株式会社アイ・コミュニケーション 代表取締役
一般社団法人日本ビジネスメール協会 代表理事
実践塾シェアクラブ 主宰
平野友朗さん1974年、北海道生まれ。筑波大学人間学類で認知心理学専攻。広告代理店勤務を経て、2003年、メルマガ専門コンサルタントとして独立。2004年、アイ・コミュニケーション設立。ビジネスメール教育・改善の第一人者として知られ、メールコミュニケーションの専門家。メールに関するメディア掲載1500回以上、著書32冊。メールを活用した営業手法には定評があり、メールやメルマガなどを駆使して1万社以上の顧客を開拓。メールのスキルアップ指導、組織のメールに関するルール策定、メールの効率化による業務改善や生産性向上などに数多く携わる。官公庁、企業、団体、学校での講演や研修、コンサルティングは年間150回を超える。日本初のビジネスメール教育事業や検定試験を立ち上げるなど、ビジネスメール教育の普及に尽力している
上司へのメールで気を付けたい3つのポイントとは? 例文で学ぶ、依頼・相談・質問メールのマナー
コロナ禍、リモートワークが浸透する中で、テキストコミュニケーションでやり取りする機会が増えている。
業務の報連相はビジネスパーソンの基本だが、些細なこともメールやチャットなどテキストで伝えなければいけないシーンが増えて、上司とのすれ違いや認識の齟齬が増えたと感じる人も多いのでは?
そこで、前回に引き続き、ビジネスメールの達人・『テレワーク時代のメール術』(WAVE出版)著者の平野友朗さんにインタビュー。
リモート下でも上司とテキストでうまくやり取りするためのコツと、シチュエーション別で使えるメールの例文を紹介してもらった。
リモート環境だからこそ、コミュニケーションの気配りが重要に
リモートワークに切り替わったことで、コミュニケーションに苦労している若手ビジネスパーソンはきっと多いですよね。
社内にいればお互いの様子も見えるし、気楽に話し掛けることもできますが、リモート下ではメールやチャットなどでの会話が増えていきます。
では、上司に対して送る“良いメール”とは何か。基本的なルールは前回の記事で紹介したものと同じです。
メールの⽬的を明確にして、こちらが望むアクションを相⼿にとってもらうこと。つまり、「相手を動かすテキスト」を送ることです。
今回は、加えて注意したい点を3つ挙げてみましょう。
①業務報告はオフラインコミュニケーションより丁寧に
同じ職場にいれば、あなたが今どんな仕事をしていて、どれくらい進んでいるのか、上司にも何となく様子が伝わるでしょう。
しかし、リモート環境ではそうはいきません。常に顔を合わせて仕事ができる状況ではないからこそ、業務に関する報告が重要になってきます。
例えば、ビデオ会議を設定したいのであれば、「お時間をください」と曖昧な言い方をするのではなく、「〇〇の件で、明日30分くらいビデオ会議でご相談できますか」と伝えるのがベター。
その際に、業務がどこまで進捗していて、どんな理由で何に困っているのか、背景を丁寧に伝えることが大切です。
人は「何をしてほしいのか」「なぜそうしてほしいのか」が分からないと、なかなか動いてくれないものです。用件は具体的に伝えましょう。
②早めの報告・相談を心掛けること
これはメールのコツとは少し離れるかもしれませんが、オンラインでのコミュニケーションが主流となっている今、ぜひ気を付けてほしいポイントの一つです。
毎日顔を見合わせていれば、「あの件は今どうなっている?」など上司から声を掛けられることもあるでしょう。
それによって未然に防がれていたトラブルもあったのではないでしょうか。しかしこれも、リモート環境では失われたコミュニケーションです。
だからこそ、何か不安な点や予定通り進行していないことがある場合には、早めに報告するように心掛けてください。
クライアントとの交渉に手こずっている、納期が遅れそう、といったトラブルにつながりかねないことは、どんなに小さなことでも早めに報告、相談しましょう。
大切なのは、これを言ったら怒られるのではないかと、報告を先延ばしにしないこと。取り返しのつかない事態になってからでは遅いのです。
報連相をしっかりしないと、「何かを隠しているのではないか」「きちんと仕事をしていないのではないか」という不信感を招くことにもなりかねません。
③メールへの返信には誠意をもって
自分に届いたメールに返信する際には、内容はもちろん、タイミングにも注意しましょう。
例えば、朝に届いた「あの件はどうなっている?」という上司からのメールに対して、夕方に返信して、すぐに仕事を終えてしまう……といったケースもよく耳にします。
