キャリア Vol.894

ジョブ型雇用が浸透しても“陳腐化しない武器”は「上位20%理論」で身に付けよう【キャリア道場】

専門家がトレンド指南!
数年前に“若手時代”を経験した上司のアドバイスって、もう古いかも? 20代が自分の望むキャリアを掴み取るために「イマ」何が必要なのか、最新事情に詳しいキャリア教育研究家・福山敦士さんに教えてもらおう!

新型コロナウィルスの影響で、各社が「都心のオフィスが必要なのか」「社内制度はこのままでいいのか」など、働き方を見直し始めました。中でも注目されるのが「ジョブ型雇用」への移行です。日立などの大企業も今後「ジョブ型雇用」を導入するとニュースになりましたね。

ではそもそも「ジョブ型雇用」とは何なのか、それが浸透すると20代のキャリアにどんな影響があるのか。今回も福山独自の観点から、お伝えしていきます。

福山敦士

経営者/キャリア教育研究家 福山 敦士さん
学生時代は野球ひと筋。高校時代は甲子園ベスト8。慶應義塾大学環境情報学部卒業。新卒でサイバーエージェントに入社、グループ会社の起ち上げに参画。月100件アポを続け、セールス記録を更新する。25歳でグループ会社の取締役に就任。27歳で独立、人材紹介と職業・転職企業紹介を行う株式会社レーザービームを創業。28歳で東証一部上場企業である株式会社ショーケースに売却し、ショーケースでは取締役・人事部長を経験した。著書『新しい転職面接の教科書』など多数。累計10万部超。これまで3000人以上の就職・転職相談を実施。18年からは事業構想大学院・代ゼミにて講座開発を務める。「学問をつくる」ことを人生の目標にしている
福山敦士オフィシャルサイト
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コロナ禍で「ジョブ型雇用」へ移行する企業が増加

ジョブ型雇用とは、職務内容(ジョブディスクリプション)を限定した雇用契約のこと。「この仕事をする人を採用(配置)する」と明確に決まっているので、企業としては社員が即戦力として働いてくれるというメリットがあります。海外でよく見られる雇用形態ですね。

一方で、日本ではこれまで「メンバーシップ型雇用」が中心で、職務を限定せずに働いてくれる人を採用していました。

例えば新卒を一括で採用し、ときには地方支社で現場感を養ったり、営業やバックオフィスをそれぞれ経験したり、メンバーが「会社内での市場価値」を高めていくことで、企業は安定して拡大を続けることができるのです。

そして最近、コロナショックでリモートワークを取り入れる企業が増えたことで浮き彫りになったのが「メンバーシップ型雇用」のデメリットです。

これまで「社歴が長いから」「社内の人に好かれているから」「夜遅くまで会社に残って頑張っているから……」と評価されていた社員の中に、仕事に対してちゃんと成果を出していない人材が存在していることが露呈したのです。

決められた「職務」に対してコミットしなくても雇用を続けざるを得ないのが「メンバーシップ型雇用」のデメリットということです。

そう考えると、世の中全体が働き方を見直そうとしているタイミングで「メンバーシップ型」から「ジョブ型」へ移行する企業が増えていくのも不思議なことではありませんね。

もちろんこの流れは「実力で勝負したい」と考える若手にとっては魅力的です。しかしジョブ型雇用には、「雇用が安定せず、同一社内でのキャリアアップがしづらい」というデメリットもあるので、一概にどちらが優れているとは言えません。

スペシャリストか、ゼネラリストか、両方か。

これからの時代、「ジョブ型」も普及していくでしょうし、「メンバーシップ型」の雇用も依然残り続ける。変わるのは、社員側が「どちらのキャリアを選ぶか」ということでしょう。

ジョブ型で雇用される「スペシャリスト」を目指して仕事自体にコミットするのか、メンバーシップ型で雇用され、「ゼネラリスト」として会社のために尽くすのかを選ぶことになると思います。今20代の若手も、どこかのタイミングで自分の働き方を選ぶときがくるでしょう。

これはどちらが良し悪しという話ではなく、向き不向きの問題です。そしてこれは二者択一ではなく、関わる組織や自身のキャリアによって変えることも可能。一つに決めたら一生どちらかというわけではないので、安心していいです。

とはいえ一つ確実に言えるのは、ジョブ型だから「会社のことは二の次でいい」わけではないし、ゼネラリストだからといって「成果を出さなくてもいい」わけではないと言うことです。どちらを選んでも、成果を出さなければいけないことに変わりはありません。

キャリアの希少価値は「上位20%」にある

では、どちらにせよ成果を出さなければいけないとなると、どうすればいいのか。このときに、成果を出すためには「資格」や「専門スキル」を身に付けたらいいのでは?と思い浮かべる方は多いと思います。

