キャリア Vol.982

【微経験転職】新しい仕事に挑戦しても「キャリアをゼロリセットしない」転職とは?

コロナ禍で、飲食、観光、小売など業界全体が不況に陥ったことで、これまでの経験業界・職種とは違う「新しい仕事」を探している人も多いかもしれない。

しかし、中途採用では経験者採用が基本。求人票を見ると「実務経験3年程度」などの条件が目に入ることがほとんどだろう。

「求人票に記載された条件に自分が当てはまらない場合、『どうせ採用されないだろう』、あるいは『万が一採用されても入社後が大変なのでは……』という不安から、応募を見送る人も多いです」

そう語るのは、キャリアカウンセラーの水野順子さん。

こうした現状を受けて、「新しい仕事に応用できそうな経験がわずかでもあるならば、その“微経験”を生かすカタチで、『やりたい仕事』に挑戦してみてほしい」という。

“微経験”を生かす転職活動について、水野さんに詳しく話を聞いた。

※この記事は姉妹サイト『Woman type』より転載しています。

プロフィール画像
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キャリアカウンセラー 水野順子さん株式会社キャリアコレクション代表取締役、All About女性の転職ガイド。公務員・外資系大手人材サービス会社を経て独立。キャリアカウンセリングや研修・講演を通じ、メンタルケアや人間関係の築き方などを含めた女性のキャリア支援を行っている。過去に20,000人以上へのキャリアカウンセリングと、60,000人以上への講演・研修によるキャリア支援実績がある ■ホームページ

転職者が誤解しがちな「実務経験○年以上」の本当の意味

コロナ禍で、中途採用市場では即戦力採用の傾向がますます顕著だ。

その背景には、企業にポテンシャル人材を育成する余力がないケースや、リモートワークが浸透したことにより上司の管理がなくとも自律的に働ける人材の需要が高まっていることなどがある。

そんな中で、「実務経験3年」などの記載のある求人票がますます目立つようになっている。

しかし、水野さんによれば、実務経験の表記はあくまで目安であり、絶対の条件ではないことがほとんどだという。

「例えば『実務経験3年』という表記なら、その仕事に生かせる“微経験”と『これからこの人は伸びそうだ』と感じさせるポテンシャルさえあれば、条件に一致せずとも採用される可能性は十分あります。

というのも、この実務経験の年数に関する表記というのは、企業側が『あわよくばこういう人がいいな……』という希望で記載していることが多いもの。

実際に面接をしてみて今後の成長や活躍が期待できる人であれば、『全くの未経験者でもいい』と考えているケースが意外と多いのです」(水野さん)

水野順子

一方で、採用条件に「実務経験5年以上」という記載がある場合は、先に挙げた「実務経験年数3年」とは企業側の採用スタンスが変わるという。

「『実務経験5年以上』で企業が想定するのは、手取り足取り仕事を教えずとも、入社後すぐに実務に取り掛かれて、後輩指導などもできる人。つまり、文字通りの『経験者』です。

“微経験”しかない状態だと、運良く内定をもらえても、入社後に企業の期待に応えられないケースが出てくるかもしれません」(水野さん)

“微経験”があるなら「未経験枠」より「経験者枠」で入社した方が断然ベター

実務経験が求人票の条件に満たなくとも、採用される可能性は十分にある。

一方で、「経験者枠で採用されたら、入社後に大変な思いをするのでは……」という懸念から、「未経験者枠」の求人にのみ応募する女性も少なくないという。

水野さんはそのような現状に対して、未経験者の採用枠で転職を繰り返してしまうと、キャリアダウンにつながりかねないと指摘。安易に未経験者として転職するのは避けてほしいと話す。

「中途採用市場にも、未経験歓迎を謳う求人は数々あります。しかし、全くの未経験者として転職すると、給与が新卒レベルまで下がってしまうこともしばしば。

転職先での昇進・昇格なども遅れる可能性があり、転職の度にキャリアがリセットされてしまう事態が起こります。

年齢とともに、収入・ポジションを上げていきたいなら、これまでの経験を積み上げていくような『経験を線でつなぐ転職』を目指すことをお勧めします」(水野さん)

水野順子

では、新しい仕事にチャレンジする場合、どうすれば過去の経験を線で結ぶことができるのだろうか。

水野さんは「微経験者こそ、『ポータブルスキル』に着目して」と呼び掛ける。

「実務経験がない分、微経験者の転職では、どの会社・組織でも通用する普遍的な『ポータブルスキル』を持っているかどうかが採用の可否を左右する重要なポイントになります」(水野さん)

例えば、ここ数年、特に需要が高い「ポータブルスキル」はマネジメント能力。マネジメントといっても、「何十人の部下をまとめてきた」という類の経験でなくてもいい。

後輩・新人の育成を任されている、アルバイトの指導・監督経験があるなど、人を育てたり管理したりした経験があれば、「それは立派なポータブルスキルになります」と水野さん。

「業種や職種に関係なく、次の職場で生かせるビジネスの経験は、採用担当に惜しみなくアピールしてください」(水野さん)

微経験転職の選考過程では、思わぬ逆オファーの可能性も

また、微経験でも勇気を出して求人に応募し、選考に進めば「思いもよらない“逆オファー”を受けてキャリアアップできる可能性もある」と水野さん。

例えば、面接の場で自分のこれまでの経験や、持っているスキル・知見を採用担当に話したときに「あなたなら、こんな可能性があるのでは」と最適なポジションを紹介してもらえることもあるという。

「以前、私の元に転職相談に訪れた女性で、事務職から法務職へ転身された方がいました。その方は、もともと法務ポジションへの応募は考えておらず、法務の経験もないため自分が法務で採用される可能性があるとは思いもしなかったそうです。

しかし、事務として積んできた経験や業務プロセスを面接の場で伝えた結果、仕事への取り組み方や業務の進め方がその会社の法務のカルチャーにぴったりはまる、ということで企業から法務ポジションで逆オファーを受けたのです」(水野さん)

水野順子

選考の場に足を運んだからこそ、訪れたキャリアアップのチャンス。応募社数は最低限に絞りたい人も多いかもしれないが、「可能性はなるべく切り捨て過ぎない方がいい」と水野さんは念押しする。

これまでのどんな経験も、無駄にはならない。まずは、やってみたい仕事をよく知ること、そして、自分の経験をどうその仕事に生かせるのか想像してみよう。どんなわずかな経験でも、キャリアアップの材料になるはずだ。

取材・文/太田 冴 編集/栗原千明(編集部)


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