21歳で800万円の借金を完済! 営業で一旗揚げた情熱社長「僕の時間を買ってください」から始まった逆転人生
今回紹介するのは、家庭用蓄電池の販売を始めとするエコ・リフォーム事業で、全国屈指の導入実績を誇る株式会社エコライフ・代表取締役の榊康一さん。
榊さんは貧しい幼少期を過ごし、自分で学費を稼ぎながら高校に通った。卒業してからは輸送業を営む父のもとでドライバーとして働いたが、その会社が倒産し、自身も借金を背負うことに。
そこで榊さんが借金返済のために選んだのが、営業の仕事だった。20歳で入社した大手太陽熱温水器メーカーで伝説の営業成績を残し、当時最年少で支店長に抜擢されるほどのトップ営業パーソンになったのだ。
生き残るために選んだ営業職で上りつめ、28歳で独立。現在は湘南エリアで4つの会社を立ち上げ、自身が培ってきたノウハウを後進へ伝える活動に注力する榊さん。「仕事に学歴や肩書きは関係ない、必要なのは志だ」と話す榊さんに、その躍進の秘訣を聞いてみた。
何もなかった20歳の自分。
「僕の時間を買ってください」と頼み込んだ
高校卒業後、父親が1人で経営していた会社を手伝い、ドライバーとして働いていた榊さん。しかしバブル経済が崩壊し、会社は倒産。榊さんも家族の借金の一部を背負うことになってしまった。
その額なんと800万円。高卒の20歳が普通に働いていては、到底返すことができない金額だった。そこでとにかく給料が高い会社を探していたところ、大手太陽熱温水器メーカーの営業職が歩合給で募集していることを知った。
当時は金髪リーゼント姿だったという榊さん。応募する企業に「こんな格好なんですけれど、面接に行っても大丈夫でしょうか?」と電話で確認しところ、「とりあえず来てください」と言われて、面接を受けることになったと笑う。
「面接のときに『うちは頑張った分だけ給料として還元されるし、年功序列ではなく実力主義だから』と言われて、その言葉がすごく心に刺さったんです。実際に先輩の給与明細を見せてもらって、この金額がもらえるならぜひ働きたいと思いました。営業って夢のある仕事なんだなと感じましたね」
しかし当時の榊さんに営業経験はなく、あるのは時間と体だけ。そこで面接時に「僕の時間を買ってください」と懇願。「3カ月休まず働いて、結果を出してみせる」と約束したのだという。
とはいえ、営業の仕事はまったくの未経験。無事に入社できたものの、最初の2カ月は思ったよりも売れなかった。
「歩合給なので、とにかく売れなければ給料は上がりません。私は借金を返さないといけなかったから、自分ができることは何でもして、がむしゃらに働きました。当時付き合っていた彼女と一緒に暮らしていたのですが、それも解消して社員寮に入って。通勤時間がもったいないし、わずかな間でも先輩のノウハウを盗みたかったんです」
試行錯誤の末、3カ月目でようやく歩合給を得る件数の成約を獲得。基本給以外のお金を初めて手にしたときに、「頑張ったら報われるというのはこういうことなんだ」と実感したという。
「その3カ月間、先輩からもらうアドバイスの取捨選択をしながら、がむしゃらに契約を取ることだけに集中してきました。例えば『未経験のお前には無理だ』みたいなアドバイスは一切無視して、『お客さまはお前を断っているんじゃない。お前の提案を断っているだけなんだ。お前自身は否定されてないから、落ち込まず次にいけ』と助言してくれたことには耳を傾ける。そういった自分が意欲を持てるアドバイスだけを受け入れるようにしていたら、自然とやる気が出てきて、アポ数や契約数を増やすことができたんです」
「千人以上の若い子が、お前を希望の星として見ている」
上司に言われて気付いた自分の価値
営業成績は順調に伸び、なんと1年半ほどで800万円の借金を全額返済するまでに。榊さんは現場のエースとして営業部をけん引する存在になった。しかし、すべてが順調にいったわけではなかったという。
「その時は、とにかく休まずひたすら営業活動をしていました。でも稼いだ後に、やる気がどんどん削がれてしまって。目標を掲げてひたすら数字を追いかけて、その結果、お金を手に入れる。でもお金って、一度手にしたら終わってしまうんですよ。気持ちがついていかなくなって、このまましぼんでしまうのではという感覚に陥りました」
