スキルアップ Vol.804

営業の成果をあげる! 効果的な営業日報の書き方とは?

※こちらの記事は『セールスハックス』より転載しております

近年は、営業日報を部下の管理としてのツールというよりも、成果をあげるためのツールとして活用しようとする企業が増えています。営業マンの中には、日報を書くことが習慣づいている人もいれば、面倒だと思ってしまう人もいるかと思います。

多忙な営業マンにとって日報は、商談や提案書作成などの業務と比べるとどうしても優先順位が低くなりがち。しかし、営業日報も「営業力強化のための成長記録ツール」という観点で中長期的に活用していくと実は営業マン本人にもかなり役立ちます。

スポーツジムの筋トレ記録レコーディングダイエット元サッカー選手本田氏のノートなどもそうですが、目標を見据えながら日々の行動を記録し続けるという行為には、人を成長させていく力があるからです。

今回は、営業マンが成果をあげるための営業日報の書き方をご紹介します。

営業日報とは

営業日報とは、営業マンの1日の業務内容の記録であり、業務時間にどのような仕事をしたかを上司に具体的に報告するための社内書類です。

企業によってフォーマットや様式はさまざまです。近年はビジネス文書のデジタル化が進んでいる過渡期なため営業日報も紙面の日報、Excel上の日報、メール日報、スマホアプリ、SFAの一部としての日報などバラエティに富んでいます。

一般に、営業日報では時系列に業務内容を記載します。

例)

業務内容:
9:00-9:30 社内 ミーティング、お客様のメール対応
10:00-11:00 A社 来期の〇〇計画について見積書提出
13:00-14:00 B社 初訪。事例紹介、現在の課題についてヒアリング等
15:00-16:00 C社 新サービス×××の案内
17:00-18:00 社内 見積書、提案書作成、他

共有事項:
※A社より20%ディスカウント依頼あり
※競合Z社は来春1月よりLINEと連携した新サービスをリリース予定(B社担当者のコメント)
※各社景気の動向を気にしており予算拡大というよりは維持の方針

仕事の進捗管理は、営業日報だけでなくミーティングや口頭でも行われます。そのため、口頭の報告と重複する内容も出てきますが、営業日報に書いた内容は記録として残るため、重要事項は必ず記載しておきましょう。

営業日報を書く目的

営業日報の目的は、上司にとっては部下の仕事の状況把握や育成、業界の動向把握などが中心です。上司は日報で得る情報を次の営業戦略に活かすことができます。営業マン個人にとっては上司への報告と自分自身の目標達成のための行動管理がおもな目的だと言えるでしょう。

上司にとっての目的

・部下の仕事の状況を把握し、必要に応じ指導・アドバイスする
・市場の動向を把握して営業戦略に活かす
・営業マン個々のノウハウ、ナレッジを蓄積して全員が活用できるようにする

営業マンにとっての目的

・上司に対しての1日の業務報告
・会社として情報共有すべき内容を記載する(チームへの貢献)
・目標達成に向けて最適な行動がとれているか1日を振り返る
・1日の行動を見直し、翌日からの行動計画に反映させる

営業マンは、まず上司がわかりやすいように簡潔に、営業日報を記載する必要があります。

そして、いかにして売上げを上げていくか、自分の営業力を高めるかという観点で、日々の自分の行動を記録し振り返っていくことが望ましいと言えます。

営業日報のメリットとデメリット

営業マンにとって営業日報をつけるメリットは何があるでしょうか?ここでは営業日報のメリットとデメリットを解説します。

メリット:営業マンとしての成長を確認できる

日報を半年~1年スパンで振り返ると、自分の営業活動と成果の関係性が何となくパターン化できるようになります。相性があうお客様の傾向もわかってきます。

・6カ月前に新規開拓をしていたお客様から最近問い合わせが出始めている
・自分の新規訪問後の受注率は初年度で2割くらいのようだ
・初対面でぶっきらぼうなお客様のほうが見積依頼してくる傾向がある
・ランダムに営業しているのになぜか不動産業界からの受注が多い

というように気付きが起こります。記録をトラックしていくと自分が成長していることも実感できます。どのような行動が成果にどのくらいのタイミングで結びつくのかが見えてくると、一時的に売上げが低迷しても「こうすれば半年以内に巻き返せる」と自分なりの営業戦略も立てられるようになります。

メリット:適度なプレッシャーの効果

日報は一般に上司に提出します。最近は日報をチーム全員で共有する企業も増えているようです。「誰かに見られるから頑張れる」「すごいと思われたいから頑張る」「恥をかきたくないから頑張る」という気持ちは、人間の自然な感情であり健全な承認欲求だと言えます。

一旦、外に出てしまえば自分で自分を律しなければいけない営業マンにとって、「このままでは日報に書くことがない」というような適度なプレッシャーはむしろモチベーション維持に有効です。

