「ビジネス数学の第一人者が教える 史上最高にわかりやすい説明術」を要約!【10分で読めるビジネス書】
コロナ禍以降、商談の多くはオンライン化。訪問営業よりも相手の集中力が途切れやすくなったり、顔色が伺いにくくなったりする中で、営業マンにはこれまで以上に「わかりやすい説明」が求められるようになった。
そこで本記事では、書籍『ビジネス数学の第一人者が教える 史上最高にわかりやすい説明術』の内容を要約して紹介。きっと明日からの商談の助けになるはずだ。
この本のポイント
・説明とは「理解」を提供する行為だ。頭を使って「誰でも同じように理解できる内容」を作り伝えることである。
・説明は、論理的である、相手が感覚的にとらえられる、相手の知っている言葉で語る、という3つの条件を満たす必要がある。
・論理的である状態とは、説明内容を塊に分けたときにそれぞれが矢印でつながっている状態を意味する。
・相手に感覚的にわかってもらうために、説明上手な人は例と比喩を効果的に用いている。
会議やプレゼンなどでうまく説明できなかった苦い経験はあるだろうか。相手にわかるように説明するのは難しい行為だと日々感じている人は少なくないはずだ。
説明という行為は、大学の講義や社内会議、携帯電話ショップなど、日常生活のいたるところで行われている。就活におけるエントリーシートもまた自分自身を企業に説明するためのものである。こうした「説明」が求められる場面において、「わかった」(つまり理解できた)を生み出す方法論を伝授してくれるのが本書である。
ビジネス数学教育家である著者は「論理的な説明」をするプロである。プロのビジネス研修講師として参加者から厳しいフィードバックを受ける環境において、圧倒的に「わかりやすい説明」と高評価を得ている。そんな著者が実にわかりやすく説明術を展開している。
ボウリングでストライクを狙うためにはけっしてセンターピンを外してはいけないように、説明術でも外してはならないポイントがある。そのポイントを外してしまうと、相手に理解してもらうことはまず難しい。
うまく伝わらずもどかしさを感じた経験があるならば、本書で説明術をマスターしてはどうだろうか。説明上手になるには訓練が必要だが、基本の型をもとに練習すれば必ずやうまく説明できるようになるはずだ。
説明とは何か
説明とは思考である
本書では「わかった」(つまり理解できた)を生み出す方法論、すなわち説明のノウハウを伝えていく。そもそも「説明」とは何かという大前提が共有されていなければならない。
「説明」とは「理解」を提供する行為である。頭を使って「誰でも同じように理解できる内容」を作って伝えることである。そして実際に伝えるときには、「説明」という行為は99%終わっている。これが本書における「説明」の定義だ。
ここでのポイントは2つある。「誰でも同じように」という点と「頭を使う」という点だ。説明するという行為はコミュニケーションではなく、思考なのだ。もし説明が要領を得ないのであれば、それは説明が下手なのではなく、思考が足りていないのだ。
うまい説明の3つの条件
「誰にでも同じように理解できる内容」はどう作るか。その際は逆の状況を考えるとよい。つまり「何をいっているかわからない」となる状況を考えるのだ。次の3点に注目しよう。
1つ目は論理的でないときだ。
たとえば「お腹が空いた。花柄のワンピース着たい」という文章があるとする。2つの文章を「A→B」と矢印でつなぐことができないので、「何をいっているかわからない」となってしまう。
2つ目はピンとこないときだ。
いくら論理的に伝えてもピンとこなければ理解にはいたらない。そんなときに有効なのが例(Example)と比喩(Metaphor)だ。説明上手な人はこれらの使い方がうまい。
3つ目は知らない言葉があるときだ。これについては解説不要だろう。
要するに「わかった」を生み出す条件は、(1)論理的である、(2)相手が感覚的にとらえられる、(3)相手の知っている言葉で語る、の3つの条件を同時に満たすことである。
説明では話し方の丁寧さが最重要
説明とはコミュニケーションではなく思考であり、頭を使う行為が99%である。では残りの1%は何なのか。それは話し方が丁寧かどうかである。これが実際に口を使って伝える局面における最重要ポイントとなる。その理由は3つある。
まず、あなたの姿勢が相手にはっきりと伝わるからだ。説明に時間を使うことは相手の時間を奪うことと同じだといえる。もし雑な話し方をしてしまうと、相手は自分が雑に扱われていることを敏感に感じ取ってしまう。
