キャリア Vol.879

何でも「コロナのせい」にしてないか? 今動かない若手に「もったいない」としか言えないワケ

専門家がトレンド指南!
数年前に“若手時代”を経験した上司のアドバイスって、もう古いかも? 20代が自分の望むキャリアを掴み取るために「イマ」何が必要なのか、最新事情に詳しいキャリア教育研究家・福山敦士さんに教えてもらおう!

この数カ月で、メディアは「コロナ関連」の情報ばかりを流すようになりました。SNSを見ても「#StayHome」や「〇〇チャレンジ」が溢れ、「今までの当たり前だった日常が戻る日まで、頑張って我慢しよう」とみんな躍起になっています。

その中で、若手のビジネスパーソンの中にも「今は動ける時期じゃないから、状況が落ち着くまではいろんなことを我慢しよう」という風潮が広がってきているように思います。

でも僕は、そういったビジネスパーソンの「動かずに我慢しよう」に、どうしても違和感を覚えてしまう。

もちろん今後も不要不急の外出は控えるべきだと思いますし、そんな困難を経験したことのない若手は「先行きが見えない」ことに不安でいっぱいだということも分かります。

しかし「先が見えない時代」なのは、今に始まったことではありません。これまでも日本は、幾度となく大危機を乗り越えてきました。オイルショック、バブル崩壊、リーマンショック、東日本大震災……。

こういった時代の転換期というのは、「無くなるもの」と「生まれるもの」があり、そこにキャリアのチャンスが転がっています。ひとときの考える時間を与えられた僕たちは、今回の件を「チャンス」と捉えるべきではないかと思うわけです。

そこで今回は「時代の転換期」におけるキャリア形成の考え方と、「漠然とした不安を取り除く方法」について、僕なりの見解をお話していきたいと思います。

福山敦士

経営者/キャリア教育研究家 福山 敦士さん
学生時代は野球ひと筋。高校時代は甲子園ベスト8。慶應義塾大学環境情報学部卒業。新卒でサイバーエージェントに入社、グループ会社の起ち上げに参画。月100件アポを続け、セールス記録を更新する。25歳でグループ会社の取締役に就任。27歳で独立、人材紹介と職業・転職企業紹介を行う株式会社レーザービームを創業。28歳で東証一部上場企業である株式会社ショーケースに売却し、ショーケースでは取締役・人事部長を経験した。著書『新しい転職面接の教科書』など多数。累計10万部超。これまで3000人以上の就職・転職相談を実施。18年からは事業構想大学院・代ゼミにて講座開発を務める。「学問をつくる」ことを人生の目標にしている
福山敦士オフィシャルサイト
Twitter

時代の転換期は「若手」にとってチャンス

時代の転換期というのは、どんな時も「若手にとってチャンスが膨大」な時期です。なぜなら、若手は時代の変化を受けて「切り替え」を素早くすることができるから。

例えば僕は、今から約10年前、震災の直後に新卒でサイバーエージェントに入社しています。震災前の内定者時代から働いていて、当時はスマホアプリの受託開発事業の営業をやっていました。毎日テレアポをガンガンかけまくっていて「俺って営業得意なんだな」とか思っていたわけです。

ところが入社直前、3月11日の震災を境に、アポが全く取れなくなりました。「こんなときに電話かけてくんじゃねえよ!」と怒られたり、途中まで商談が進んでいたクライアントから「落ちついてからにしましょう」と途中で打ち切られたりすることが増えました。

このときに仕方なくクライアントへの営業を諦めて、「これを機に受託開発は辞めて、自分たちでヒットアプリを作ろう」と切り替えました。そして半年後、ヒットアプリを生み出すことに成功したのです。

当時はまだ社内でスマホアプリをヒットさせた経験を持つ人が少なかったので、僕は「スマホアプリの先駆者」的な存在になり、入社1年目にも関わらず、開発から運用、プロモーションまで幅広く担当することに。おかげで、当時社内の誰よりもスマホアプリに詳しくなれましたし、それらの機会によって実力をつけて、25歳で子会社取締役に抜擢されました。

もちろんこれは極端な例ではありますが、振り返ってみると、新卒の僕には「守りの業務」が少なかったから、すぐに「切り替え」ができたのがよかったのだと思います。

たくさんの顧客を抱えていて、時代の変化と有事対応をクライアント個別で進めていたら、おそらく新しいチャレンジをしている余裕はなかったと思います。抱えている既存タスクが少なかったが故に、新しい取り組みに挑戦ができたのです。

