転職 Vol.1048

中途入社者のためのスムーズな有給休暇の「言い出し方」

新しい職場にも慣れてきて仕事も順調! そんな中途入社ライフを送っていたとしても、有給休暇の取得に関しては「言い出しにくい」と感じる人は多いのでは?

この記事では、転職後に有給休暇を取るときのお作法やスムーズな流れをレクチャーします。 今回は後輩のパターンを、新卒・年下後輩・年上後輩と設定し、それぞれへの接し方を解説していきます。

新しい職場・仕事で活躍するには何が必要?
転職1年目、なんでも相談室
本連載では、転職後のさまざまな壁を乗り越えて、新しい職場で活躍するためのコツをアドバイス! 入社直前の不安な気持ちから、入社後の仕事・人間関係のトラブルまで、転職後1年目に起こりうる「あらゆるお悩み」を取り上げていきます。

※本記事は『type転職エージェント 転職そのあとLABO』のコンテンツを一部編集の上転載しています

今回のお悩み

有給休暇を取得したいけど言い出しにくい…
相談したいのは、転職先の職場で初めて有給休暇を取るタイミングと、嫌がられない言い出し方についてです。

現在入社3カ月目です。来月、私用があり有給休暇を取りたいと思っているのですが、周りに有給休暇を取っている様子がなく、なかなか言い出しにくい状況です。

上司や同僚とも良好な関係を築けていますが、有給休暇を積極的に消化する風土はあまりないのかもしれません……。チームの空気を悪くすることなく有給休暇を取るにはどうしたらよいでしょうか?

「有休の取り方」に唯一の正解なし!環境と状況に合わせてうまくやろう

転職1年目、なんでも相談室

こんにちは、ねも姉です。

本日のお悩みは、会社員なら誰しも感じたことのあるお悩みではないでしょうか。有給休暇(以下、有休)は労働基準法で規定された労働者の「権利」ですが、実際は置かれている環境によって取得の仕方や難易度が大きく変わってしまう「現実」があるのも確か……。

「権利」と「現実」のバランスを取って、気持ちよく有休取得したいですよね!

が、しかし、結論から申しますと、この「有休言い出しにくい問題」には、「こうすればみんな有休を取れる!」という唯一の正解はありません

なぜなら、有休が取りやすい・取りにくい背景には、その会社や組織の風土、上司の考え方だけでなく、その職種ならではの業務特性や業界全体の仕組みなどさまざまな要因が絡んでいるから。

また、「言い出しやすい・にくい」には、ご本人の性格や周囲との関係性なんかも影響するでしょうから、本当に悩ましい問題ですよね。

ご相談者様が置かれている状況について詳しく知ることはできないので、今回は、有休取得を言い出す際の小技や事前の雰囲気作りのテクニックをいくつかご紹介したいと思います。ご自身の環境と状況に合わせて、試してみてくださいね。

と、その前に! 労働基準法と職務規定をチェック

スムーズな有休取得のノウハウの前に、まずは「どんなルールがあるのか」を知っておきましょう。

労働基準法では「最低基準」を定めている

中途入社者も含め、労働者は働いた期間に応じて有休を取得する資格があります。具体的には、法定労働時間を週40時間、月160時間以上働いた場合、「初年度:10日間」「2年目以降:10日間+1年ごとに1日ずつ増えて最大20日間まで増加」という付与率の基準が定められています。

しかしこれはあくまでも最低限の基準! この基準を守っていれば、実際の付与率や取得ルールは、労働環境や経営者のポリシー、労働組合との交渉などに基づいて企業が独自に決めることができます。

また、労働基準法には「有休を取得させる義務」も定められています。2019年の改正により「年に10日以上の有給休暇が付与されている労働者には、必ず5日取得させなければならない」というルールができ、違反した企業には罰則も定められています。

他にも労働基準法では、有休は最大2年間有効であることや、事前に雇用主への申請・承認が必要であることも定めています。詳しく知りたい方はぜひ厚生労働省のサイトをチェックしてみてくださいね。

