トレンド Vol.945

新時代を生きる注目のビジネスパーソン3名が語る、いま必要な営業力とは?「効率化の弊害に注意せよ」

コロナ禍において急速に広がっているデジタル化。ビジネスシーンにおいても、営業支援ツールの導入や商談のオンライン化など、影響を受けている人は少なくないだろう。

このような時代に、若手ビジネスパーソンたちは、どのようにしてこれまで以上の成果を上げればいいのだろうか――。

その答えを探るべく、10月22日に行われたオンラインイベント『2020年代のデジタル変革と組織&営業の在り方』の一部を紹介したい。

2020年代のデジタル変革と組織&営業の在り方

登壇したのは、サイバーエージェント出身で2代目バチェラーとしても知られる株式会社GHOST 代表取締役CEOの小柳津林太郎さん、インフルエンサーやデジタル広告などの時代に合ったマーケティングを得意とするトレンダーズ株式会社の執行役員 松倉寛之さん、200名を超える営業の採用やマネジメントの経験を持つベルフェイス株式会社取締役 営業責任者の西山直樹さん。

新時代を生きる注目のビジネスパーソンたちが語る、「いま必要な営業力」とは?

変化の中で活躍できるビジネスパーソンは「当たり前のことをないがしろにしない」

――2020年は新型コロナウイルスの影響もあり、激動の年でしたよね。リモートワークが普及しオンライン商談が一般化したり、デジタル化によって決済フローが変わったりと、ビジネスシーンでの変化を体感した人も多かったと思います。こうした状況でも変わらず成果を上げているビジネスパーソンの特徴について、皆さんはどう考えますか?

西山:まず一つは、自分にできることや自分の強みを客観的に捉え、貢献していける人。「広く浅く、何でもできます」みたいな人ってたくさんいるんですけど、そういう人よりも得意なことが明確な人の方が成果を出している気がします。

二つ目は、心身ともに健やかな人ですかね。当たり前のことのように思われがちですけど、リモートワークが中心となったことで、より重要になってきたなって思います。気分の浮き沈みとか、体調の良し悪しとか、そういうことでパフォーマンスがブレる人は、どんなに頭が良くても、どこか不安定で信用できなかったりしますから。

さらに、成長する産業を選んでいる人は成果を出している印象です。コロナ禍に限ったことではありませんが、「これから伸びる市場」「成長する産業」を的確に見極めている。さらに言うなら、そのような市場の中でも、他とは違った優位性を持っている会社を目利きできるかは、ビジネスパーソンとして非常に重要な能力だと思います。

ランニングする夫婦の写真

野球のイチロー選手のすごさって、たくさんの記録を残していることの前に、試合に出続けられていることなんですよね。これってビジネスパーソンにも共通することで、やっぱり常に安定して、一定の気持ちで打席に立ち続けられる人は強いなと改めて思いました。

小柳津:西山さんが仰ったことは、まさにコロナ禍だからこそ、改めて実感できたことですよね。僕も言おうと思っていたことが多く、納得しました。

松倉:僕もです。これ3番目に話す人が圧倒的に不利ですよね(笑)

小柳津:あえてかぶらないことを挙げるとすれば、一つは“エンタメ力”だと思います。オンラインミーティングが普及していく中で、「用件だけを突き付けて、白か黒か判断して、はい終了」みたいな、事前アジェンダから外れないミーティングって増えたと思うんですね。

でも、やっぱり「初めまして」の状態から関係値を築かなきゃいけないときって、相手のプライベートを知るための一歩として、笑いを取って心の隙間をつくって、人間関係を築いていくことが必要かなと思うんです。だから、そういうことを意識してやれる人、楽しませられる人というのは、これからの遠隔中心の時代に重宝されると思います。

あとは、思いやりですよね。遠隔でやりとりをすることが増えたからこそ、受け手のことを考える。例えば視聴者さんがいまどういう機材でこのイベントを見ているのかを想像して、カメラの映り方や音声の調子などを工夫するのは大事なことだと思います。