同じように、今営業がなかなかうまく進まないとか、コロナの影響を受けて仕事量が減ってきている若手はチャンスです。今のやり方がうまくいかないなら新しい手法に切り替えるきっかけにできます。

例えば「zoomで上手にプレゼンする方法」や「ウェブセミナー開催の手順」などは、上司たちも詳しくなかったりします。その意味で、知識も経験も横一線、自身が社内で「先駆者」となることで、さらに良い機会が巡ってくる。今はそういったチャンスが転がっているのです。

少なくとも「自分の未来」には責任を持つ

福山さん

一方で「そうは言っても、先行きが見えないのはやっぱり不安だよ……」という人もいると思います。でも未来が不安なのは、「イメージかできない」から。それなら思い切って自分の理想を「つくってしまえばいい」と思います。

「そんな無茶な」「うちの会社では難しいです……」と思うかもしれませんが、逆にこの先、同様のチャンスが来るタイミングは誰も予測できません。今を逃すと、当面変えられないというリスクもあるのです。

僕自身も「未来を予測する唯一の方法は、自ら創り出すことである」というアラン・ケイ(アメリカの教育学者)の言葉を大事にしているのですが、先行き不透明な世の中だからこそ、まさにこの考え方が当てはまると思っています。

自分で未来をつくるための「行動」をすることでしか、不安は消えません。未来が予測できなくとも「自分の未来」には、責任を持つべきです。根性論のように聞こえてしまうかもしれませんが、これは紛れもない事実です。

例えば、また10年前の震災後の話になりますが、当時震災をきっかけに日本中でヒットしたサービスがLINEです。

実はこのLINEは、評論家の意見をまとめて作られたものではありません。韓国資本のベンチャー企業が、震災の混乱をみて、国民が求めていると判断し、事業をピボットして、約3カ月で作り出されたサービスです。

LINEが世に出た後に「同じサービスをつくろうと思っていた」という人はたくさんいると思います。でも、実際にすぐ手を動かしたLINEだけが勝者になったのは周知の事実。

20’sにも「LINEのようなサービスを作り出せ」と言いたいわけではありません。でも「不安」を感じたときにこそ、自分の未来に責任を持ち、小さくてもいいから行動した人にしか手に入らないものがあるということです。

「コロナ渦」で分かれる「自責型」と「他責型」

もう一つ、こういった緊急時に注意したいのが、何でもかんでも「コロナのせい」にしてしまっていないか、ということ。結果が出ない理由や、仕事が進まない理由を何かと「こんなご時世だから……」と決めつけてしまっている人はいませんか。

もちろん、それが原因の一つであることは間違いないと思います。しかし、全てをコロナのせいにしていたら、動き出せないし、不安も増すばかり。結果的に良い経験を積むことができずに、20代をムダにしてしまう恐れもあります。

実際に僕も、コロナ渦で商談を進める際に、2種類のビジネスパーソンに出会うことが増えました。それは、「この状況が落ち着いてからにしましょう」という人と、「今日どこか空いてますか?」という人の2パターンです。

前者は、コロナなど関係なく、そもそも決断や行動をしようとしていない人に多い。後者は、この時期はアポイントが取りやすいとふんで、ここぞとばかりに「今日はどうですか?」で距離を詰め、一気に前に進める人です。

つまり、コロナ渦であってもなくても、何かのせいにしてしまう(他責型)と、自分の責任下で仕事を進められる(自責型)との差がはっきりと出るようになってしまいました。

全く関係ないはずのことも「コロナの影響で」と口にしてしまっていると、逃げ癖もついてしまうでしょう。そうすると自分でも「コロナが終わらないと結果が出せない、どうしよう」と不安が増長してしまいます。


今日の話をまとめると、
・コロナ禍で世の中が変わることは、20代にとって「飛躍」のチャンスである
・不安を軽減させるためには「自分の未来に責任を持つこと」「予測だけでなく、行動すること」が大事
ということです。

緊急事態宣言が明け、周りも徐々に動き始める頃かと思います。これは良い意味で再スタートするきっかけになるはず。良い習慣はそのままに、これをきっかけに絶つものは絶ち、キャリアを好転させていきましょう!

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