「恐怖心を越えた先に、新しい自分がいる」己の限界に挑戦したい営業マンに観てほしい映画『ザ・ウォーク』【連載:シネマセラピー】
映画ソムリエ 東 紗友美1986年6月1日生まれのA型。あだ名は“ガシヒー”。広告代理店勤務の後、フリーランスの映画コメンテーターへ転身。年間400本以上の作品を鑑賞し、映画関連のテレビ番組に出演する一方で、新聞や雑誌、Webなどへの執筆も行う。また、映画公開イベントのMCとしても活動し、映画業界を盛り上げるため多方面で活躍中。『ヒガシアター。』: http://higashisayumi.net/
今月の相談
できないと思うことに対して挑戦したい気持ちがあるものの、実行に移すまで、気持ちがなかなか追いつきません。自分の限界をすぐに決めつけてしまう性格なんです。そんな後ろ向き気味の性格にカツを入れるべく、背中を押してくれるようなパワフルな映画はありませんか?
(20代/出版関係営業)
今月のお悩みにピッタリなのはこの1本!
『ザ・ウォーク』
来たる2016年、自分の殻を破りたくてウズウズしている、新しい自分を目覚めさせたい、そんな気持ちを悶々と抱えている人に朗報!自分に100万馬力のエンジンをかけてくれる映画を紹介します。
「できないと思っていたことを、やってみよう!」
そう思えるようになる、まさに「映画の力」を感じる作品です。
まず、注目すべきは、本作が“ワイヤー・ウォーカー”と呼ばれたフィリップ・プティの実話を基にした映画だということ。舞台は1974年のNY、当時、世界一の高さを誇った摩天楼「ワールド・トレード・センター」です。そう、2001年9月11日に崩れ落ちた、高さ411m、地上110階のあの2塔のタワーの間を、ワイヤーロープたった一本でつなぎ、命綱なしの空中闊歩(=綱渡り)に挑んだ男の話なのです。
不可能と思える挑戦を描いた作品で、手に汗かきまくりの2時間です。ジムやランニングに行くより汗をかけちゃうかも……。
そして驚くべき事実がもう1つ。こんなヤバ過ぎる挑戦なのに、その時の記録を映した動画が1本もないんですって!! だからこそ、このたび、ハリウッドを代表する映画監督、ロバート・ゼメキス氏が映像化に挑んだわけであります。
主人公が恐怖を抱えながらも、それ以上に「挑戦したい」という気持ちにグイグイ突き動かされ、ちょっぴりクレイジーになっていく様子、これを観ればきっと後ろ向きな自分の背中を押してくれるはずです。
ココにも注目!
情熱が恐怖心を消し、周囲の人間を巻き込んでいく
新年早々、心拍数上げまくりのこちらの映画。
見どころも盛りだくさんなだけに、私なりに2点セレクトしてみました。
見どころ【1】
体験型映画!!コワ過ぎるのに美し過ぎる、心揺さぶる映像
上記の写真からも分かるように、強烈な天空世界の映像は圧巻。綱渡りのシーンの迫力は、多分この記事を読んでくれているあなたの想像の何倍もあるので、ぜひ、3Dでご覧ください。
当然ながら、現在のNYにワールド・トレード・センターは存在しないのですが、綱渡りのCGがリアル過ぎてアメリカでは上映中に具合が悪くなり、途中退出する人もいたとか……。ホラー映画じゃないのに、試写室では「ひゃぁ」、「ヒィ」の声が漏れまくりでしたよ。
しかーし、東京タワーの展望台でも足がすくんで涙ぽろりした、生粋の「高いところ苦手人間」の私が、この映画では恐怖を越える新感覚を味わったんです!それは……。
「超コワイ。でも、この美しさは観ないともったいない!」という感覚。
何度も目をつぶってしまったし、ブルブルっと鳥肌が立ったのも事実だけど、カメラアングルが変わり違う景色が現れるたび、普段は決して味わえない、出会ったことのない“天空の世界”の美しさにハッとしました。私自身、恐怖心を越え、新しい自分に出会えた気がしました。こうやってフィリップも魅了されたのでしょうか。
見どころ【2】
綱渡りシーンだけじゃない!「スパイ映画」的な要素も楽しめる、物語の面白さ!
綱渡りシーンばかりが取り上げられがちなこの作品。でも、私としては、物語にも注目してほしいんです!
ワイヤー・ウォーカーのフィリップ・プティは、幼少期に観たサーカスで綱渡りと出会います。その後、独学とサーカスでの修業経験を経て、大人になってからは、フランスの街角で綱渡りのパフォーマーとして日銭を稼ぐように。そんなある日、あの“2塔のビル”の存在を知り衝撃が体中に走ります。
そして、違法と分かっていても、取り憑かれたように無謀な挑戦を実行に移していきます。当然、ビルの許可なんか下りない。だから無許可でやるしかない。そこで、自分の熱い思いを仲間(共犯者)へ語り、周囲の人の協力を得てゲリラ的に綱渡りを実行しちゃいます。
何度も言いますが、これ実話なんです。
フィリップと仲間たちは、2塔のタワーの間の正確な距離を測るため、報道陣に変装したり、大きな荷物の中に隠れて深夜のビルに忍び込んだり。「え、実際にやっちゃったの?」と思うような、スパイ映画顔負け&“綱渡り感”満載な物語が進んで行くのです。
何が、無謀な挑戦へと彼を突き動かしたのか……。それは映画館でぜひ確かめてほしいのですが、私は、こんな無茶な挑戦を描いた映画だから学べることがあり、それが質問者さまのお悩みのアンサーだと思うんです。
その答えと言うのは、「クレイジーなぐらいにのめり込んでこそ、周囲の人間を動かし、巻き込むことができる」ということ。
これ、仕事の上でも大変参考になります! 熱意が人を動かす時ってありますよね? そんな瞬間をこの映画ではたくさん垣間みることができるはず。
人生は1度きり。後ろ向きでいるなんてもったいないです。毎日を行動的に、大切に。そんな気持ちを映画から感じとれたなら、観賞後の足取りもふわっと軽くなると思いますよ!
では、背中を押してほしいアナタに『ザ・ウォーク』を処方します。これでアナタのお悩み、解決しますように。
そして……。実は、今回の掲載をもちまして「映画でお悩み解決☆シネマセラピー」は最終回となります。これまでご覧頂いていた皆さんとお別れするのは、大変寂しいですが、いつかまたどこかで、お目に掛かれればと思います。
それでは皆さま、「See you again!!」(東紗友美)
【今月の1本】
『ザ・ウォーク』
原題:『The Walk』
原作:『TO REACH THE CLOUDS』 by フィリップ・プティ
監督:ロバート・ゼメキス
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ベン・キングズレー、シャルロット・ルボン、ほか
制作年/国:2015年/アメリカ
公開日: 2016年1月23日(土)全国ロードショー
『IMAX3D』上映も決定!
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
URL:http://www.thewalk-movie.jp/
RELATED POSTSあわせて読みたい
「数値の目標なんて、今をつまらなくするだけでしょう?」映画監督・紀里谷和明氏が明かす“本能的”仕事論
「勝つことに必死になってはいけない」日本初のプロゲーマーが辿りついた強者の法則【スポプロ勝利の哲学】
仕事に張りを感じない営業マンに観てほしい“デス・ゾーン”疑似体験映画【連載:シネマセラピー】
ボンドの強さは事前準備のおかげ!?『007 スペクター』に学ぶ、デキる営業マンの立ち振る舞い【連載:シネマセラピー】
150年の歴史ある江戸前ずしランチで特上の“ネタ”補給【ザ・営業食】