“1社しか受けない”転職活動は危険?「同業・同職種転職」の失敗事例をプロが解説!
28歳(女性)河東さん(仮名)のケース20歳 短大卒業後、ソフトウエア開発会社にインストラクターとして就職(年収350万円)
25歳 ソフトウエア開発会社の営業職に転職(年収450万円)
26歳 特許事務所に営業職として転職(年収400万円)
<25歳で体験した“失敗転職活動”の内訳>
転職活動期間:1カ月
希望条件:前職と同業・同職種、立ち上げメンバーであること
妥協した条件:残業があること
応募社数:1社、書類選考通過:1社、1次面接通過:1社、内定社数:1社
学生時代からパソコンを使って作業することが好きだったという河東さん。短大を卒業した後は、ソフトウエア開発会社で自社ソフトの使い方を説明するインストラクターとして就職した。
「仕事内容は、既存のお客さまのもとに行って、自社ソフトの導入支援や、社員の方に使い方のトレーニングをするというものです。客先に行くついでに契約を取るなど、営業的な要素もありました。優しいお客さまも多かったので、仕事自体はとてもやりがいを持って働いていました」
しかし入社して5年ほど経った頃、会社の業績悪化がきっかけで、河東さんの人生は大きく変わることに。
「入社6年目のタイミングで、営業所が閉鎖されることになってしまって。私が住んでいる大阪には他に営業所がなかったので、もし会社に残るなら関東に引っ越さなくてはいけない。仕事自体は好きだけど転勤は嫌だったので、同業種・同職種で転職先を探すことにしました」
「早く次の仕事を決めないと」と焦った河東さん。スキマ時間を見つけては求人サイトをチェックする日々が続いたという。
「求人サイトでは同業種・同職種の会社をいくつか見つけることができました。その中からどの会社に応募しようかと見ているうちに、『せっかく転職するのなら、新しいチャレンジがしたい』と思うようになって。そしたらたまたま『大阪営業所立ち上げメンバー募集』という求人を発見したんです」
前職と同じような事業内容の会社が、新たに大阪で営業所を立ち上げる。この会社なら自分の今までの経験を生かして活躍できるだろうと考えた。
「すぐに応募して選考はトントン拍子に進み、転職活動を始めて1カ月もしないうちに内定が出ました。事前に『前職より営業要素が少し強くなると思いますよ』とは言われたのですが、営業は多少経験していましたし、正直余裕だろうと思っていて。とにかく早く仕事が決まって、安心した気持ちでいっぱいだったんです」
“立ち上げメンバー”として意気揚々と入社したが……
新設の大阪営業所には、彼女を含めた5人のメンバーが新たに入社。営業所長には営業経験の豊富な本社の人が異動してきた。しかしその営業所長はプライドが高く、大阪地域の気質になじめなかったのだという。
「たとえば『東京ではこの値段で売れているから』『東京のやり方に従ってもらう』と絶対に自分のスタイルを崩そうとしないんです。結局、担当地域での新規受注は伸び悩み、ボーナスもゼロでした」
売上が上がらないからと日に日に残業も多くなり、チーム内の雰囲気も悪化した。
「みんながギスギスしていて、雰囲気は最悪でした。そんなある日、私が用事があって早く帰ろうとした時に、営業所長から呼び止められたんです。『お前、売上も作ってないくせに早く帰るなんて、やる気ないのか?』と言われて。日頃から嫌な気持ちを我慢していたこともあり、もうこの会社にいるのは無理だ……と。退職を決意しました。こんな嫌な気持ちで辞めることになるなんて、この転職は大失敗だったと思います」
type転職エージェント キャリアアドバイザーからのアドバイスをCHECK!
