キャリア Vol.862

『ハック思考』って若手にはムリじゃない? 著者スドケンに聞いたら「考え方はDJと同じ。練習すれば大学生だってできる」と教えてくれた

Kaizen Platformの代表を務める“スドケンさん”こと、須藤憲司さんの『ハック思考』(NewsPicks Book)が、ビジネスパーソンの間で話題だ。

スドケンさんはリクルート在籍時、数々の全社表彰を受賞し、最年少執行役員として活躍。マーケティングクラウドサービスを提供するKaizen Platformでは創業2年半で「顧客の売上を240億円増やした」ことで話題になり、「スーパーグロースハッカー」としても名高い。

著書には「ビジネスをハックする(アイデアを用いて仕事の質や生産性を高める)方法」がたくさん詰まっているが、ここで20’s type編集部にはある疑問が。

編集部

「ビジネスをハック」ってカッコいいけど、それって地頭が良くて、ある程度ビジネスの経験を積んでいて、勘どころがある人じゃないとできないのでは……?

果たして「25歳・入社3年目」の若手でも「ハック思考」はできるのだろうか。スドケンさんに話を聞いた。

※本取材はオンラインで実施しました

てんまちゃん(22歳/写真左) 舞台役者を目指し、大阪より上京。演劇の学校に通いながら、MCやAVASTANDのアバター店員のバイトをしている

株式会社Kaizen Platform 代表取締役 須藤憲司さん

2003年に早稲田大学を卒業後、リクルートに入社。同社のマーケティング部門、新規事業開発部門を経て、リクルートマーケティングパートナーズ執行役員として活躍。その後、13年にKaizen Platformを米国で創業。現在は日米2拠点で事業を展開。著書に『ハック思考』(NewsPicks Book)Twitter:@sudoken

ハック思考=賢く正しくズルをすること

編集部

改めて、「ハック思考」とはどういう考え方なんでしょうか?著書には「人とは違う規則性や法則を見つけ、それを構成するシステムのスキマに介入する」と書かれていますが……。

スドケン

まずいま自分が当たり前だと思っている仕組み(システム)を疑ってみるんです。そうすると、これまでにない新しい解決方法が見えてくる。

編集部

分かるような分からないような……。

スドケン

もっとシンプルに言うと、「知恵を絞って、賢く正しく“ズルをする”こと」ですね。

編集部

ズル!?

スドケン

例えば僕はいま、会社を経営しているから、たくさん仕事を取ってこないとじゃないですか。だから営業に行かなきゃいけないけど、自分からお客さんを訪問するのって面倒ですよね。

編集部

大きな声では言えないですけど、ぶっちゃけ面倒なときもありますね……。

スドケン

そこで「営業とは、お客さんのもとへ足を運ばなければならないもの」という常識を一度疑ってみるんです。

編集部

足を運ばずにリモートワークする、みたいなことですか?

スドケン

いえ、そもそも「お客さんにアポを取って商談をしなければいけない」という営業の定義を疑います。「自分からお客さんを探すのもアポを取るのも面倒くさいから、あっちから来てくれないかなぁ」って考えるんですよ。

編集部

そうなれば最高ですけど……。

スドケン

じゃあどうすれば営業せずにあっちからが来てくれるのか。例えば「美味しいピザとビールをいっぱい用意して、セミナーを企画しよう」と考えるわけです。

そのセミナーでお客さんが喜んでくれる、タメになるような話をすれば、たった2時間で20~30社にアプローチできますよね。

編集部

なるほど……! こういう発想の転換が「ハック思考」か。

スドケン

そうです。この思考を、僕は20代の若い世代こそ身に付けるべきだと思っていて、この本を書きました。

編集部

20’s typeの読者世代? なぜですか?