松倉:思いやりの話にも通ずる点ですが、コミュニケーションコストが少ない人って重宝されるなと思っています。デジタルシフトしたことで、いままで以上に何度もやりとりすることを苦痛に感じてしまうので、1回のやりとりでまとめて質問してくれる人とか、5W1Hを明確に指示出しできる人、テキストコミュニケーションが上手な人は強いですよね。

テキストコミュニケーションが得意な人

また、そこから派生して、先回りができる人。事前のアジェンダを共有したり、会議後すぐに議事録を送れたりできるかどうかって、より大事になってきている気がするんですよ。だから、社会人1年目で覚えたスキルセットがより重要になっているなって思います。

西山:確かに。「当たり前のことを当たり前にできるか」がさらに重要になっていますよね。

営業のデジタル化によって「相手に合わせる力」がより重要になる

――営業について伺いたいのですが、いままでの営業をデジタルで進化させるメリットについて、どのように考えていますか。

松倉:圧倒的に効率が上がりましたよね。移動時間が減った分、営業の件数も増やせるし「わざわざ行ったから」という理由で見込みが薄い方との商談時間を無理に引き延ばす必要もないですから。

あとは、「教育の機会」がいままで以上に増加したなと感じます。今回のようなウェビナーもそうですけど、録画して見られるって、いままでなかったじゃないですか。録画できるようになったことで、同行せずとも営業のエースがどういうプレゼンやクロージングをしているのか、気軽に見られるようになった。

小柳津:僕の場合、自分自身が営業するよりは、営業を受けることの方が多いんですね。その中でメリットを感じるのは、座る席順とか、名刺の並べ方とか、そういう無駄な気遣いをする機会が減ったことです。

――デメリットについてはいかがでしょう?

小柳津:記憶に残りづらいですよね。商談が終わった後で、営業の人のことを思い出せないことが増えたと感じていて。そういうケースって当然将来につながる可能性も低いんですね。だからといって、横柄な態度だと聞く気にもなれませんから、爽やかにどう記憶に残るコミュニケーションをするかは大事かもしれません。

西山:当社のオンラインシステムは音声の解析ができるので、社内で分析を進めているのですが、ハイパフォーマーほど、お客さまと話す速度が一致することが多いんです。

ゆっくりしている人にまくしたてるように話すと「売りつけようとしてこないでよ」って見られちゃいますし、せっかちな人にゆっくり話すとイライラされてしまうじゃないですか。それを無意識のうちに察して、お客さんに合わせられる人というのが営業でも成果を出しているようなんです。

相手に合わせて話ができる営業が活躍する

松倉:なるほど。いまの話にも通ずるかもしれませんが、やはり信頼関係の構築は課題ですよね。オンライン上だと、アイスブレイクや、それ以前のちょっとした言動が信頼関係に大きく影響するなって感じます。商談相手が寝起きの感じで出てくると、ちょっと契約にはつながらないなって思っちゃいますもん。

西山:確かに。カメラの向きがおかしくて、首だけ登場したりする方や、やたら声が遠い人と商談すると、何の配慮もないなって思っちゃいますね。

松倉:そうそう! 小さいことですけど、意外と大事ですよね。西山さんはメリット、デメリットをどう考えていますか?

西山:デジタル化によって効率的になったことはメリットである一方で、デメリットでもあると思っているんですよね。

それは、良くも悪くもやることが型になってしまったということ。それぞれの仕事が局所的になっていて、自分で自由にやりたいタイプの人や仕事ができる人ほど物足りなさを感じやすくなっている。それは危うさかなと思っています。実際、ハイパフォーマーから「別の部門に挑戦したい」という話をもらう機会は確実に増えてますね。

松倉:効率化が進む中で、社内のケアは大切になってくるかもしれませんね。

ライトなコミュニケーションによって相手との関係性が築きづらくなる

――お話を聞いていて、人としての基本的な部分が大事なのかなと感じました。先ほどのメリット・デメリットを踏まえて、今後の営業職に求められる能力とはなんだと考えますか?