全てに即レスしなければいけないわけではありませんが、返信しっぱなし、は避けたいところです。
また、質問にはきちんと返答しましょう。3つの質問に対して回答が2つしか返ってこないと、質問した側は無視されたような気分になります。
下手をすると、「何か都合の悪いことでもあるのか」と余計な勘ぐりを入れられてしまうかもしれません。「3点目については確認中です」など、途中経過の報告でもよいので答えるようにしてください。
最もやってはいけないのは、言い訳ばかりの返信です。「あの件はまだ?」という問い合わせに対して、「昨日やる予定でしたが、急に別件が入ってしまい……」といった言い訳から始まるメールでは、上司のイライラは募るばかりです。
上司が求めているのは、業務状況はどうなっているのか、いつまでにできるのか、という回答です。なぜできなかったかの検証は、後でゆっくりやればよいのですから。
普及しつつあるチャットツールは、使い方に要注意
最近では、メール以外にもさまざまなチャットツールを導入している企業も多いですね。
仲間うちで特定のテーマについて話すなら、確かにチャットは便利でしょう。ただし、やみくもにコミュニケーションツールを増やすのは危険です。
時には『Slack』から、またある時は『Chatwork』や『Messenger』から、まちまちにメッセージが届く。人やチームによって使うツールが異なると、管理が大変でコミュニケーションが滞りかねません。
私の会社では、オンラインコミュニケーションはメールが基本です。メールであれば、使っているツールの種類によらず、社内外の誰とでもやり取りができますからね。
チャットに関しては、ちょっと声を掛けたりメモを回す代わりに、サブツールとして使う程度がおすすめです。
こう考えていくと、リモート時代に必要なテキストコミュニケーションのテクニックとは、単に丁寧な文章が書けることではないのが分かりますね。
仕事の進行をきちんと管理していくスキルや、相手を思いやる心の方が、「きれいな文章を書くこと」よりもよほど重要です。
例文で学ぶ、上司とのメールコミュニケーション
ここからはシチュエーション別に、上司向けに“良いメール”を作成するコツを、例文を用いてご紹介していきます。
①資料の確認を「依頼」する場合
【ポイント】
資料のどこを主に確認すればよいのか、いつまでに確認すべきなのかを明確に書きましょう。
【例】
〇〇課長
お疲れ様です。△△です。
クライアントに提出する提案書のご確認をお願いします。
今回は、従来に比べて価格が低い点を訴求したいと考えています。
週明けに先方に提出予定なので、金曜日の正午までにご確認いただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。
②仕事の締め切りが間に合わないことを「相談」する場合
【ポイント】
遅れることに対する謝罪だけでなく、遅れる理由と、いつまでに対応が可能なのかをできる限り丁寧に書きましょう。
【例】
〇〇課長
お疲れ様です。△△です。
明日正午に提出予定の●●調査資料についてご相談します。
本日、急ぎのクライアント対応が発生し、資料の作成が遅れています。
提出期限に間に合わない可能性があります。
直前の連絡となり申し訳ございませんが、クライアント対応が終わり次第作成しますので、
明日の18時までお待ちいただけないでしょうか。
以後、スケジュール管理に一層気を付けて取り組んでまいります。
期日に関しまして、ご確認のほどお願いします。
③仕事で分からないことを「質問」する場合
【ポイント】
冒頭で、何に対する質問なのかを簡潔に書きましょう。そのあとで、何に困っているのか、具体的に何が知りたいのかを説明します。
【例】
〇〇課長
お疲れ様です。△△です。
業務ツールの●●についておたずねします。
●●にログインしたところ、
私にアクセス権限が付与されておらず、業務処理ができませんでした。
この場合の対応方法をお教えいただけないでしょうか。
お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
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【例文で解説】ビジネスメールの達人に学ぶ、「相手を動かす」依頼・提案・謝罪テキスト作成テク
取材・文/瀬戸友子
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