場合も。でも、人は足りていないし、今すぐ社員は増やしたい……。というわけで、「未経験歓迎」という求人を出さざるを得ない企業が多いのだ。
いろいろな人が、ありとあらゆるポジションを兼任しているので、それぞれの職種に『専任担当者を置きたい』というニーズはあるんです。でも、研修制度もない、経験のある先輩もいない、そんな職場が多いはずなので、自ら仕事を探して動ける人じゃないと務まらない気がします。
【3】仕事のできない大手出身者がごろごろいた
大企業って、仕事をするための環境がしっかり整っているし、予算も潤沢に持っているじゃないですか。だから、それらがないことに不満を感じて仕事を断ってしまう人が多い気がしているんです。
例えば、『ツールがないからデータ分析ができません』とか、『予算がないからまともなユーザー調査ができません』とか、環境を理由に『できないこと』を並べてしまう人が大企業出身者には多いかも。それだと、仲間からの信頼は無くすし、自分自身も仕事はつまらなくなるしで、スタートアップで働くのはきついかな、と思いますね。
スタートアップはあらゆる環境が未整備なもの。皆が高いパフォーマンスをあげられる環境を「自分自身でつくっていく」という意識がなければ、働きづらくなってしまう。
【4】社員の出入りが激しい!
今の会社に入社して1年が経った頃、経営陣の中で意見のズレが生じ始めて、取締役の一人が退任することになったんです。その時、創業当初からいた社員も含め、10人くらい一気に辞めてしまって。私が社長の次に社歴の長い人になりました。まだ入社してから2年しか経っていないのに、誰よりも先輩です(笑)
駆け出しの組織だからこそ、社員同士の意見がぶつかることも多々……!? 人の出入りが激しい分、環境変化に柔軟に対応する力が求められる。
【5】会社が丸ごと買収された
去年、会社が丸ごと大手企業に買収されたんです。買収先の親会社から雇われ副社長がやってきて、会社の雰囲気も一変。会社って創業期の頃はこうやって変わっていくものなんだなって、実感しました。
ポテンシャルを持っているスタートアップほど、大手企業から買収の提案も受けやすい。ただ、それが双方の企業の成長を加速させることも。やはり、環境変化をおおらかに受け止められる人の方がスタートアップ向きと言えそうだ。
【6】「一部署一人担当制」がスタンダードだった
外注先の開拓やインサイドセールスなど、どの部署もみんな一人で担当しています。もちろん、私の担当する広報も一人部署。経営企画的なこと、総務的なこと、人事的なこと、さまざまなポジションの仕事を掛け持ちしています。
私の会社も、営業、カスタマーサポート、エンジニア以外はどこも一人部署ですね。仕事は多いし大変ではあるんですが、裁量が大きいからこそのやりがいもある。多少忙しくても、自由度高く働ける環境がいい人には向いているかも。
中間管理職的な人がおらず、二人の上司は「社長」だそう。それゆえ、仕事に行き詰ったときの相談相手も、基本的には経営者だ。自分と同じ仕事をしている人が身近にいない環境だからこそ、外に出ていって学んだり、自分の力で課題を解決していくバイタリティーが求められる。
【7】本業に専念できないことが多々ある
広報として入社したのに、最初の半年は採用業務やバックオフィスと兼務。転職エージェントとの面談の調整に時間を取られて、広報業務に専念できませんでした。
少数精鋭といえば聞こえはいいが、裏を返せばとにかく人手不足。やりたいことはいっぱいあるのに、やれる人がいない。そんな状況にあるスタートアップは少なくない。
一人一部署とか、兼任が重なる話にもつながるんですが、本業に専念できないことが嫌になって辞めていく人は時々いますね。そういう人に転職先を聞いてみると、ジョブディスクリプションが明確な職場とか、担当する仕事が明確な派遣の仕事とか、真逆の環境に移っている人が多い印象です。
【8】“キラキラ”しているだけじゃない
前職の同僚に、『転職してからキラキラしているよね~、いいな~』ってよく言われるんです。仕事はすごく楽しいし、やりがいも充実感もすごくあるけれど、やっぱり『楽なことばかりじゃない』のは事実ですね。明日、会社があるとも限らない。そんな中では、泥くさい仕事もたくさんある。そういうところをあまり周りには言っていないだけで。
資金調達に失敗すれば、会社の経営が立ち行かなくなる……。たった一人、優秀な社員が辞めたら売上げに大打撃……!多くのスタートアップが、明日の生存をかけて戦っている。
以前、採用を担当していた時に感じたのは、スタートアップに夢を抱き過ぎている人が意外と多いということ。スタートアップにいけば、何となく自分も輝けるんじゃないか、成長できるんじゃないかって。
でも、それってやっぱり自分の努力がないと叶わないもの。私は広報として会社のSNS運用を任されているのですが、そこではやっぱり『キラキラして見えること』とか『いいこと』しかいいません。素敵なこと、楽しそうなことを積極的にPRするので、そこだけ見てしまう人も多いのかも。会社に注目はしてほしい、でも、採用する人との間にギャップは生みたくない。そんなジレンマは常にありますね。
何となく“キラキラしたいだけ”ではやっていけないのがスタートアップの世界だ。しっかりと仕事に責任を持って取り組む、泥くさい仕事もタフに乗り越える、「そんな覚悟も必要だ」と二人はアドバイスをくれた。
【9】良好な人間関係を構築・維持するのが大切!