実際のルールは「就業規則」で企業ごとに定めている

周囲に有休を取っている人を見掛けないとなると、自社のルールがよく分からなくて困ってしまいますよね。

ご自身が今、何日分の有休資格を持っているかは、入社時に交わした労働契約書や労働規程を確認すれば分かるかもしれません。企業ごとの就業規則や労働規程には、具体的な有給休暇の付与条件や日数、申請手続きなどが明記されています。それらが見つからない、見てもよく分からない時は、遠慮せず人事部などに問い合わせてみましょう。

ちなみに一般的には、中途入社者に対して「初年度は10日間」の有休が付与されることが多いようです。

上記した「取得させる義務」も企業は果たさなければならないので、有休取得推奨日を定めていたり、有休を取得していない社員に対して注意したりと、「社員を休ませる取り組み」もさまざまあるようです。

有休取得を言い出す際の基本

法律をおさえたところで早速、基本的な言い出し方、言い出しやすくなるコツを見ていきましょう。

1、早め(1、2カ月前)に言っておく

まずは基本中の基本。前もって予定が分かっている場合は、1、2ヶ月前から希望を出してしまいましょう。上司の立場になって考えても、早めに伝えられた方が安心ですし、自分としても「今週休みたい」より「来月休みたい」の方が言い出しやすいですよね。

企業によっては取得●日前に申請する必要があるなどルールを設けている場合もあるので自社の規定をチェックしてみてくださいね。

2、自分がいない間の準備をしてから言う

有休を言い出しにくい理由の一つに、「自分がいない間に何かあったらどうしよう」という心配があると思います。相手のために引き継ぎ準備をする予定は当然あると思いますが、「取得が決まってから準備」ではなく、「準備できているので取得する」の方が、言い出す際の気持ちは少し楽になるかもしれません。

もちろん、言い出しにくくなければそんなに前もって準備をする必要はないと思います(笑)

有休前にやっておきたい主な準備は次の5つです。

・業務の進捗状況を整理
・引き継ぎ相手へのネゴシエーション
・引き継ぎ資料の作成
・何か合ったときの代替案、連絡手段
・休みから戻ったあとの計画

業務内容や環境によってどこまで準備可能かは変わると思いますが、「もし自分が休んだ人をフォローする側だったら」と考えてみると、必要な準備が分かるかもしれませんね。

3、取得するタイミングを宣言しておく

チームのためにも自分のためにも、有休はなるべく業務に支障が出ないタイミングで取りたいですよね。取得しやすい状況が事前に把握できる場合は、そのタイミングで取ることを宣言しておくのはいかがでしょう?

例えば、「このプロジェクトが終わったら有休を取得します」など、プロジェクト単位で業務のスケジュールが決まるエンジニアやコンサルタントといった職種の方は特に使いやすい方法でしょう。

4、言ったほうが楽になるなら「理由」も言う

基本的には有休を取るのに理由はいりません。しかし、具体的な理由を伝えることで、上司や同僚が理解しやすくなるのは確かです。

その際、嘘の理由を伝えるのはNG! あとでバレて気まずい思いをしたり、次に本当の理由で有休を取りたいときにハードルが上がったりと、後々良いことはありません。

趣味やプライベートのことも気軽に話せる職場なら、日常のコミュニケーションとして「もうすぐ弟が結婚するんですよ」「絶対行きたいラーメン屋を見つけたんです! ちょっと遠いんですけどね」といったように話題にしておくと有休取得も言い出しやすくなるはず。

5、同僚の有休取得を歓迎する

一人が休むと周囲に負担が掛かるタイプの業務を担っている場合、なかなか休みたいと言い出しにくいですよね。しかしそこは「お互い様」とも言えます。

まずは他の人が有休を使うときに、嫌な顔せず歓迎ムードを出す。その積み重ねで、自分も言いやすい雰囲気を作ることができるのではないでしょうか。

少し長期的な作戦にはなりますが、中途入社者だからこそ社内の雰囲気を変えるきっかけになれるかもしれませんよ?

