和田裕美事務所 代表取締役 和田 裕美(わだ・ひろみ)京都府出身。営業コンサルタント。英会話学校の事務職を経て、外資系教育会社に入社し営業職に。日本でトップ、世界142カ国中2位の成績を収めた女性営業のカリスマ。短期間に昇進を重ね、女性初、最年少で2万人に1人しかたどりつけないといわれる支社長となる。その後独立し、営業・コミュニケーションなどの講演、研修を国内外で展開。著書に『世界No.2セールスウーマンの「売れる営業」に変わる本』(ダイヤモンド社)など
【和田裕美×川田修×菊原智明】「失敗は必要経費だと割り切るべし」個人向け営業のスペシャリストが教える、成果を出すための4つの極意
電話やインターホンでの門前払いは当たり前、場合によっては心無い言葉で罵られることもある。また、業種によっては顧客に合わせるために休日が不規則になったりと、法人営業に比べて「つらい」という印象を持たれがちな個人向け営業。中には、「自分はこの仕事に向いていないんじゃないか」と悩んだことがある人も多いだろう。
だが、ほんの少し、“何か”を変えてみるだけで、顧客の反応が様変わりしたり、成績が一気に伸びることもある。そこで、外資系教育会社で世界No.2のセールスを記録した和田裕美さん、プルデンシャル生命保険で全国約2000人の中からトップセールスとして表彰を受けた川田修氏、そしてトヨタホームで4年連続トップ営業マンに輝いた菊原智明氏の3人のスペシャリストたちに、成果を挙げるために必要な極意を話し合ってもらった。
そこには、一騎当千のプロだけが知る工夫や哲学がたっぷりこめられていた。
<成果を挙げるために必要な極意>
1、初対面で減点をされずに、ちょっとだけ抜きん出る
2、失敗は必要経費だと割り切る
3、「合わないお客さま」は捨てる
4、顧客を「ファン化」する
プルデンシャル生命保険株式会社 エグゼクティブ・ライフプランナー 川田 修(かわだ・おさむ)東京都出身。1989年、株式会社リクルート入社。退職までの96カ月で、月間目標を95カ月達成、部署最優秀営業マン賞を数回、全社年間最優秀営業マン賞も受賞する。97年、プルデンシャル生命保険株式会社入社。営業職の最高峰であるエグゼクティブ・ライフプランナーに昇格。その年の年間営業成績(2001年度の社長杯)でトップとなり、全国約2000人中1位のPT(President’s Trophy)を達成。著書に『かばんはハンカチの上に置きなさい―トップ営業がやっている小さなルール』(ダイヤモンド社)など
営業サポート・コンサルティング株式会社 代表 菊原 智明(きくはら・ともあき)群馬県出身。工学部機械科卒業後、トヨタホームに入社し、営業の世界へ。7年間、クビ寸前の苦しい営業マン時代を過ごした後、顧客へのアプローチを訪問から「営業レター」に変えることをきっかけに4年連続トップの営業マンに。約600名の営業マンの中においてMVPを獲得。2006年に独立し、現職。経営者や営業マン向けのセミナー、研修、コンサルティング業務を行っている。著書に『訪問しないで「売れる営業」に変わる本―4年連続No.1が明かす』(大和出版)など
初対面で減点をされずに、ちょっとだけ抜きん出る
――まずは重要なファーストアプローチについて、皆さんはどんな工夫をされていますか。
和田 営業って、人から好かれなければ成立しないお仕事ですよね。だからあえて見た目を完璧にしすぎないというか、ちょっとズラすことは意識しています。
――ズラす、というのは?