2つ目の理由は、気に入らない人の説明は聞きたくないと思われるからだ。人はいくら説明が正しくても、自分を大切にしてくれない人の話は理解したくないものだ。
3つ目の理由は、世間では「丁寧な説明」が一般的になったからだ。電車のアナウンスなどの説明は、一昔前と比べると格段に丁寧になった。そうした状況下で誠意のない対応をすれば、すぐに非難の的になるだろう。
丁寧な話し方は説明という行為のたった1%にすぎない。しかし、それが原因で説明がうまくいかないのはもったいない。中学生にもわかるような説明を意識すれば、おのずと丁寧な話し方になるだろう。
「論理的である」こと
ポイントは塊と矢印
前述した「うまい説明の3つの条件」のうちのひとつ、「論理的であること」について掘り下げる。
論理的な説明とは何か。それは筋道が通った説明であり、つながりができている説明と言い換えられる。
たとえば、「就活がうまくいくためには、エントリーシートがしっかり書けることが重要である」という文章を読んで、頭にはてなマークが浮かぶ人はいないだろう。
なぜなら、就活がうまくいく→(そのためには)面接試験に通る必要がある→(そのためには)まずエントリーシートの内容で評価されなければならない→(だから)エントリーシートがしっかり書けることが重要だ、というつながりがあるからだ。
矢印には道路標識のように人を案内する機能がある。文章でもいくつかの塊が矢印でつながっているときに、私たちは「わかる」と感じる。論理的な説明をしようとするよりも、いくつかの話の塊を矢印でつなぐことを意識しよう。
「1-1-3」で説明する
「論理的」であることは目的ではなく手段である。論理的であることを目指す必要はなく、結果的に論理的になっていればいい。それを実現する具体的な方法が、1分で、1つのメッセージを、最大3つの要素で説明する「1-1-3」の方法である。
「1-1-3」のステップは4つある。
まず、説明内容にタイトルをつける。次に説明内容を最大3つの塊に分ける。そしてその3つの塊に順序をつけ、関連性を「絵」で表現するつもりで矢印を加える。最後は1分間で説明できるように情報量を削ぎ落とす。
こうして塊を矢印でつなぐことで、説明のスタート地点からゴールまでの道筋を作っていく。どんな説明も必ずこの4ステップで作ることができる。すべての説明を1分以内にする必要はないが、多忙なビジネスパーソンに「要するに何?」と言われないためにも、簡潔にわかりやすく説明しよう。
「ピンとくる」感覚
例と比喩で格段にわかりやすくなる
いくら論理的に伝えたところで相手がピンとこなければ理解してもらえない。そこで、相手が感覚的にわかるように用いるのが例(Example)と比喩(Metaphor)である。
例とは具体的な事実や表現であり、「Aである。具体的には(たとえば)、○○○である」のようにいえる。
一方、比喩はその様子を置き換えた表現であり、「Aである。それはまるで、○○○のようである」といえる。
ためしに「いま私はとても絶望している」ことを説明してみよう。例や比喩を使わずに「とにかく、すごく、史上最高に、徹底的に、とても絶望している」といったらどうだろう。これでは感覚的に理解するのは難しい。では、「たとえばこの数日、食事も喉を通らないし、人と話す気力もない」や「まるでこの世から太陽が消滅するようなことが私に起こった」と例や比喩を用いて説明するとどうか。こちらのほうが格段にわかりやすいだろう。
「感覚的にわかる」の作り方
例と比喩を使いこなせばあなたも説明上手になれる。大切なのは、中学生でもわかる身近な題材を用いることだ。
「感覚的な説明」は、視覚的に理解できることと、想像(イメージ)できることのいずれかを満たしている。算数の授業で先生がピザを等分して分数を説明するのは、視覚化されてわかりやすいからだ。
比喩を作る際には主張の構造を明らかにして「つくり」が同じものを探せばいい。著者はこれを「構造化思考」と呼んでいる。
たとえば著者は「ボウリングでいうセンターピンさえ外さなければ説明は必ずうまくなる」という。この比喩が成り立つのは、説明する行為とボウリングが同じ構造をしているからだ。ボウリングではセンターピンを外すとすべてのピンを倒すことはできない。同様に、説明では話す前の仕事が間違っていると、どんなにいい声で滑らかに話そうと相手に理解してもらえないのだ。
【必読ポイント!】 説明の始め方にこだわる
重要度は冒頭が8割、本題が2割