ところが、資格や専門的なスキルには罠があります。それは「時代とともに陳腐化してしまう」というリスクです。

例えば10年前、WEBサイトを作るスキルは専門性が高く、高単価で仕事を請け負うことができました。しかし、ソフトウエアの発達により、今では学生でも簡単にWEBサイトを作ることができます。

また今は動画編集などの副業が流行っていますが、動画編集の単価も、この2~3年で1/3程度に下がりました。動画編集ができる人が増えたこともそうですし、今や誰でもスマートフォンの無料アプリで動画編集ができてしまいますからね。

では、このように陳腐化することのない「武器」とは何なのか。ここで私が提唱するのは「上位20%理論」に基づいた考え方です。

これは「パレートの法則(80:20の法則)」というもので、「全体の数値の大部分は全体を構成するうちの一部の要素が生み出している」という考え方です。

例えば、
・ビジネスにおいて、売上の8割は全顧客の2割が生み出している
・売上の8割は、全従業員のうちの2割で生み出している
・仕事の成果の8割は、費やした時間全体のうちの2割の時間で生み出している
とされるのが、パレートの法則。

つまり、この「上位20%」に入ることが、キャリアの希少価値を高めるポイント。組織の場合は上位20%の人材に、おもしろい仕事が舞い込んでくることもあるのです。

「上位20%」に入るために必要なのは「継続」だけ

福山さん

パレートの法則自体は有名ですが、どうしたら上位20%の人材になれるのか、ここの部分はあまり語られていません。

僕なりの答えとしては「3回の“マジメを続ける”こと(3連続マジメ理論)」だと考えています。

3連続マジメ理論とは

1.まずはある物事に対してマジメに取り組み、結果を出す(1回目のマジメ)
2.結果が出た後も、マジメに取り組むことを続ける(2回目の“マジメを続ける”)
3.さらに結果が出ても、気を緩めず再度マジメに取り組む(3回目の“マジメを続ける”)

それぞれのフェーズごとに詳しく説明します。

1つ目のフェーズは、「まじめに取り組む/取り組まない」かどうか。目の前の課題に対してどちらを選択するかで、50%の人が脱落するとされています。つまり目の前の仕事に対して、「まじめに取り組むだけ」で上位50%に位置できるのです。

これは小さな行動でも構いません。例えば、新卒時代に上司に課された「日報」や、日々の振り返り。営業数字の可視化、読書の習慣、新聞を読むことなど。上司に言われなくても、今でもまじめに続けていますか? 一流の企業でさえ、こういった習慣が続いている人はごくわずかです。これを続けるだけで、上位50%に入れると認識していいと思います。

そして2つ目のフェーズが、結果が出た後のスタンスです。結果が出た後に、「まじめ続ける/ここで辞める」で、ここでも2分割されます。つまり2度まじめをつづけた人は、50%×50%=上位25%の人材になるのです。

多くの人は、結果が出た後に気持ちが緩んでしまいます。そして、自分の実力以上の仕事を目の前にした時に「忙しい」と口にして、それまで行なっていた習慣を一つ一つ削除・圧縮していってしまうのです。これをしっかりまじめに続けたら、上位25%の人材になれるのに、です。

そして3つ目のフェーズは、これもまた結果が出続けた後のスタンスです。「①結果が出る(上位50%)→②まじめに続ける(上位25%)→③さらにまじめに続ける」としたらば、50%×50%×50%=12.5%のとなります。

これで、いわゆる上位20%の人材の仲間入りが果たせます。理論上、マジメに取り組む姿勢を続けるだけで、十分「上位20%の人材」になれるのです。

机上の空論的で、抽象的な概念で恐縮ですが、結果を出し続ける人はいつだって目の前の課題と真摯に向き合います。ITスキルや特定領域のノウハウは、時間の経過と共に劣化しますが、「結果が出てもマジメに取り組み続ける」スタンスは、時が経つに連れて希少性は増していくのです。

スキルは陳腐化するが、スタンスは陳腐化しない

ときには、耳障りの良い資格を習得したいと思ったり、かっこよさげなビジネスにまつわるバズワードに踊らされたりすることもあるかもしれません。

でも、実際のビジネスの現場では、耳障りの良い机上の空論よりも、SNS映えするキラキラ感よりも、ことに向き合うスタンスが求められます。結果が出ようが出まいが、愚直にやり続ける人の方が信頼も高まりますし、結果が出てもマジメに取り組むスタンスは、時代の変化にも強いです。

僕がこれまで見てきた若手の中でも、「続ける」ことができない人は多かったですし、逆にそれができる人は他の仕事でも確実に成果を出せるようなビジネスパーソンとして成長していました。ウサギとカメでいう、カメ型のスタンスは、どの組織でも求められます。

ますます先行き不透明な時代に突入していますが、結局大事なのは今日お話ししたようなシンプルな思考です。ぜひ「マジメに続ける」ことの重要性を認識して、上位20%の求められ続ける人材になってもらいたいと思います。

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