6、休み明けは感謝を伝える

次の有休取得につながる大事なアクション、それが「感謝」です。

上司や同僚に感謝の気持ちを伝えるのは、「有休を取得することが決まったとき」と「有休から仕事に復帰したとき」の2回!

労働者の権利だからといって、休み明けに何も言わず「はい、いつも通り」という態度はいただけません。自分がいない間、仕事をフォローしてくれた上司や同僚に「ありがとうございました!」ときちんと伝えましょう。

それから、自分が休んでいる間の進捗状況を確認したり、引き継ぎを受けるようにしましょう。「この人は有休をとってもちゃんと仕事をまわせている」と周囲に認めてもらうことで、次回の有休取得もスムーズになるはずです。

試すかどうかはあなた次第!?超小手先テクニック

「頭では分かっていてもやっぱり言い出しにくい」という方のために、「本質的ではないかもしれないが言い出しやすくはなりそう」な小手先のテクニックをピックアップしてみました。うまく使えればスムーズに有休を言い出せるかも?

普段から有休の話題を口にしておく

いざ自分が有休を取りたいというときに、突然「あの~」というのは勇気がいるもの。しかし、まったくその予定がないタイミングで話題にするのは意外とすんなりできるのでは?

中途入社してしばらくしたら、「●●さんってどういう時に有休を使ってますか?」「こんな天気の日は有休取って昼寝したいですね~」など、さりげなく話題にして社内の温度感を探ってみてはいかがでしょう?

「あの人はこういうとき休む人」というキャラ付け

社内で「あの人は●●のときに有休を使う人」と認知を広めておくことで、休みやすい空気を作る作戦です。例えば私の同僚に無類のゲーム好きがいるのですが、彼は新作ゲームの発売日に合わせてよく有休を取っています(笑)

中途入社の自己紹介の時に、趣味や休日の過ごし方を盛り込んでおくのもよいでしょう。「ゲーム好き=新作ゲーム発売日に徹夜でプレイ」、「旅行好き=飛び石連休をつなげて長期旅行」、「スポーツ観戦好き=見逃せない一戦がある」など、あなたが休みたい理由を周囲が認知してくれたら、一気に言い出しやすい空気になるのでは?

上司の有休のときに「私も」と乗っかる

上司や同僚に何か言われるのではないか……と不安で言い出せない場合、上司や同僚が有休取得するのを知ったタイミングで乗っかってみるのはいかがでしょう?

おそらく「私は休むけど君はダメだよ」なんて言える上司はいないでしょう。

言い出すタイミングは、上司の有休取得日が知らされた時もしくは上司が有休から戻ってきた日がベストです! 「●●さんこの日お休みされるんですね! 実は私も●月●日に有休を取得したいと思ってまして……」と笑顔で切り出すのがおすすめです。

まずは半休を取る

企業によっては、有休を半日や時間単位で取得できる制度を設けているケースがあります。いきなり丸一日は気が引けると感じる場合は、そういった制度を利用してみるのもおすすめです。

まずは社内にそういう制度があるかチェックしましょう。

まとめ

基本から小手先まで、いろいろアイデアをお伝えしてみたものの、多くの場合、言い出しにくいのはただの杞憂で、言ってみると意外とすんなり通るなんてことも大いにあり得ます。

有休を取得したいと言われた上司側の立場になってみると、気になるのはあなたが休んでいる間に業務がちゃんとまわるのかということ。逆に言えば、事前の引き継ぎ不足や、休み明けの「休みボケ」を注意されることはあっても、休むこと自体への注意・叱責はあってはならないことです。

普段からのコミュニケーションを心掛けて、事前の準備をすれば有休を言い出すのはこわくありません! 皆さんの転職先での”有休デビュー”を応援しています。

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相談室の人 ねも姉転職情報誌の編集・ライティング、求人広告営業、新卒採用人事、転職サイトのマーケティングなど、さまざまな立場で人材業界にどっぷり浸かり15年超。転職者や人事、経営者など300人以上への取材などで得た知識や自身の転職経験を生かして、転職ノウハウや転職後の活躍応援コンテンツを発信中。最近は小一の息子の忘れ物癖が直らないのが悩み

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