営業インセンティブ、貯蓄する? 使っちゃう? 新卒1年目の「収入の使い方」の悩みにお金のプロが回答!【若手営業のマネーお悩み相談室】
営業パーソンにとって仕事のモチベーションの一つとも言えるインセンティブや賞与。たまにはパーッと使って遊びたいけど、手堅く貯金に回すべき?
今回は、「収入の使い方・貯め方」の基本を、マネーコンサルタントの頼藤太希さんにアドバイスしてもらった。
マネーコンサルタント/株式会社 Money&You 代表取締役 頼藤太希さん慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に株式会社Money&Youを創業し、女性向けお金の総合相談サイト『FP Cafe』、女性向けマネーメディア『Mocha』などを運営。マネーに関するコラム執筆、書籍の執筆・監修、You Tubeなど日本人のマネーリテラシー向上に努めている。著書は「はじめてのNISA&iDeCo」(成美堂出版)、「定年後ずっと困らないお金の話」(大和書房)など多数。日本証券アナリスト協会検定会員。ファイナンシャルプランナー(AFP)
【今回の相談】
今年から社会人になりました。給与は、月給25万円、営業のインセンティブが月1~5万円、ボーナスが40万円×年2回です。給与で貯蓄していれば、インセンティブや賞与は好きに使っていいのでしょうか?
まずは100万円を目標に貯蓄しよう
社会人1年目。給料の使い方に悩む人は多いと思います。貯金についてもきちんと考えている相談者さんはえらいですね!
今回の相談の場合、実家暮らしか一人暮らしかで貯蓄額の目安は大きく変わります。実家暮らしだと手取りの5割、一人暮らしだと2割が理想です。一人暮らしの場合、2割が難しいということがあるかもしれません。その場合でも1割は貯金したいところ。当面の貯蓄目標は6カ月分の生活費。住居費・生活費合わせて17万円くらいだと仮定すると、約100万円ですね。
相談者さんの場合、額面が月25万円なので、手取りは20万円くらいでしょうか。そうすると、生活費が17万円だとして、月々貯蓄に回せるのは3万円。100万円貯めるのに34カ月(3年弱)かかります。ちょっと時間がかかるので、ボーナスの半分以上は貯蓄に回したいところです。そうすれば、2年で目標を達成できます。
ちなみに、この「100万円」という金額は貯蓄の最初のハードルです。
「パーキンソンの法則」と呼ばれる法則をご存じでしょうか。これは、「人は時間もお金もあればあるほど使ってしまう」ことを表したものです。
たとえば、締切までの期間が長い仕事は、ダラダラとやってしてしまった経験はありませんか? これは、与えられた時間を最大限まで使ってしまっているということです。
お金もそれと同じで、あると使ってしまって貯まらない。100万円以上を安定的に貯蓄するのは、仕組みを構築しないと難しいんです。
有効なのが、「先取り貯蓄」です。給料をもらったら、まず貯蓄分・投資分を確保する。そしてそれ以外のお金で生活する。これが人間の性(さが)に対抗し、着実にお金を貯める基本的な方法です。
何も、趣味や交際費などに使ってはいけないと言っているわけではありません。お金はそもそも使うためにあるものですから、毎月の貯蓄分を除いたお金は何に使ってもOKです。
インセンティブは「自分磨き」という投資に使う
では、お金をどう使えばいいか? これを知るには経験が必要です。自分が何にいくら使うとどれぐらいの満足度が得られるのかが分からなければ、適切なお金の使い方を考えることはできません。
そのためにも、浪費することは実は大切な経験なんです。お金を使って満足したり、失敗したりといった経験がなければ、どこかで身の丈以上に散財してしまう可能性が高くなります。
相談者さんは営業職なので、賞与の他にインセンティブがあるとのこと。営業としての成果で稼いだインセンティブは「自分へのご褒美」と捉えて、パーっと使ってしまう人も多いでしょう。
お金がない人の習慣3:「せっかくだから」「自分へのご褒美」に使うお金が多い
問題なのは、予算を決めずに「せっかくだから」「自分へのご褒美」という理由でお金を使ってしまうことです。「仕事を頑張ったご褒美に〜~を買おう」、「せっかく旅行に来たんだから奮発しちゃおう」は予算内であれば問題ありませんが、際限なく行ってしまえばお金は無くなってしまいます。
