未経験転職で「こんなはずじゃなかった」を避けるには? 社労士法人に転職した25歳証券マンの失敗から学ぶ
33歳(男性)阿部さん(仮名)のケース22歳 大学卒業後、大手証券会社に営業として入社(年収520万円)
25歳 社労士法人に転職(年収340万円)
26歳別の社労士法人に転職(年収300万円)
<25歳で体験した“失敗転職活動”の内訳>
転職活動期間:4カ月
希望条件:社労士法人であること、残業が少ないこと
妥協した条件:給料が安い、業界・職種未経験
応募社数:8社、書類選考通過:1社、1次面接通過:1社、内定社数:1社
今回登場するのは、「給料や福利厚生などの待遇が良い」ことを理由に、大手証券会社に新卒入社した阿部さん。新卒で営業に配属され、2年目に入る頃には「このまま働き続けるのは無理だ」と感じ始めたという。
「新卒で500万円近い給料がもらえるので、始めの数カ月はモチベーション高く働けていました。でも、もともと証券に興味があるわけではないので仕事にやりがいは感じられないし、プライベートの時間はないと言っていいほど激務で。2年目からは転職を考えていました」
次はもっと自分が積極的に取り組みたいと思える分野で、ワークライフバランスを保てる仕事がしたいと考えた阿部さん。「資格を持っていれば将来困ることもないだろう」と思い、社会保険労務士(社労士)の資格を取ろうと決めた。
「大学が法学部だったこともあり、労務分野には興味があったんです。激務の合間に勉強していたので2年かかってしまいましたが、無事社労士の資格を取得できました。やっと転職活動が始められるぞ、と意気揚々と求人サイトにアクセスしたことを覚えています」
しかし求人を探してみると、社労士の募集がある企業は、阿部さんが思っていた以上に少なかった。求人サイトで見つけた8社全てに応募したが、書類通過したのは1社だけだったという。
「社労士事務所なのに労働環境が劣悪」なんて、考えもしなかった
無事採用となった1社は、年収が200万円近く下がるものの、残業は月に10時間以内。阿部さんは「ここならプライベートの時間も確保した働き方ができそうだ」と入社を決めた。しかし、待っていたのは「ブラック企業」そのものだったと肩を落とす。
「転職してみてすぐに、『こんなはずではなかった』と思いました。給料が安いのは納得の上で入ったのでしょうがないのですが、土曜日出勤も当たり前で、休日は日曜だけ。残業10時間なんて全くの嘘。求人票に書かれているような条件ではなかったんです」
その理由は、証券会社で営業経験があったことから、社労士業務と並行して営業の仕事も任されたから。社労士として採用されたはずが、気付けば新規開拓なども任され、仕事量も残業も増えていった。
転職前は「多少給料が下がっても仕方ない」と覚悟はしていた。しかし時給換算をしたら、最低時給以下だったことに驚愕した。
「転職するときに、もっと休日や残業について念入りに聞いておけばよかった。まさか社会保険労務士の事務所で『労働環境が劣悪』なんて、思ってもいなかったんですよ」
阿部さんは1年ほど勤務した後、他の事務所に転職することにしたそうだ。
type転職エージェント キャリアアドバイザーからのアドバイスをCHECK!
阿部さんが「失敗転職」をしないためには、何を気を付ければよかったのだろうか。type転職エージェントのキャリアアドバイザー・植草武尊さんに解説してもらった。
植草さんによると、今回の転職失敗は「『なぜ未経験で社労士に挑戦するのか』がはっきりしないまま転職活動をしたこと」に大きな原因があるという。
「転職市場において、資格はあくまでポテンシャルの一要素に過ぎません。選考に影響するのは、その資格を持った上で『どんなことをやってみたいのか』という要素です。たとえ『未経験歓迎』という求人でも、経験者と競うことも少なくありませんし、未経験転職では特に『何がやりたいのか』が重視されます。今回の阿部さんの場合も、志望動機がしっかりあれば書類選考の通過率も変わっていたのではないでしょうか」
阿部さんが社労士に転身した大きな理由は「働き方を変えたい」だったが、待遇などの条件だけで転職先を選ぶことは、特に未経験転職の場合にリスクが大きいと続ける。
「未経験で転職する場合は、業務内容が想像しきれず、入社後のギャップが発生しやすいんです。『こんなはずじゃなかった』と感じやすく、壁にぶつかりやすい。だからこそ条件面以外の『なぜ社労士に挑戦するのか』を、今一度ご自身に問いかけてから事務所を選んだ方がよかったと思います」
また、阿部さんが後悔しているように「条件を事前に確認すべきだった」というのが大前提ではあるものの、彼の場合は「前職の経験を買われて、営業を任されたこと」自体は自然な流れだったのでは、と植草さん。
「転職市場において、完全なポテンシャル採用は少ないんです。その人の経験で何かしら生かせるところがあるから、採用に至るケースがほとんど。阿部さんは社労士としては未経験ですから、即戦力にはなれません。しかし証券会社の営業という経歴を持っているので、社労士法人の営業ならばできるのでは、と思われて採用されたのだと思います」
もともと営業がきつくて、ずっと働くのは無理だと考えた阿部さん。社労士の資格を取る前に「自分が携わっていた営業の何がきつかったのか」を考える作業をしてもよかったと植草さんはいう。
「証券会社は価格が常に変動する商材を扱っており、時間に追われるのも無理がないかもしれません。しかし、価値が変動しない商材の営業職なら時間には追われなかったかもしれない。他にも、個人相手の営業スタイルがきつかったのなら、法人向けの商材を扱う企業も考えることができました。
いきなり未知の分野に飛び込むのではなく、自分の経験を生かしてワークライフバランスが保てる仕事、という観点を持って仕事を探すこともできたと思います」
確かに資格があれば、できる仕事の幅は広がるだろう。しかしそれ自体が理想の職場環境を手に入れる“プラチナチケット”だと思い込んでしまうのは危険だ。
自分は転職で何を叶えたいのかを冷静に分析し、幅広い視点で仕事を選ぶことが大事だと、植草さんは総括してくれた。
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