メリット:備忘録、証拠としての機能

人間の記憶力のピークは18歳と言われています。成人してしまえば年々記憶力は低下します。もちろん、重要な話なら覚えることができますがちょっとした小さなやりとりや商談中にふと思いついたアイデアなどは、たしかに2~3日もしたら意外に忘れてしまいます。

また、脳には記憶を上書きする力もあるそうです。ビジネスの現場でも言った、言わないでもめることは少なくありません。多分どちらかが記憶を上書きしているか忘れているのでしょうが、第3者にはわかりません。

日時や金額に関すること、お客様の重要なコメントなどは日報に記録しておくと自分の備忘録としても役立ちますし、何かあったときの証拠になります。

メリット:営業バッティングの際に有利に

新規開拓営業を行っていると、同じ会社の営業マンが同じ企業にアタックしている場合もあります。どちらかが担当者と会っていれば話は早いのですが、意外によくあるのが飛び込み営業や資料送付だけしており名刺だけ相手の手元にある場合です。

「おたくの営業マンの名刺が3枚あるけど誰か1人よこして」となった場合、一般に上司が各営業マンの話を聞いて調整します。何も記録がなく「たしか、3カ月前くらいにあたったと思います」とあいまいに答える営業マンより、飛び込み営業をした日時、エリア、アタックリストの概要などを日報にしっかり書いている営業マンのほうが熱心にアプローチしていたと判断され有利になるかもしれません。


営業日報にはデメリットもあります。近年は働き方改革が進んでいますが、いろいろな調査で効率化が必要なムダな業務の中に日報作成もランクインしています。効率化すべき点があるようです。

デメリット:作成に時間がかかりすぎる

日報の作成に必要以上に時間をかけるのはさけたいものです。とはいえ、営業活動では幅広い雑談をしながら信頼関係を作っていく時間、課題を見つけるまでのディスカッションのような時間なども結構あります。なかなか言語化しづらい内容が多く、正確に書こうと思うと時間がかかってしまうものです。

スマホアプリ日報の中には、すべての項目をプルダウンで選べばよく何も入力する必要がない効率的な日報もあり、1日に大量に飛び込み営業をするような会社などに好評のようです。ただ、コメント欄を重視する企業もあるなど価値観はさまざまなため、今のところ日報の決定打と言えるツールや様式は登場していないと言えるでしょう。

デメリット:形骸化しやすい

営業日報作成は単なるルーティンワークとなりやすい傾向があります。昔からの慣習だから継続しているという会社も少なくありません。営業日報を書かせる目的があいまいだと営業マンも事務的な感覚で書いて提出し、営業管理職もさらりと目を通すだけとなり、日報に書いた内容があまり活用されません。

デメリット:読まれない営業日報 → 営業マンのモチベーション低下

昨今は、中間管理職もプレイングマネージャーが多いため、一人ひとりの営業日報を細かく見ることができない場合もあります。しかし、申し送りした内容や良かれと思って情報提供した内容を上司が見ていないと営業マンのモチベーションは下がります。また、営業マン全員の日報作成にかけた時間がムダとなります。

上司が営業日報を読む時間もないような多忙な状況であれば、むしろ日報を廃止して朝ないしは夕方のミーティングで進捗確認と情報共有を行ったほうがコミュニケーションがスムーズかもしれません。あるいは週報にしたり、簡単なスマホアプリに切り換えるなど上司・部下双方の負担を減らす方法もあります。

営業日報の書き方と内容

ここでは成果につながるための営業日報の書き方を説明します。以下のように目標、実績、振り返りというステップで書くことがポイントです。

Step1. 本日の目標を書く

一般的な営業日報は1日の終わりに書くかもしれません。しかし、成果をあげるために営業日報を書くのであれば、その日の朝に目標を書くと効果的です。前日に目標を決めている場合は朝に優先順位が適切かどうかを確認します。

例)
・新規開拓の飛び込み営業を50件、メールを30件行う
・N社の来期のパンフレット制作についてヒアリング
・A社のクレームの件に関して担当者に電話をする

朝に目標を意識すると行動がテキパキとなり、1日ぶれないで動けるメリットがあります。また、気が進まなくて先延ばししていることも、目標として日報に書くとやらざるをえないため実行力がアップします。

Step2. 本日行なった業務実績を記録

本日行なった業務の実績を記載します。業務内容と時間、新規開拓営業活動であればどのくらい電話をかけたのか、飛び込み営業をしたのか、目標と比較して達成率はどうかなどを事実ベースでできるだけ数字を使ってわかりやすく書きます。商談の場合は、日時や担当者、打ち合わせ内容をきちんと記載します。

尾原和啓さん

Step3. 本日の振り返りをする

朝に確認した目標と照らし合わせて本日の実績がどうだったのかを振り返ります。ぱっと見たときに内容がわかるように箇条書きにすることがポイントです。また、事実と思いをきちんと区別して書きます。

尾原和啓さん

Step4. 翌日の目標を立てる

最後に1日の仕事を振り返って、翌日はどのようなことに気をつけて業務を行うのか決めます。本日の目標に無理があった場合は次はやや抑え目に、逆に簡単に達成できた場合は目標を高めに設定してみるなど調整します。

例)

本日の振り返り:
今日の目標の飛び込み50件は担当者とほぼ会えないことを想定していた
→ 岩本町界隈は古めの中規模ビルが多く飛び込み営業しやすい
→ 明日は名刺交換件数を重視した目標件数にしよう…… etc.