河東さんの転職活動は、どういった点に気を付けるべきだったのだろうか。type転職エージェントのキャリアアドバイザー・植草武尊さんに解説してもらった。
「河東さんの転職活動のNGポイントは2つあります。一つは1社応募しただけで転職先を決めてしまったこと。もう一つは転職活動の軸をブラしてしまったことです」
NG1.1社応募しただけで転職先を決めてしまったこと
「1社しか選考を受けないということは、当たり前ですが他社との比較ができないということ。いくつか求人を見て探したとのことですが、求人票の内容やホームページで得られる情報だけでは、『比較検討』の材料としては少なすぎるでしょう。面接に行ってその会社の人と話したり、オフィスをその目で見たりすることで、会社の実態を知った上で比較できればよかったと思います」
「A社はやさしそうな人が多かったな」、「B社は厳しそうな雰囲気だけど、給与がA社より高いな」といったように、具体的に比較をすることで、自分が転職において何を大切にしたいのか改めて確認することもできる。
「最終的な意思決定の材料をつくるために、同業種・同職種で転職する場合でも、3~5社は面接することをおすすめします。採用ニーズや経験値によって変わってくるものの、5社面接に行くつもりなら、7~8社(多い人でも10~15社)に応募するのが一般的ですね」
また、3~5社の面接に行くのであれば、転職活動は調整期間も含めて1カ月半~2カ月程度は必要だという。
「もちろん離職している場合は選考日程も組み合やすく、結果が出るのは早くなりやすい。でも河東さんに関しては、確かに会社がつぶれてしまう不安はあったものの、仕事がないわけではありませんでした。同業種・同職種の求人であれば選考通過率も高いので、そんなに焦らずに『2カ月程度で転職先を決めよう』など余裕を持って考えてもよかったのではないでしょうか」
NG2.転職活動の軸をブラしてしまったこと
「河東さんが根本的に変えたかったのは、業績が安定していてちゃんとボーナスがでるとか、ある程度事業としての将来性があるかという点だったのではないでしょうか。しかし目先の『立ち上げメンバーって面白そう!』ということに目がいってしまった。せっかく転職するなら、新しいチャレンジがしたいという気持ちは分かりますが、『何を一番大事にするか』はブラさず転職活動を進めるべきでした」
同業種・同職種の転職は、「仕事内容がだいたい想像つく」ものだが、事業フェーズによっては思いもよらない業務が発生することもある。立ち上げメンバーであればなおさらだ。
「大阪営業所の立ち上げメンバー募集という求人を見たときに、どんな環境で仕事をすることになるのかを考えておくべきでした。営業所の立ち上げはゼロからのスタートなので、顧客を新規開拓していく必要もあるでしょうし、何があるのかは保障できない世界です」
とはいえ、入社前、しかも社内にまだない部署の仕事を完全に理解するのは難しい。そのときに実施したいのが入社前に現場社員と面談させてもらう「オファー面談」だ。
「内定承諾の前などに、人事担当者に『現場社員と面談がしたい』と頼んでみてください。まだ社内にない部署だとしても、例えば関係者になりそうな社員をアサインしてもらって『どんな仕事になりそうか』『どんな人と働くことになりそうか』を聞く。もしくは、これまで営業所の立ち上げやそれに近しい経験をしたことがある社員と面談させてもらい、当時の話を聞いてもいいですね。こういった話を聞いていれば、実際に自分が働くときのイメージを持つことができたでしょう」
同業種・同職種への転職は、仕事内容が想像しやすい分、じっくり比較検討したり詳細を確認したりするのを怠ってしまうこともあるだろう。しかし、油断は禁物だ。今回の河東さんの事例から学んだポイントに気を付けて転職活動を進めてほしい。
RELATED POSTSあわせて読みたい
こんな「逆質問」は絶対NG! 採用担当者に“ムダな面接”と思われる鉄板NG質問
アピールポイントの伝え方を磨けば「平均的な実績」でも年収は上がる【年収アップ相談所】
「億り人」に憧れ、全資産200万円を仮想通貨につぎ込んだ30歳独身男の末路【マネーの失敗学】
【20代転職失敗談】「あの頃の俺は世間体が全てだった」目先のお金に飛びついて3年間を無駄にした29歳の話
アパレル店員はもう限界。憧れの一般事務職に転職した女に待っていた「大好きだった洋服をフリマアプリで売る日々」【20代の転職失敗談】