和田 あくまで持論ですが、「すごい美人」な営業ウーマンはそんなに売れないんです。だから派手めな女の子を部下に持ったときは、髪型はおしゃれなロングの巻き髪とかじゃなくて、清楚に見えるようにボブスタイルにすることを勧めていました。男性票も女性票も取って、年上にも年下にも愛される、そういうニュートラルゾーンを目指すことが第一印象では大事なんですよ。
菊原 私、お客さまの第一印象に残りにくい方だと自分で思うんです(笑)。そんな私が意識していたのは、とにかく第一印象で嫌われないこと。そのためにも余計なことや適当なことは喋らない。以前は、ショールームの案内でも余計なことをベラベラしゃべりすぎて、途中で気付いたらお客さまが帰っていたなんてこともありましたから(笑)。
川田 やっぱり、いかに減点されないでなるべく多くの人に受け入れられるかなんですよね。
和田 そうそう。一番NGなのは、外見にギラギラが出てしまっている営業マン。極端ですが、バブルの頃なら茶髪で金のネックレスしていても売れていたかもしれません。でも今はそういうバブリーな雰囲気ってみんな下品だって思っているでしょ。つまり時代に合わないんです。だからオフィスではどれだけ目標達成に向けて息巻いていても構わないけど、お客さまの前に立った瞬間にはそれを感じさせちゃダメ。「契約取ってやるぞ」という気持ちが伝わると、お客さまは構えますから。
川田 業界や商材によって受け入れられる髪型や服装に違いはありますが、私が扱っている生命保険は金融商品ですから清潔感は欠かせません。その上でもう一つ大事にしていたのが、いかに“ちょっと抜きん出るか”ということ。私の本のタイトルにもなっていますが、鞄はハンカチの上に置くとか、出していただいたお茶を帰る時に相手のお茶に寄せるとか。意外と何気ないところをお客さまは見ているものですから、そういう細かい気遣いで差をつけることが、ファーストアプローチでは有効だと思います。
失敗は必要経費だと割り切る
――業績低迷や顧客トラブルなど営業マンに悩みは付きものですよね。トップセールスとして華々しい実績をお持ちのお三方も、たくさんの失敗を経験されてきたと思うのですが、いかがですか?
菊原 私は入社して7年間はずっと売れない営業マンでしたから、失敗はたくさんあります。売れない時期が続くと、上司の視線も厳しくなり、何とか数字を伸ばそうとショールームの見学に来たお客さまに飛び付いていました。
――一般的な営業スタイルですね。
菊原 はい。でも、他社との相見積もりの当て馬にされ、結局は受注につながらないことが多かったんです。それで、8年目からみんなが狙うような購入意欲の高いお客さまは諦めて、それよりも今すぐに購入する予定はないお客さまに営業レターを送るなど、長期的な接点を持ち続けるスタイルに切り替えたんです。そこからようやく売れるようになりました。
川田 すごいですね。私はすぐに購入する見込みのないお客さまを何年もかけてフォローするという発想がなかったので、そんなマーケットがあるということ自体知りませんでした。
和田 それは営業の種類が違うからですよ。たぶん菊原さんが当て馬にされた他社の営業マンっていうのが、川田さんみたいな方なんだと思います(笑)。
――菊原さんは「農耕型営業」、和田さんや川田さんは「狩猟型営業」というスタイルでしょうか?
菊原 私もそう思います。逆にお二人はこれまでどんな失敗を?
和田 うーん、私は失敗という失敗はないかなあ。
川田 私もないですね。
菊原 え! そんな回答があるんですか!?(笑)
川田 というのも、私は“失敗は必要経費”だと考えているんですよ。営業って断られるのも仕事の一部だと思うんです。イチローだって3割しかヒットは打てないんです。だけど、みんなイチローをすごいって思っていますよね。営業も一緒です。売れる営業も売れていない営業も、打率で見れば実はそんなに変わらない。じゃあ何が違うかと言えば、売れている営業は失敗から必ず何か学んでいるし、失敗を決して引きずらないんです。
和田 そう。失敗を失敗と捉えていない。
川田 だから若い営業マンに私から伝えたいのは、とにかく活動量を大事にしてほしいということ。いきなりスマートな営業を目指そうとしたって無理。とにかくたくさんの人に会って、どんどん当たって砕けていくうちに、自分に合った営業スタイルやお客さまを見つけていくことができると思います。
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