“曖昧条件”は悲劇の元!「アットホームな社風の良さ」を求めて転職した25歳の末路
25歳(男性・年収350万円)山本さんのケース22歳 中堅大学を卒業後、大手食品メーカーの製品管理部に配属(年収320万)
25歳 大手自動車メーカーの子会社に営業職として転職(年収330万)
転職活動期間:2カ月
希望条件:人間関係がよく、アットホームな職場であること
妥協した条件: 会社規模が小さくなること
応募社数:5社、書類選考通過:2社、1次面接通過:2社、内定社数:2社
「親を安心させたい」と大手企業に就職したが……
「有名な会社ならどこでもいい」と、新卒で大手食品メーカーに入社した山本さん。配属された工場での製品管理業務は、想像よりもずっと厳しいものだった。
「工場は24時間365日、休むことなく稼働していて、昼夜二交代制。日勤と夜勤が交互に来るような無理なシフトの日もありますし、残業は月60時間を余裕で超えていました。繁忙期には上司の機嫌が悪くなり、『休憩する時間があるなら働け!』と怒鳴られることもあって、精神的にまいってしまいました」
山本さんは憂鬱そうな顔を浮かべて、当時を振り返った。「親を安心させられる、友人にも自慢できるような大手企業なら環境に恵まれているはず」と信じ切って就職したものの、入社して2年目には限界を感じ、転職を決意。
「残業が多いのはまだ我慢できたのですが、忙しいときに上司の機嫌が悪く怒鳴られるのが本当に嫌で。次は人間関係が良くて、アットホームな会社に転職したいと、社風を軸に会社を選んで転職活動をしていました。もう新卒のときのような思いはしたくないと、必死でしたね」
そこで見つけたのは大手自動車メーカーの子会社。今度こそ腰を据えて働こうと、山本さんは新たな職場で心機一転、働き始めた。
休日も会社の人との飲み会や旅行。「アットホーム」な会社の実情
しかし山本さんの転職先で待っていたのは、仕事以外の拘束がやたらと多い、濃すぎる人間関係。「親睦を図る」という名目の半強制的な社内イベントで休日が潰れ、休みがほとんどなくなってしまったという。
「仕事終わりの飲み会は当たり前、休日には必ずと言っていいほど会社の行事が入ります。連休には社員旅行やバーベキューが続くことも。確かにアットホームな職場がいいとは言いましたが、業務外の時間や休日まで、会社の人たちと過ごしたくはありません。休みのたびに誘われることにうんざりしてしまいました」
さらに濃すぎる人間関係は、業務にも影響があったと、山本さんはため息をついた。
「『社員は家族』的な節があって、とにかく価値観が古い体質でした。毎朝朝礼があって、社訓と目標を大きな声で唱和。悪しき体育会系的な側面もあり、体調が悪いと言うと『根性が足りない! 風邪なんて気合で治せ!』と取り合ってもらえません。今どき、そんな会社があるなんて思いませんでした」
「もう無理だ」と転職したい気持ちがよぎった山本さんだが、新卒2年目ですでに2社目。すぐに辞めては次の仕事を探すのが難しくなるだろうからと、我慢を重ねて出勤を続けた。その結果、ストレスが溜まってついに円形脱毛症になってしまったという。
「恥ずかしくて外を出歩けませんよ。毎日胃も痛いですし、何のために転職したんだろうと後悔してばかりです。会社の人間関係に束縛されて、彼女と会う時間も減って最終的に破局。結婚を視野に入れていたのに、どうしてくれるんだと思ってしまいました……」
type転職エージェント キャリアアドバイザーからのアドバイスをCHECK!
今回の山本さんの転職活動は、どのような点に気を付けるべきだったのか。type転職エージェントのキャリアアドバイザー・植草武尊さんに解説してもらった。
「今回はご自身でも反省しているとおり、『アットホーム』という抽象的な言葉を転職の軸にしてしまったのが、失敗の主な原因でしょう」そう指摘する植草さん。
業務が円滑に進むコミュニケーションを求めているのか、今回の転職先のようにプライベートでも深い付き合いをするような濃い人間関係を求めているのか、『アットホーム』といっても定義は人それぞれだ。
「山本さんが求めていたのは『業務外の人付き合い』ではなく、『不当に叱責されずに、穏やかに働ける職場環境』だったのではないかと思います。そのように転職理由を、掘り下げて言語化できるとよかったでしょう」
求人広告を見ると「アットホームな職場です」「風通しの良い会社です」といった抽象的なアピールポイントにどうしても目が向きがち。それが本当に自分の求めるものかどうかをしっかり言語化し確認する必要があると植草さんは言う。
「自分の望むことを分かりやすく言語化するのは確かに難しいこと。けれど、転職後のミスマッチを防ぐためにも、その準備は怠らないようにしましょう」
そこでまず取り組んでほしいのは、退職理由を書き出してみることだ。結局のところ転職において、「退職理由を払拭すること」が、新たな職場で快適に働く上で何よりも重要だという。
「多くの人は、退職理由を曖昧にしたまま転職活動を進め、なんとなく楽しそうだから、給与が上がるからといった目先の魅力にフォーカスして転職先を決めてしまいがち。『退職理由を解決できない転職』をしているケースはとても多いです。そして山本さんのように転職後の『こんなはずじゃなかった』という後悔につながってしまうのです」
また、今回の「社風」のように、言語化するのが難しい条件を転職理由にする際のポイントは、「定量的に測れる要素で判断すること」だと、植草さんは教えてくれた。
「自分の叶えたい条件に合わせて、勤続年数や定着率などの数値を目安にしてもいいでしょうし、残業時間や産育休を取得した社員の数、有給消化率を聞いてみてもいいでしょう。仕事の成果を正当に評価して欲しい場合は、昇給の頻度やインセンティブの金額などにフォーカスすることもできます」
なぜ退職を決めたのか、自分が転職先に求めるものは何なのかを言語化し、定量的な判断軸を持つこと。それが、ミスマッチのない転職先選びにつながるはずだ。
取材・文/石川香苗子
RELATED POSTSあわせて読みたい
こんな「逆質問」は絶対NG! 採用担当者に“ムダな面接”と思われる鉄板NG質問
アピールポイントの伝え方を磨けば「平均的な実績」でも年収は上がる【年収アップ相談所】
「億り人」に憧れ、全資産200万円を仮想通貨につぎ込んだ30歳独身男の末路【マネーの失敗学】
【20代転職失敗談】「あの頃の俺は世間体が全てだった」目先のお金に飛びついて3年間を無駄にした29歳の話
アパレル店員はもう限界。憧れの一般事務職に転職した女に待っていた「大好きだった洋服をフリマアプリで売る日々」【20代の転職失敗談】