本書では「説明の始め方」を「冒頭」と表記する。ここまで説明における重要事項を伝えてきたが、実はこの「冒頭」が「本題」以上に重要度が大きい。
重要度、所要時間、相手の記憶に残るかどうかを数字で比較してみると、次のようになる。「冒頭」の重要度80%に対して「本題」は20%。「冒頭」の所要時間10%に対して「本題」は90%。そして「冒頭」が相手の記憶に残る割合0%に対して「本題」100%である。
圧倒的に短い時間で記憶にも残らない「冒頭」が最重要なのは、相手に届けるべきものを届けるために欠かせないパートだからだ。説明上手な人が徹底して「冒頭」にこだわる理由はここにある。
相手の「つもり」をコントロールする
では「冒頭」で何を話すとよいのか。いきなりわからないことを聞かされて理解を求められると、大きなストレスになってしまう。説明にどれくらい時間がかかるのか。そもそもその説明を聞く必要があるのか。話を聞く側はさまざまなプレッシャーやストレスを抱えている。相手がこんな状態では伝えたいことが届かない。
だが、最初に「1分だけ時間をください」というだけで、相手はそのつもりで説明に耳を傾けるようになる。最初にどんな話の「塊」があるかを伝えることで、相手は説明の構成がわかり、「理解できるかどうか」という不安が解消できる。
1分で終わると思っていた話が10分かかるなど、自分の「つもり」から外れると人は不快に感じてしまう。いきなり説明を始めるのではなく、相手の心理を最優先に考えよう。こうした工夫で相手の「つもり」をコントロールしプレッシャーを軽減することが重要だ。
お手本は通販番組
社内会議に出席して、「その説明を聞く必要がある?」と疑問を抱いたことはないだろうか。そう思うのは「本来は必要ないものに時間を取られるのはイヤだ」という気持ちがあるからだ。聞き手にこうした不安があることを念頭に置いて、冒頭で相手に説明を聞く必要性があることを伝えるべきである。
手本として最適なのは、通販番組である。通販番組の冒頭ではいきなり商品説明をしない。たとえば「このようなシミがついて困ったことはありませんか?」などと、どんな価値のある話なのかを伝えている。これが冒頭でやるべき仕事である。
説明にやさしさを
説明の良し悪しはやさしさの量で決まる
「このプルダウンから選択してください」「プルダウンって、なんですか?」こんな会話が携帯電話ショップから聞こえてくる。若い店員が年配のお客様に操作の説明をしているのだ。店員はマニュアル通りに説明しているだけで、何も間違ったことはいっていない。
とある企業では、「こっちは忙しいし、わざわざ説明なんてしなくても、資料を見ればわかるから」と、管理職が新人にいっているのが聞こえてくる。資料には正しい情報が書いてあるに違いない。だがそれが新人にとって読めばわかる内容かどうかは別問題である。
このふたつの事例に共通するのは「正しいけれど、やさしくない」ということだ。説明に「やさしさ」が必要なければ機械に任せておけばいい。それを人間がやるところに意味がある。
説明する相手へのやさしさの量で説明の質は決まる。説明上手になりたいならば、「正しいかどうか」ではなく「やさしいかどうか」をぜひ大切にしてほしい。
著者情報
深沢真太郎さん
ビジネス数学教育家。数学的なビジネスパーソンを育成する「ビジネス数学」を提唱し、述べ1万人以上を指導してきた教育の第一人者。世界中の学校と企業で「ビジネス数学」が学べる世の中にすることを使命としている。日本大学大学院総合基礎科学研究科修了。理学修士(数学)。予備校講師から外資系企業の管理職などを経てビジネス研修講師として独立。大手企業・プロ野球球団・トップアスリートなどの教育研修を手がけ、一部企業とはアドバイザリー契約を締結し人材開発のサポートを行っている。さらにSMBC・三菱UFJ・みずほ・早稲田大学・産業能率大学などと提携し講座を提供。2018年には「ビジネス数学インストラクター制度」を立ち上げ、指導者育成にも従事している。テレビ番組の監修やラジオ番組のニュースコメンテーターなどメディア出演も多数。著作は国内累計25万部超。実用書のほか作家として小説も発表しており、多くのビジネスパーソンに読まれている。
BMコンサルティング株式会社 代表取締役/一般社団法人日本ビジネス数学協会 代表理事
国内初のビジネス数学検定1級AAA認定者/国内唯一のビジネス数学エグゼクティブインストラクター
>>ビジネス数学.com 〜深沢真太郎オフィシャルウェブサイト〜
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