引きこもりニートがベンチャーに転職したら、何のために仕事をするのかが分かった
仕事のやりがいを失ってあっさり退職、引きこもりニートに
大学在学時から個人的にチャリティーやボランティア活動を行うなど、社会奉仕活動に強い興味を持っていた落合沙也香さん。前職のジュエリーメーカーでは商品企画を担当し、東北地方のデザイナーと共同でアクセサリーを製造・販売するプロジェクトに携わっていた。当時、落合さんが感じていたやりがいは被災地の復興支援に役立っているということだった。
「ずっとボランティア活動を続けていた私にとっては、とてもやりがいのある仕事でした。でも、会社としてボランティア活動を続けていくのはとても難しいことで、前職の会社も資金繰りが理由でそのプロジェクトから撤退することになってしまったんです」
個人でボランティアを続けることはできるが、事業でやるものと比べたら影響力としては天と地の差。ボランティアに携われなくなり、やりがいを失ってしまった落合さんはあっさりと退職を決意してしまう。
「当時は直接的に人の役に立つことにしか興味がわかず、仕事を通してスキルを磨いたり、キャリアアップを目指すという考えはあまりなかったんです。そのため、あっさりと退職を決めた割に、選り好みをするあまり次の転職先が決まらず、生来の内向的な気質も手伝って、気付けばずるずると引きこもりニートのような日々を過ごしていました」
ベンチャーへの転職で変化した「行動力」の意味
ニートだった落合さんが、医療機関・介護福祉施設・教育施設向けの研修プログラムを販売するPresence Medicalに転職することになったきっかけとは何だったのだろうか。
「祖母の末期がんが発覚したんです。残りの日々をできるだけ楽しく過ごそうと健気に闘病する祖母の姿を見て、人の人生は死の直前の楽しさで決まる、と考えるようになりました。今の会社を選んだのも、病院や介護施設などへの研修教材の販売を通じて、間接的ではあるものの、患者さんの人生の最後を豊かにできる仕事だと思ったからです」
同社への転職を果たした落合さん。彼女は以前に比べて仕事への向き合い方が変わった、と自覚しているという。その理由を「成長を感じているから」と話す。
「自分には荷が重そうな仕事にもあえて挑戦するようになったのは今の会社に転職してから身に付いたことです。直属の上司であり、営業コンサルタントとしても経験豊富な社長との営業同行を重ねることで、自分にも自信が付いてくるんです。すると普段は社長に同行してもらうクロージングに、いきなり一人で行きたくなったりするんです。案の定、一人で行くと失敗したりもするんですけど(笑)。でも、前職まではこんなこと、絶対にできなかったと思います」
「失敗から学ぶことで成長できることに気付いた」と行動力の裏側を分析する落合さん。それは今までの行動力とは異なる意味を持っているという。
「今の会社に入社する前はイベントコンパニオンや接客、編集などいろいろな仕事を経験してきましたが、どれも長く続かなかったんです。今振り返ればとりあえずやりたいことから手を出す、という考え方だったんだと思います」
しかし、今はその考え方は変わったと落合さんは続ける。
「やりたいことを実現するためには、どのような道筋で進めていけばいいのか、何を経験して何を学ぶことが将来的に役に立つのかを意識して仕事に取り組むようになりました。これは経営者との距離が近いベンチャー企業だからこそ学べることだと思うんですよね」
落合さんはクロージングで社長に同行してもらうことが多く、その際に会社のビジョンや経営に関する話も聞けるのだという。
「将来は介護施設を作りたいんです」と目を輝かせて話す落合さん。その表情は、半年前まで引きこもりニートだったとは思えない充実感と自信に満ち溢れていた。
取材・文/浦野孝嗣 撮影/赤松洋太
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