その時、直属の上司から「お前、辞めようと思っているんじゃないか?」と見抜かれてしまう。榊さんが言葉に詰まっていると、上司から「お前の志は何だ?」と問いかけられた。今まで働く目的など考える機会はなかった榊さんは、「ないです」と素直に答えたという。
「上司がこんな話をしてくれたんです。『全国で千人以上の若い営業マンが、“どうやったら榊さんみたいに若くして活躍できるんですか?”と聞いてくる。お前はお金が欲しいという思いだけでやってきたんだろうけれど、結果的にはその千人以上の若い子たちがお前を希望の星として見ているんだよ。お前にはそれだけの価値があるんだ』と」
自分の価値なんて考えたこともなかった榊さんにとって、上司からの言葉は衝撃的だった。
「僕の家は貧乏だったし、学歴があるわけでもない。でも、営業としてある程度成績を残したことで、自分の存在価値を認めてもらえた。そこで改めて、自分の働く目的は何だ?と考えました。僕はセールスができる。だったらセールスで人を幸せにしよう、と決めたんです」
働く目的が定まったおかげで、目先のことで気持ちが揺れることがなくなり、なんとそこから営業成績は3倍にまで増えたという。その後も順調に成績を伸ばし、23歳のときには最年少で支店長を任されるまでになった。
「営業は学歴がなくても、それまでの実績がなくても、ゼロから自分の価値をつくることができます。そして売れている先輩のマネをして、全ての時間を捧げて努力すれば、ある程度までは売上を上げられる。しかしそこから頭一つ抜けるためには、『志』を持って仕事をすることが大事なんだと学びました」
その後、榊さんは28歳のときに独立。それまで培った営業ノウハウを生かし、エコ・リフォームの代理店である株式会社エコライフを立ち上げた。
エコライフの経営理念は、「お客様・社会の幸せを追求し、 社員の物心両面の豊かさを実現する。 ラベルに捉われない、差別のない、 敗者復活戦がある社会環境に貢献する」。まさに榊さんの経験をもとにつくられた会社なのだ。
若いうちから人生を諦めないで
「ラベルに捉われない、差別のない、 敗者復活戦がある社会」と謳っている通り、エコライフの採用は、学歴・経歴にはこだわらない。フリーターやドライバー、工場の製造スタッフなど、多様な経歴の人を迎え入れ、未経験から一人前の営業に育てている。
「世界最高峰の実践教育の会社を目指す」と宣言し、その教育術はNHKのニュース番組で取り上げられるほど話題になった。
「私がかつて上司から言われたように、若い人にとって『同世代の輝いている人』はヒーローなんです。例えば今エコライフに入社した元フリーターが、トップ営業になったとする。そうすれば、全国にいるフリーターの子たちの中には、彼を『希望の星』だと思う人も出てくるしょう。こんな風に、誰だって価値ある存在になることができるんです」
自身もトップ営業として活躍し、今まで多くの営業パーソンを育ててきた榊さん。最後に、現在くすぶっている20代に対する想いを語ってくれた。
「僕も最初からトップセールスだったわけではありません。『今日は10分話せたから、明日は11分話そう』のように、小さな目標をクリアしていくところから始めました。そうやって小さな成功を積み重ねていけば、自然と『もっと頑張りたい』と思えるようになるものです」
「そうしているうちに、自分は何のために働くのか、どんな志を持っていたいのかを深く考えられるようになります。自分なりの理念や志を持つことができれば、人生の迷いは少なくなるし、視座の高い仕事をすることができるようにもなる。
今もし、くすぶっている若い人がいるなら、『人生を諦める前に、まずは存在価値を感じられる仕事に挑戦してみよう』と、強く進めたいですね」
新人時代は仕事に没頭することで、がむしゃらに営業成績を伸ばしていった。そして「自分の存在価値」に気付き、自分の軸をつくったことが、その後榊さんをさらに飛躍させたのだ。
真のトップ営業になるための近道はない。しかし志を持って着実に前進していけたら、必ず人生を“リベンジ”することはできる。「若いうちから人生を諦めないでほしい」。榊さんの言葉からは、そんなアツい想いが感じられた。
取材・文/キャベトンコ 撮影/高橋圭司
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