キャリア Vol.822

クラウドワークスCOOに“デキる人になるための副業”の選び方を聞いてみた「役に立てるかより、コミットしたいかを考えて」

みずほフィナンシャルグループ、SMBC日興証券、NTTドコモーー。2019年は大手企業が次々と副業解禁を宣言し、いよいよ会社員にとって副業は無視できない存在になってきた。実際に、仕事がデキる同僚から「副業を始めた」という話を聞く機会も増えたのでは?

そんな世の中の流れを受けて、「自分も何か副業をやった方がいいかも……?」と考える人は多い。 でも、副業を始めたからって“デキる人”になれるわけではないし、選び方を失敗するとただ労力を費やすだけで本業にも影響が……なんてことにもなりかねない。

20代のビジネスパーソンはどのような視点で副業を選んだらいいのか? クラウドワークスCOOの成田修造さんに、真に“デキる人”になるための副業の選び方について聞いた。

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取締役副社長 兼 COO 成田 修造さん
慶應義塾大学経済学部在学中よりアスタミューゼ株式会社に参画。オープンイノベーション支援サービス「astamuse」の事業企画を手掛ける他、大手人材紹介会社との提携事業を立ち上げなどを担当。その後、株式会社アトコレを設立し、代表取締役社長に就任。12年より株式会社クラウドワークスに参画、執行役員に就任。その後14年取締役就任を経て、15年より現職

副業者にとって2020年はチャンスの年

多くの企業が副業解禁を宣言した2019年を、成田さんは「歴史上もっとも“副業OK”の会社が増えた年」だと振り返る。一方で「副業先として働ける企業」はそれほど増えておらず、企業が副業者を受け入れ、活用する体制はまだ十分に整っていないのが現状だ。

「副業者を受け入れる企業は未だ少ないものの、最近ではスタートアップやITの世界で広がりつつあります。事業をゼロから始めるとき、いきなり正社員を雇うのは企業にとっても働き手にとってもリスキー。だから『リスクは取れないけどお互いに興味がある』という場合に、『まずは副業から』とする会社が増えてきたのです。例えばスマホゲーム開発で知られる株式会社ミラティブは、新規事業を立ち上げる際に、10人以上の人材を副業者から集めたことで話題になりました」

このように、本業で経験を積んだ人が、副業でスタートアップを手伝う動きが生まれつつある。従来、企業は専門的な知識を得ようとすると、コンサルに多額の費用を支払わなければならなかった。しかし知識や経験が豊富な人材を副業者として雇うことができれば、報酬は双方話し合いのもとで決まるため、企業側も適正な価格で成果を得ることができる。

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副業者を受け入れることで、企業はこれまで転職市場に出ていなかった優秀な人材と繋がることができる。つまり人材採用に悩む企業側のメリットは大きいのだ。

「仕事ができる人の中には、現時点で転職を検討していない人も多い。それでも、視野を広げたいとか、良いネットワークを築きたいという気持ちはあります。だから『まずは副業から手伝ってほしい』と協力を仰ぐケースが増えてきているんです。この流れは今後、スタートアップに限らず大手企業にも広がっていくでしょうね。2020年は多くの企業が『副業の求人募集』をし始めるはずなので、副業したい側にとってもチャンスの年です」

「副業」は“お小遣い稼ぎ”からスキルアップの手段に変化

「企業側の意識だけでなく、個人の副業に対する意識も大きく変わりました。昔は副業といえば“お小遣い稼ぎ”のイメージが一般的でしたが、今は優秀な人ほどスキルや経験を得るための『複業』を意識しています

従来はあくまで本業がメインであり、副業はその名の通り「サイドジョブ」という認識が一般的だった。ところが今は、知識・経験・ネットワークを広げるために“複数の業務”をする人が、IT業界を中心に増えていると成田さんは解説する。

しかしいわゆる“デキる人”たちが副業を始めたことで、「副業する人は“デキる人”だ」と考え、「自分も何か副業を始めなくては」と焦るビジネスパーソンも目立ってきたという。成田さんはこの現状に対して「むやみには副業をすすめたくはない」と語る。