スドケン

いま「調べて答えが分かるような知識」ってビジネスでは求められてないんですよ。「OK,Google」で解決するし、そんなん「ググれカス」って話だし。

株式会社Kaizen Platform 代表取締役 須藤憲司さん
編集部

大抵のことはスマホ内で解決しますもんね。

スドケン

人間に必要なのは、答えのない問題を解き明かしていく知恵です。問題解決するのに正面突破する必要はなくて、知恵を使って問題そのものをすり替えたり、ズルをしたりしてでもいいから、ベストな答えさえ出せればいい。

編集部

営業ならお客さんのもとに行って商談しなきゃ、ってのが正面突破ですね。「お客さんの課題を解決してあげるのが答え」なわけだから、そのプロセスは何でもいいと。

スドケン

そうです。これから若手が直面するいろんな問題を‟ハック”できると、「こうしなければならない」が減って、生きやすくなると思いますよ。

編集部

たしかに「こうしなきゃ」って思い込んでいることはたくさんありそう……。

スドケン

そんなに難しく考えないで、大喜利みたいなものだと思えばいいんですよ。軽やかに、常識外のアイデアを出せる知恵をつけてほしいんです。

企画書の内容をブラッシュアップするのはやめろ

編集部

でもやっぱり話を聞いても、「ハック思考」って頭がよくて、経験や実績のある人じゃなきゃできないような気もしています。

スドケン

いや、大学生でもできますよ。ゼロイチのアイデアである必要もないから、別に経験値や地頭の良さも関係ない

編集部

そうなんですか?

スドケン

じゃあ例えば、入社3年目の子が社内に企画書を持っていく時のことを考えてみましょうか。

編集部

はい。

スドケン

まず、企画の内容をブラッシュアップするのをやめます。

編集部

え? 企画書のキモって内容ですよね?

スドケン

……という常識を疑うのが「ハック思考」です。

編集部

そうでした……。

スドケン

「社内で企画を通したい」という目的を達成するためにどうするか。それを考えるためにはまず、ゴールを定義します。この場合の定義は、「社内で企画を通すとは、企画を誰かに承諾してもらうことである」ということ。

編集部

ゴールを「〇〇とは、~~である」と定義する。

スドケン

そう。そしたら「ゴールの定義=常識×常識外のこと」という計算式をつくります。この場合だと、常識は「良い企画内容があれば、社内で企画が通る」ですよね。そしたら計算式は「企画を誰かに承諾してもらう=良い企画×〇〇」となる。

編集部

この〇〇(常識外のこと)がハックのポイントですよね。ここが、なかなか思いつかない……。

スドケン

みんなが「常識だと思い込んでいること」の裏側を考えてみるんです。今回の常識は、「企画内容が良いこと」ですよね。じゃあ、「内容が悪いのに、企画が通るのはどんなとき?」って考えてみます。

編集部

うーん。「確認者の好みだった」とか、「企画は微妙だけどそれを上回るくらいコストが安い」とか?

スドケン

そうそう。その中だと、「コストを安くする」は若手じゃどうしようもならないかもしれないけど、確認者の好みによって通過率が変わるように「見せる相手を変える」ならどうにかできそうじゃないですか?

編集部

なるほど。

スドケン

これを当てはめると「企画を誰かに承諾してもらう=良い企画×見せる相手」という計算式ができます。みんな「良い企画」の方にフォーカスして、正面突破しようとして苦労するわけですよ。だからこそ、ハック思考では常識外のこと、つまり「見せる相手」にフォーカスするわけです。

株式会社Kaizen Platform 代表取締役 須藤憲司さん
編集部

だから「企画をブラッシュアップするのをやめる」んですね! では具体的に「見せる相手」とは?

スドケン

先輩に「この企画、誰なら通ると思います?」って相談しにいくとか。

編集部

この企画、どう思います? じゃなくて、誰なら通るかを聞くんですね。

スドケン

そうそう。しかも「どう思います?」なんて聞かれたら、先輩も何かアドバイスしてあげたくなっちゃうじゃないですか。今回は良い企画は求めてないんだから、そういう先輩からの指導はいらないんですよ。

編集部

それなら忙しい先輩にも聞きやすいですね。

スドケン

あとは例えば「担当者Aさんは熱烈な阪神ファン」ということが分かれば、阪神の試合の翌日にアポを設定する。前日に阪神が巨人に大差をつけて勝ってくれていたら、その日のデイリースポーツを買っていって話をすれば、担当者は上機嫌じゃないですか。

編集部

機嫌がいいときなら、こっちに協力的になってくれるかも。

スドケン

もし阪神が大負けしてたら、アポをリスケしたっていいくらいです。担当者がご機嫌っていうだけで企画が通ることもあります

編集部

なるほど……!