翌日の目標:
飛び込み営業40件、担当者との名刺交換数5件

このようなステップで書くと、営業日報上でPlan(計画)、Do(実行)、Check(評価)・Action(改善)の流れがわかりやすくなります。

尾原和啓さん

営業日報の効率化に役立つITツール

ここでは、営業日報作成に便利な無料ツールをご紹介します。

◆スマホやGoogleの音声入力機能を活用(読み上げて書く)

近年はスマートフォンやGoogleの無料音声入力機能の精度が格段に向上しています。書くのが苦手な営業マンは、業務内容や思いついたことをつぶやいて自動入力された文章に手を加えると効率的です。

尾原和啓さん

手順:
Googleドキュメント(ブラウザはクローム)を開く
ツール → 音声入力機能クリック
マイクが表示されたらクリック
口頭で内容を読み上げる
自動入力された文章を修正、箇条書きにして日報にコピペする

◆Googleカレンダーを活用

Googleカレンダーなどの予定管理ツールを活用している人は、予定の部分をそのままコピペして日報に使うと効率的です。Googleカレンダーは社名やエリア名などをGoogeの情報をもとに自動で反映してくれるため自分で記入するよりもミスが減るかもしれません。また、予定共有機能を活用すればGoogleカレンダーそのものを営業日報としてチーム全員で活用することも可能です。

営業日報の内容を成果に繋げるためには

営業日報を成果につなげるためには、日報を報告書ではなく「PDCAを回すのためのツール」と考えることがポイントです。

◆上司からのフィードバックを次回の目標に反映させる

日報はそもそも上司に見せるために書いています。できるだけ上司からのフィードバックを積極的にもらい自分の次の目標に活かしましょう。上司のアドバイスからチームの営業方針としてどこに注力すべきなのか、自分の行動のどの部分を効率化すべきかもわかります。

あまりフィードバックしてくれない上司にはコメント欄で質問、相談をしてもよいでしょう。上司によっては「自由に動いてもらったほうがよい」「あまり管理するとやる気がなくなるかもしれない」と考え、フィードバックを遠慮している場合があるからです。

ペンシルベニア大学のアダム・グランド教授によると、そのような場合は上司がフィードバックしやすいように部下自ら水向けをすることが有効と言っています。

例えば、
・他にも改善できることはないでしょうか?
・仕事を早くこなすことができますが、大事なことを見落とす傾向があります。どのようにしたら直せますか?
・この3つの点を改善したいと思っていますが、これに1つか2つ追加するとしたら何があるでしょうか?
などが挙げられます。

営業日報からフィードバック、フィードフォワードを得ることを継続的に繰り返していくと営業スキルの向上につながります。

◆営業日報による改善を習慣化させる

自分の会社の最も成績の良い営業マンの、1日の平均訪問件数は何件でしょうか?

例えば、それが「1日3.5件」で自分の平均訪問件数が「2.6件」なら、まず「1日の訪問件数3件」を目標にしてみます。そして、毎日営業日報にその時点での平均件数を書くことで自分の行動を改善していくことができます(なお、1日訪問できる件数、商談件数などは企業の営業スタイルによってかなり異なるため、身近にいる優秀な先輩をベンチマークするのが一番です)。

見習ってもなかなかすぐ件数は増やせないものです。そこでなぜなのか考えると課題発見力が弱いため次回のアポイントの理由が見つけられない、単純にお客様の数が少ない(新規開拓が必要)、提案書類作成に時間がかかりすぎているなどの理由がわかり、真剣に自分の弱点や1日の動きを見直すようになります。

もちろん目標は件数に限りません。日々の行動に何かしら目標を持って日報で毎日振り返ることが大事なのです。

まとめ

どうしたら営業成績が上がるかを知っている営業マンは多いと思います。どうしたら英語ペラペラになるか、どうしたらビジネスマンとして成功できるか等々の一般的な夢や目標も同じですが、本の1冊も読めば達成するためのヒントを得ることはできます。

要は、実行が難しいのです。目標達成は結局のところ努力し続けられるか、PDCAを回し続けられるかが決め手です。

営業日報は義務として書かなければならない書類ですが、これまで自分が努力してきた道筋、成長度合い、自分が向き合うべき課題を教えてくれる貴重なツールでもあります。無料のコーチングを受けることもできます。営業日報をフル活用して優秀な営業マンになりましょう。

目標設定の前に自分の今の立ち位置をチェックするとより効果的です。無料ダウンロードできる営業スキルチェックシートをお気軽にご活用ください。

※こちらの記事は『セールスハックス』より転載しております
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