暗闇ボクシング『b-monster』生みの親・塚田眞琴が“昆虫食レストラン”をオープン!「人生の選択肢を増やす」ブレない信念
今年、創業5周年を迎えたb-monster株式会社。銀座の一等地に暗闇ボクシング『b-monster』一号店を出店し、最先端のフィットネススタイルが話題を呼び急成長。現在は国内に8スタジオ、海外に4スタジオを展開している。
同社を創業したのは、当時大学生だった塚田眞琴さん(26歳)。姉の美樹さんと共に起業し、『b-monster』をここまで育て上げた。
そんな彼女が次に挑戦するのは、昆虫食のレストラン事業だ。2021年5月、サステナブルをテーマにしたレストラン『EAT for E』を渋谷にオープンする。
フードメニューは、ミシュラン1つ星店『sio』が監修。地球環境に優しく、高たんぱく&低脂質な昆虫食をメインに、食事面からも理想の体づくりをサポートする。
塚田さんは、「昆虫食を日々の食事の選択肢として定着させたい」と意気込む。なぜ今回の挑戦に踏み切ったのか。
コロナ禍に経験した苦難と成長、次のチャレンジに込める想いを聞いた。
※本記事は、姉妹サイト『Woman type』から転載しています。
コロナ禍に直面した過去最大の試練「休館の判断、悔しかった」
2016年に創業したb-monster。1号店を『b-monster』銀座にオープンするなど、学生起業とは思えない強気なビジネススタイルで注目を浴びた。
創業から5年を迎えた今、塚田さんは意外な感想を口にする。
正直、もっと細々と運営していくつもりでした。
最初に『b-monster』を銀座に出店したのは大きな決断でしたが、当初イメージしていたのは、『感度の高い人たちだけが集まるおしゃれな場所』です。
それが予想外に多くの方に支持していただけて、次々と店舗を出店することに。
うまくいくと確信していましたが、ここまで大きな反響があるとは思っていなかったので、正直言って驚きましたし、すごく恵まれていたと感じます。
塚田さんにとっては初めての企業経営。予想を遥かに上回る事業の成長スピードに、戸惑いを覚えることもあった。
本社も構えず、私と姉でスタジオの裏でひっそり作業をしていたのが5年前。そこから半年くらいで、社員数は一気に50人ほどに。
あまりにあっという間で目まぐるしい日々。どうやって乗り越えたの? と聞かれますが、正直、乗り越えた感覚はありません(笑)
目の前のことに夢中で取り組んできたら、今ここに立っているという感じです。
創業以来、苦難は数々経験してきた。だが、塚田さんにとって最も大きな試練となったのは、今回の新型コロナウイルス感染拡大だ。
昨年3月からの緊急事態宣言下では約2カ月間、全スタジオの休館を余儀なくされた。初めてのスタジオ閉館の経験も「悔しかった」と塚田さんは振り返る。
どのスタジオも、できれば最後まで休館したくなかったですね。コロナ禍においては、心身の健康維持のためにより一層フィットネスの重要性が増すと実感していたので。
それでもやはり、休館せざるを得ない状況になり仕方ないことなのですが、無力さが悔しかったです。
どうにかしてフィットネス事業を続けたい。姉と二人で模索し、急ピッチでオンラインプログラムの提供ができる環境を整えた。
メンバーさまからの反応も上々、予約の受付などを塚田さん自ら行い「久しぶりに直接メンバーさまと触れ合う仕事をして、初心に戻れた」とのこと。
しかし、コロナ禍に直面したのはスタジオ運営の壁だけではない。将来への不安を感じるスタッフが増え、マネジメントの見直しも急務となった。
スタジオ休館やオンライン化の流れを受けて、『b-monster』のスタジオは全て無くなるんじゃないか、という不安を感じるスタッフが増えたんです。
そういう意見が出るであろうことは予想していたので、スタッフへの説明、コミュニケーションは丁寧過ぎるくらいにしていたつもりでしたが、私の力不足でした。
以降、社内でのコミュニケーションを文章ベースのものではなく、オンラインでも対面して言葉で伝える方法へとシフト。双方で意見を交わす機会を増やした。
結果的に、スタッフの不安も徐々に解消されていったという。
また、コロナ禍においても『b-monster』のスタジオを無くそうと思ったことは「一度もない」と塚田さんは言い切る。『b-monster』の良さは、何よりスタジオに凝縮されていることを、塚田さん自身が一番よく分かっているからだ。
五感をフルに使い、非日常な空間で思い切りワークアウトを楽しむ。それは、スタジオという形態なくしてはできないことです。
知られざる昆虫食の魅力。新たな食の選択肢を増やしたい
コロナ禍の試行錯誤を続ける塚田さんだが、このタイミングで「昆虫食」をテーマにしたサステナブルレストラン『EAT for E』を東京・渋谷にオープンする。
昆虫食というサステナブルかつ栄養価の高い食材を用いて、b-monsterが掲げる「心身共に洗練されチャレンジし続ける人で溢れる世界を作る」というビジョンを食の面から実現することを目指す。
人の体を変えるためには、トレーニングだけでは難しい部分もある。食にアプローチすることは、私たちのビジョンの実現に不可欠だと考えていました。
とはいえ、「昆虫食」というコンセプトに驚く人も多いはず。なぜ、昆虫食を選んだのだろうか。