小柳津:画面共有力ですかね。どういう資料、どういうスクリーンを相手に見せて、情報伝達するかってすごく大事になってくる気がしています。営業をしていても思うんですけど、口だけで説明しようとするのではなく、さっと画面共有することで一気に分かりやすくなることって多いんですよね。

松倉:私が大事だと思っているのは、やはりコミュニケーション。特にテキストコミュニケーション力かなと思います。テキストで注意すると冷たさを感じてしまいやすいので、齟齬なく伝えるための配慮って大事になってきますよね。

西山:コミュニケーションは、多くの人が頭を悩ませてる部分ですね。出社していた時は、上司や同僚がすぐ近くにいるわけじゃないですか。そうすると「ちょっと元気ないな」「雰囲気が違う感じがするな」といったことに気付ける。

でもオンライン上だと、そもそもやり取りする人が限られるし、微妙な変化もつかみきれないことが多いんですよね。

当社では直属の上司以外との1on1を設けたり、異部門交流会を開いたりして、業務では関わらない人たちとのコミュニケーションを増やす工夫をしています。

松倉:僕は社内外から仕事を取りに行けることが大事になると思いますね。そのためには、まずは社内で仕事を率先して取りに行くことが重要です。

社内の小さい仕事に「僕やります」って手を上げたり、ミーティング時に「これは僕がやるので、これは誰々さんお願いしますね」と、自分の仕事を獲得した上でディレクションがさっとできる人って、今後より一層価値が増すのかなと。

社内外から仕事を取りに行く姿勢

また、僕自身の課題でもあるのですが、コミュニケーションツールの適切な使い分けをもっと意識していきたいですね。相手がどのツールを一番見ているのか、意識して使い分けることってすごい大事だと思います。

小柳津:確かに。僕自身、いろんな人たちといろんな仕事をしているのですが、ライトなコミュニケーションが多い故に、言った言わないが起こることが増えましたね。

松倉:そうなんですよ。ライトなコミュニケーションばかりをしていると、営業の人は軽く断られちゃうので、重い内容はメールで関係者を入れて送るなど、濃淡を付けてツールを使い分けるのも非常に大切かなと思っています。

最後にもう一つ、常に工夫し続けられるかどうかが重要ですね。営業ができない状況の時に「オンラインでイベントやりましょう」と言える人など、デジタルシフトの中で新しいビジネスモデルを発見して、行動できる人はとても重宝されるなと思います。

文/於ありさ


登壇者プロフィール

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株式会社GHOST 代表取締役CEO 小柳津林太郎さん1981 年生まれ、ニューヨーク育ち。2006 年慶應義塾大学経済学部卒業。株式会社サイバーエージェント入社、広告代理部門を経て、モバイル系子会社を設立。代表取締役に就任。2014年、ゲーム事業統括本部部長就任。18年Amazon Prime で配信中の「バチェラー・ジャパンシーズン2」参画後、AmebaTVに異動しアナウンス室を立ち上げる。19年に退社後、株式会社GHOST を創業し、代表取締役に就任。20年にトレンダーズ(株)の社外取締役就任

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トレンダーズ株式会社 執行役員 松倉寛之さん2010年にトレンダーズ入社後、12年にマザーズ上場。マネージャー、エグゼクティブマネージャーを経て、16年に当時最年少で執行役員へ就任。16~19年まで執行役員として、営業部署を統括。ナショナルブランドのマーケティングを中心に、マーケティング全般の企画提案、プランニングに従事。全社の組織開発・営業戦略を経て、現在は事業開発を行う

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ベルフェイス株式会社取締役 営業責任者 西山直樹さん2007 年に明治大学を卒業後、新卒で当時営業支援会社として上場を果たした株式会社セレブリックスに入社。 大手IT 企業のインサイドセールス部隊構築支援を中心に、延べ80プロジェクトの新規セールス部隊立上げに参画。200名を超える営業の採用やマネジメントに従事。15年同社を退職し、ベルフェイス株式会社に入社。執行役員を経て取締役に就任


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