スタートアップに限らず、職場で良好な人間関係を築くのは大事です。でも、例えば大手企業だったら誰かと険悪になったとしても、部署異動したりとか、違うプロジェクトに入ったりとか、その人と物理的に距離を置くこともできると思うんです。
でも、スタートアップの場合は社員数が少ないからそれができない。基本的に、全社員とコミュニケーションを取らないとやっていけないので、人間関係がうまく築けないと、つらい面はあるのかなと思います。
社内でいざこざがあったりした場合、フロアの雰囲気が悪くなってしまうのも一瞬。「噂が広がるのも秒速ですよ」と、田中さんは笑う。
人間関係でネガティブなことが起こっても、周りに振り回されず、自分の軸を持って淡々と働き続けられる人の方がスタートアップで活躍できると思いますね。
【10】経営者も“万能”ではない
入社当時、社長も『広報って必要だと思うんだけど、一体何する仕事なんだろうね?』って言ってました。採用したくせに!って思いましたが、経営者でも『何でも分かっている』なんてことはないんだよな、と学んで。
気持ちを切り替えて、やるべきこと、仕事の範囲、目標数字、すべて自分で決めて社長に提案するようにしました。経営陣が『全部決める』というのは無理ですから。
うちの社長も、『広報って、どう目標を設定すれば分からないから、自分で決めてみて』と言います。社内に前例がないから、何が正しい目標なのかは誰にも分からない。そんな手探り感はずっとありますね。
これは、成果や売り上げが明確ではない広報職ならではの悩みかもしれない。だが、「経営者だってすべての職種の仕事に精通しているわけではない」というのは真実だ。分からないなら、自分が助けてあげよう。そんな気持ちになれる人の方が、スタートアップでの仕事は楽しめるはず。
自然と身に付く「経営視点」
スタートアップで働く醍醐味とは?
ここまで、スタートアップに中途入社して驚いたこと、前職との比較でカルチャーショックを受けたことなど、二人が転職前に「知っておきたかった」ことを紹介してきた。一方で、スタートアップで働くからこそ得られる楽しさや、醍醐味があるのも確か。二人はそれをどう感じているのだろうか。
転職して一番良かったのは、『私が経営者だったらどうするかな』と常に経営者目線で仕事のことを考えるクセがついたこと。社長とすぐ近くで働かせてもらっているからこそ、自分の目線も自然と高くなるし、学びが多いです。
大手では数年働かないとできないような、企業ブランディングの仕事なども、すぐに任せてもらえました。企業ブランディングの仕事は、経営者たちの視点をよく理解することが欠かせません。田中さん同様、私も『目線が上がった』という感覚がありますね。
二人とも、経営視点が養われ、一つ上の目線でビジネスを俯瞰できるようになったことを挙げてくれた。未経験だったとしても、プロダクトマネジメントや事業開発など、スケールの大きな仕事を手掛けられるのもスタートアップならではだ。
さっき、スタートアップは忙しいっていう話もしましたけど、深夜帰りばっかりしている、みたいなことはなくて。自分に裁量があるからこそ、今日は何時までに何をやるかを決められる。『今日ははやく帰るぞ』って決めたら、自分で仕事をコントロールするだけなので、やらされ感がないんです。忙しいけどストレスはたまっていませんね。
スタートアップ=長時間労働というイメージを持っている人も多いかもしれないが、そうとも限らない。会社のルールも社員の働き方も「一人一人がつくっていくもの」だからこそ、自由度の高い働き方が実現できる可能性もあるわけだ。
では、いざスタートアップに転職したいと思ったら、自分にフィットする企業を見つけるために何をすべきなのだろう?清水さんは「できることなら、入社前に少しお試しで働かせてもらうといいのかも」と助言する。
最近は、社会人インターンを受け入れている会社や、プロジェクトベースで仕事をフリーランスや業務委託の人、副業・兼業の人にアウトソースしている会社もたくさんありますよね。人手が足りていないスタートアップでは、特にそういったことが盛ん。“お試しで働いてくれる人”でも歓迎してくれるスタートアップは多いはずなので、『ちょっと働かせてください』みたいな提案をしてみるのもありだと思うんです。
あとは、面接などを受けている会社があるなら、現場社員と交流させてもらえるようお願いしてみた方がいいかも。経営者がビジョンを素敵に語ったとしても、それが社員に浸透していない場合もありますし、働き方についてもリアルな話が聞けるかも。その上で、自分とフィットするかを判断した方が賢明だと思います。
通常の転職と同様、職場の実態は事前にしっかり把握しておきたい。それに加えて「短期間試しに働いてみる」という選択肢が取れるのも、柔軟な働き方を取り入れているスタートアップならではだ。スタートアップの“リアルなところ”も頭に入れて、後悔しない転職を実現しよう。
取材・文/石川 香苗子 撮影/栗原千明(編集部)
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