お金がない人に共通する4つの習慣とその対策【連載:マネーの失敗学】より引用
浪費も大切な経験なので、否定するつもりはありません。しかし、質問を見るに収入の使い方に迷っているはず。
そこでおすすめしたいのが、「自己投資に回す」というインセンティブの使い方です。自分のスキルが上がれば、それによって稼ぎもどんどん大きくなりますからね。
とはいえ、やみくもにいろいろなセミナーや資格の取得に手を出すべきではありません。「投資」と名がつく通り、自己投資であってもリターンを考えて行うことが必要です。
仕事ではよく「PDCAを回せ」と言いますが、自己投資でも考え方は全く同じです。お金も時間も無限にあるわけではありませんから、まずかけられるお金と時間を決め、いつまでにどうなりたいかの目標を立てる(Plan)。お金をかけた後(Do)、必ず振り返りを行って効果を検証し(Check)、また次に生かすこと(Action)が求められます。
参考:MBAに英会話……意識高い系男子が陥りやすい「自己投資貧乏」という病【連載:マネーの失敗学】
私は、一番シンプルな自己投資は本を読むことだと考えています。ライフネット生命創業者の出口治明さん(現・立命館アジア太平洋大学学長)も、「人が成長するために必要なのは本・人・旅だ」と言っています。本は手軽に読めるし、費用もそれほどかからない。1500円くらいの投資で実際に成果を残した人の経験や教えが簡単に手に入るので、リターンがかなり大きいんです。まずは月5~10冊を目安に読んでみてはいかがでしょうか。
資格を取ったり英会話を学んだりするのであれば、無理して高いスクールに通う必要もありません。参考書やアプリ、安価なオンラインスクールが充実しているので、自分に合う方法を見つけてくださいね。
強制的に貯蓄する仕組みを活用し、お金を使う不安を軽減
最後に、貯蓄のことも気にしている相談者さんに向けてアドバイスを。オススメの貯め方は、「先取り」「自動」「強制」の仕組みを活用することです。
財形貯蓄、社内預金、自動積立式定期預金といった貯蓄やつみたてNISAなどの投資を利用すると、強制的に給与からお金が引き出され、貯蓄や投資に回すことができます。
お金がない人の習慣4:余ったら貯蓄する
お金がない・貯まらない人の多くは、収入が入ったら、まず使ってしまい「余ったら貯蓄しよう」という行動習慣です。これは「余ったら貯蓄」や「成り行き貯蓄」などと呼ばれる貯蓄法です。
反対に、お金を貯めている多くの人が実践しているのが「先取り貯蓄」。先取り貯蓄とは、収入が入ってきたらまず貯蓄して、残ったお金で生活することです。
お金がない人に共通する4つの習慣とその対策【連載:マネーの失敗学】より引用
貯蓄にも有効なやり方があります。「余った分を貯蓄に回そう」ではなく、強制的に貯蓄する仕組みを活用することが大事。その上で余ったボーナスやインセンティブを自分のために使うのは問題ありません。ぜひ積極的に、自分への投資もしていきましょう。
(豆知識)頼藤さんからのワンポイントアドバイス
ちなみに、なかなかお金が貯まらない……そんな方におすすめしている「貯める習慣」が3つあります。「財形貯蓄や社内貯金」「1000円からはじめるつみたてNISA」「ポイント投資」です。
(1)財形貯蓄や社内預金
これらは、引き出すときに上司の承認が必要となります。上司の承認を得るのは気持ち的にも大変ですよね。そうした心理的な抵抗感を利用して、着実に貯蓄していくわけです。
(2)1000円からはじめるつみたてNISA
生活費が3カ月分貯まったあたりで、少額をつみたてNISAに回すのもありです。本格的な投資を始めるのは6カ月分以上の生活費が貯まってからですが、相談者さんの場合、生活費の6カ月分貯まるには2年かかる計算なので、スタートが後ろ倒しになってしまいます。よって、月1000〜5000円程度でもいいので投資してみると、お金が増えるスピードが変わる経験を味わえると思います。
(3)ポイント投資
とにかくすぐにできる投資として、日常の生活で貯まった楽天ポイントやdポイント、PayPayポイントなどを投資に回すポイント投資もオススメです。元手がかかるわけではないので、ぜひ気軽にチャレンジしてみてください。
文/松田小牧
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