「普通に会社で働いていると、社外の人と交流する場は限られていますから、副業は自分の会社やスキルを客観視する良い機会になると思います。ただ、目的がないまま副業を始めてしまうと、副業に費やした時間はお金にしか変わりません。スキルが身に付かないのに、一時的な報酬のために時間や体力だけ消費していくのは非常にもったいない働き方です」

副業選びのポイント1.本業と“ちょっと違う”仕事を選ぶこと

20代は副業を自己投資の一つと考え、戦略的にキャリアを設計する意識が大切」だと成田さん。具体的に、副業を通して“デキる人”になるためにはどうすればいいのだろうか。

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「自分が普段眺めている景色をアップデートしてくれるような副業がおすすめです。ポイントは、今自分がやっている仕事と“ちょっと違う”仕事を選ぶこと。例えば、職種は同じだけど本業とはビジネスモデルが違う会社や、規模の異なる会社を選んでみる。そうすると、自分の経験を生かしつつも、これまでとは全く新しい風景を見ることができます。

例えば、BtoCのITサービスを展開している企業で働いている方なら、農業とITを組み合わせたサービスを開発する企業で副業をしてみると、自分の知見は生かせるし、農業についての知識も身に付きます。こんなイメージで『自分の世界が広がる副業』を探してみるのがいいと思います」

本業と同じような副業を選んでしまうと、経験やスキルの幅が広がらないため自分への投資にはなりづらい。またいきなり門外漢の業界に飛び込んでも、自分の力を生かしきれないので活躍しづらいという。

「副業はまだ事例も少ないので『なんとなく楽しそう』とキラキラしたイメージを持っている人も多いかもしれません。でも、本業で活躍しつつ+αで働くというのは、時間的にも体力的にもきついことが多い。だからこそ、自分の力が生かしきれなくてモヤモヤしたり、本業と同じことをしているだけだったり……という副業はもったいなくもあるのです」

副業選びのポイント2.大事なのは「貢献できるか」より「貢献したいか」

とはいえ20代はやる気は十分でも、自分のスキルに自信を持ちづらいのも事実。副業にチャレンジするのは気が引けてしまう人も少なくないだろう。しかし成田さんは「これまでやってきたことが少しでも生かせそうなら、ぜひトライするべき」だと話す。

「副業を続けるために大切なのは、役に立てるかどうかよりも、自分がコミットしたいと思えるかどうかです。

なぜなら企業は、副業者の『他の会社で培われた、自社の社員とは違う視点や経験』を求めているから。もし経験が浅くても、例えば『開発中のBtoBサービスに関して、いちユーザーとして意見を言う』であれば簡単だと思いませんか? それだけでも副業先では重宝される可能性がありますし、もし知らない知識があるなら働きながら勉強していけばいいだけです」

成田さんが「自分がコミットしたいかどうかを尊重した方がいい」と考えるにのは理由がある。

「繰り返しになりますが、副業って時間・体力的に見るとキツいもの。本業をおろそかにすることなく、いかに副業で学びを得るのか、どのくらいのペースで働くのかといったことも合わせて考えなければなりません。

そういった大変なことも多いからこそ、企業の課題や考え方を聞いて、本当に自分がコミットしたいかどうかという視点で副業を選ぶことが、実は一番大切なんです」

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自身も副業でスタートアップ支援を手掛ける成田さん。繁忙期が重なり忙しくなることもあるが、さまざまな経営者と関わる中で本業だけでは得られない学びがあり、やりがいを感じているという。

「20代でどれだけ視野を広げられるかで、30~40代での伸び方も変わってくると思います。だからこそ今の仕事で力を付けつつ、副業を通して自分自身をどんどんアップデートする意識を持てるといいですよね。知識や経験、ネットワークを広げながら、自分自身の価値観や仕事のスタイルを固めていくことができれば、若手を卒業してもずっと成長し続けられる“デキる人”でいられるはずです」

取材・文/一本麻衣 撮影/吉永和久


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