スドケン

そしたら、うんうん唸りながら徹夜してパワポと格闘する必要なんかなくなるわけですよ。これをハック思考の3つのポイントで考えると、こういうことです。

ハック思考のポイント

1.ゴールについて定義する
→企画が通るとは「企画を、誰かに承諾してもらうこと」である

2.その定義を分解して計算式にする
→企画を誰かに承諾してもらう=良い企画(常識)×〇〇(常識外)

3.常識の逆サイドは何かを考える
→良い企画じゃなくても、「見せる相手」によっては承諾してもらえるかもしれない

編集部

「定義」と「常識」と「その逆サイド」を考えることがポイントですね。

スドケン

そういうこと! これが「知恵を絞って、賢く正しく“ズルをする”こと」です

‟パクリ”を繰り返して「ビジネス界のDJ」になろう

株式会社Kaizen Platform 代表取締役 須藤憲司さん
編集部

だんだん分かってきました! でも、仕事でいざというときに「ハック思考」が出てくるかな……。

スドケン

ずいぶん粘りますね(笑)。でも気持ちは分かります。なぜなら「ハック思考」ってトレーニングで身に付くもので、最初からすぐにできる人はいないから。

編集部

トレーニング?

スドケン

はい。「ハック思考」の事例を日々チェックすることが大事です。例えば、以前熊本のある病院で、職員の制服を日勤と夜勤で違う色にしたら残業が減った、というニュースがあったの知ってます?

編集部

あ、ありましたね! 「違う色の制服を着ている人が働いている=残業している」ってひと目で分かるから、その人には新しい仕事を頼まないようになったっていう。

スドケン

そう。これも「職員は同じ制服を着ないといけない」という常識の逆転の発想ですよね。こういうニュースを見た時に「へぇ、スゴイな」で終わるんじゃなくて、「みんなで同じ制服を身に付けるという常識はハックできる」と、自分の知恵として貯めておくんですよ。

編集部

自分の仕事に応用できるようにしておくと。

スドケン

そうそう。アイデアをゼロから考えなくたって、パクっちゃえばいいんですよ。

編集部

パクる!!

スドケン

僕なんて、西野(亮廣)さんに爆笑されましたよ。「スドケンさんって、人が言ったことをさも自分が発明したみたいに秒速でパクりますよね」って(笑)

編集部

でもパクるって、ビジネスパーソン的にアリなんですかね?

スドケン

パクったことを「パクり」って非難されるのって、引き出しが少ないからなんですよ。1つのことからそのまま丸ごとパクるのはダメ。そうじゃなくて、いろんな知恵を組み合わせて応用すれば、それはもうパクリではない!

編集部

そんな堂々と(笑)

スドケン

だって、DJが世界中のいろんな音源からサンプリングして、クラブでかっこいいマッシュアップを繰り出したって、それを誰もパクリとは言わないじゃないですか。

編集部

そう言うとすごくカッコよく聞こえる……!

スドケン

それと同じで「サンプリングとマッシュアップをするビジネス界のDJ」をやればいいわけです。その訓練をするのが、ハック思考の第一歩。

僕がTwitterで「#ハック思考」というハッシュタグをつくって集めているので、まずはそれを見てもらうだけでも違ってくると思いますよ。

編集部

それなら若手でも取り入れやすそうですね。次の記事では、実際に現場で働く20代のお悩みに、スドケンさんならどうハックするのかを教えてもらいたいと思います!

取材・文/石川 香苗子 企画・編集/大室倫子(編集部) 撮影/森川亮太(箕輪編集室)

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