『b-monster』が飲食店をやるからには、何か新しいものを提案したいと考えていました。
体に良くて高タンパク質のメニューを提供するのは大前提。でも、それだけだと面白くありません。そこで思いついたのが、昆虫食でした。
栄養価も高く、実は美味しい。しかも環境にもよい。そんな要素が、『b-monster』のビジョンとぴたりとはまったんです。
渋谷という新しいカルチャーが生まれる土地で、「栄養たっぷり、おしゃれで美味しい昆虫食」という新しい選択肢を定着させていきたいと塚田さんは意気込む。
“美味しい・体に良い・環境に良い”3拍子揃った食事体験を
塚田さんが『EAT for E』をオープンするにあたってパートナーに選んだのが、ミシュラン一つ星レストラン『sio』の鳥羽シェフだ。
昆虫食を新しいカルチャーとして浸透させていくには、単に栄養価が高いだけでなく、美味しいことが絶対条件だと思っていました。
鳥羽シェフは、『美味しいものを作ることには自信がある』と以前仰っていて。食に対する想いも通ずる部分が多く、ぜひ鳥羽シェフにお願いしたい、この人しかいない! と確信しました。
開発したメニューには、顧客心理やシチュエーションにあわせてさまざまな工夫が施されている。
昆虫の形状を残して盛り付けをしたメニューもあれば、パウダーやペースト状にした昆虫を使用し、見た目には全く昆虫感のないメニューもある。
昆虫食に抵抗がある方には、まずはパウダータイプのものから始めてみてほしいです。魚介に近い味わいで、とても美味しいんですよ。
「女に生まれて良かった」と思いたい
また、新事業の展開以外にも、塚田さんにはもう一つ夢がある。それは、「女に生まれて良かった」と思える人生を生きること。自分を含むあらゆる女性が、「女に生まれて良かった」と思える世の中をつくることだ。
塚田さんはこれまでの人生で一度も、「女として生まれて良かった」と思えたことがないのだという。
昔からいつも、男性が羨ましかったんです。
さまざまな理由がありますが、いろんな世界を見渡しても、トップにいるのって男性ばかりだったのも理由の一つです。
少なくとも、私にはそう見えていました。
身体的にスポーツでは男性に勝てない、一見女性が多いように見える料理の世界ですら、味覚が安定しない女性はトップになるのは難しかった。
何かの世界でトップになりたかったとしても、女性であるがゆえに、身体的・社会的にそれが難しい世界のだとしたら、私は男に生まれたかった。
学生時代は本気でそんなことを考えていました。
中学時代はあえてボーイッシュな格好をして、男らしく振る舞った。男っぽくすることで、憧れに近づけると考えたからだ。
しかし、当然ながら男らしく振る舞ったところで、塚田さんの願いは叶わない。それであれば、「女として生まれて良かった」と思える生き方を模索しよう。高校生になる頃には、そんなふうに考えるようになった。
「続ければ叶う」塚田流・夢をカタチにする秘訣
経営者となった今、男性であれば悩むことのない、女性ならではの悩みに直面している。
もしも将来、妊娠して子育てすることになったら、自分の会社はどうすればいいのか。仮に子どもを三人持ちたいとして、約二年半も体調が優れない時期や無理が聞かない時期があるとしたら、きっと経営に影響が出るだろう。
やはり、「自分が男だったら」という考えが頭をよぎる。
しかし、自分と同じようにモヤモヤする気持ちを抱えた女性がたくさんいるのであれば、その問題を何とかすることはできないか。視点を切り替え行動につなげるのが塚田さんらしいところだ。生粋の起業家スピリッツを感じさせる。
まだ具体的な話ではありませんが、いずれはフェムテック領域にも挑戦してみたい。いま注目しているのは、卵子凍結や代理出産など。
出産にはタイムリミットがある上に、相手も必要なことたから、うまくいかずに多くの人が悩みます。
もう少し、自分で産む時期をコントロールできたり、産み方を選択したりできるようになればいいなと思っているんです。
出産を機に仕事を手放す女性や夢を諦めてしまう女性がいるとしたら、そうしなくていい選択肢をつくりたい。塚田さんは熱を込めて語る。
世の中を変えるのは、そう簡単なことではないかもしれない。しかし、彼女には思い描いたものをカタチにする力がある。それは、これまでの実績が証明している。
夢を叶える秘訣は単純。夢が実現するまで、やると決めたことをやり続けることです。
多くの人は、『やりたい』と言っただけで終わるか、ちょっと行動してすぐやめてしまう。継続さえできれば、誰でも夢は叶えられると思うんです。
あとは、実現したいことを言葉にして発信していくことも大事。
『ONE PIECE』のルフィが分かりやすい例。
彼はことあるごとに『俺は海賊王になる!』と、夢を声を大にして言葉にしてきたから志を同じくする力強い仲間が集まったんだと思うんです。
圧倒的な粘り力、そして、願いをことあるごとに言葉にする習慣。この二つを武器に、つくりたい未来を理想から現実へと変えていく。塚田さんの今後から、目が離せない。
取材・文/太田 冴 編集/栗原千明(編集部) 写真提供/b-monster
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