中島健人×山崎育三郎「現場を“ぬるま湯”にしてはいけない」2人のプロが考える「チームで働く」ことの本質

※この記事は姉妹媒体『Woman type』より転載しています

その場にいるだけで、空気がパッと華やかになる。
アイドル界のプリンス・Sexy Zone中島健人さんとミュージカル界のプリンス・山崎育三郎さん。

中島健人×山崎育三郎「現場を“ぬるま湯”にしてはいけない」2人のプロが考える「チームで働く」ことの本質
そんな2人が、自身の魅力の一つであるきらびやかさを潜めて挑戦したのが、映画『おまえの罪を自白しろ』だ。

幼い孫娘が誘拐され、隠された「罪」の自白を要求された政治家一族を描いたスリリングな社会派サスペンス。中島さんと山崎さんは、本作が映画初共演となる。

「華があり、熱い」二人が魅せたプロフェッショナリズム

互いを「育さん」「ケンティー」と呼び合うなど、取材中に垣間見えたのはその親密さ。それぞれ相手にどのような印象を抱いていたのか聞いてみると、「華がある。でも、熱い」と口をそろえた。

「以前から突出したオーラがある方だと思っていました。とてもエレガントですよね。

でも、バラエティー番組で共演した時の様子や撮影中の姿を見て、内側には熱い部分を持っているんだと感じ、よりすてきだなと思いました」（中島さん）

中島さんの言葉にはにかみつつ、山崎さんも負けじと次のように語る。

「ケンティーは、華やかで品のあるアイドル。本作の中に壁に寄りかかるシーンがあるのですが、あまりにも絵になっていて『キャー！ ケンティー！』と思いました（笑）。まさに王子様ですね。

だけど、本当はストイックで中身はすごく熱い。何事にも120％で挑んでいて、どこにいても誰に対しても気配りができる人だと感心しました。

さらには遊び心も持ち合わせているので、最強のエンターテイナーなんですよ。一緒に仕事をするだけで、自然とケンティーを好きになっていく。自分もそういうスタンスでありたいと思わされますね」（山崎さん）

監督からの信頼と共演者からの刺激が、作品の質を高めた

本作で、中島さんは政治家一族の宇田家の次男・宇田晄司を、山崎さんは誘拐事件の犯人を追う刑事・平尾宣樹をそれぞれ演じた。

晄司の父であり国会議員の宇田清治郎を演じる堤 真一さんをはじめ、金田明夫さんや角野卓造さんなどベテラン俳優陣が集結した本作で主人公を務めた中島さん。しかし、意外にも「プレッシャーはなかった」と話す。

「自然に演じられた、という感覚が大きいですね。ベテランの俳優さんが多い現場だったからこそ、自分を含めた若い世代を強く印象付けられるチャンスだと思ったんです。なので、ベテランの方たちの演技に平常心で向き合うことを大切にしました」（中島さん）

対して、山崎さんは平尾を演じる上での苦労を語った。

「平尾はバックボーンがあまり描かれていない役柄なんですよ。一見クールな人間で感情が表に出てこないので、彼が何を背負ってこの仕事をしているのか、胸のうちにどんな熱さを持っているのか、『自分なりの正義』を考えながら演じました」（山崎さん）

その役作りに向き合う姿勢には、水田伸生監督の言葉が大きく影響していた。

初めての打ち合わせの時、山崎さんは水田監督に「平尾は本作の正義であり、観客は平尾と同じ目線でこの作品を見る」と伝えられたと明かす。

重要な役割を預かった山崎さんだが、水田監督からは「役者への信頼を感じた」と振り返った。

「水田監督はすごく役者に寄り添ってくださる方だったので、伸び伸びと演じることができました。

また、知識豊富で聡明な方なので、物事の本質を見抜き、常に完成像が見えた状態で撮影に向かっている安心感がありました」（山崎さん）

その言葉に、中島さんも同意する。

「その人本来のお芝居を信頼してキャスティングしてくださっているからこそ、ファーストテイクやセカンドテイクでOKが出ることが多かったですね。『あなたのそのお芝居が正解なんだよ』と言ってもらっている感覚がありました」（中島さん）

制作陣の信頼に、演技で応えた中島さんと山崎さん。撮影中は、互いの「プロの仕事」からも刺激を受けたと話を続ける。

「育さんにはクールな役がとても似合うと思って見ていたのですが、それは声での感情表現がプロフェッショナルだからだと今回の撮影を通して気付きました。

ミュージカルで感情を乗せて歌ってきた回数が圧倒的に多い育さんだからこそできる『魅せる』セリフの言い回しが素晴らしかったですね」（中島さん）

ミュージカル俳優として確かなキャリアを持つ山崎さんの「声」に魅せられたと言う中島さん。一方、山崎さんが注目したのは中島さんの「目」だという。

「映画での共演は初めてでしたが、ケンティーの集中力には圧倒されるものがあります。カメラが回った時、ぐっと目力が強くなる。

その切り替えの速さと熱量の高さが、ケンティーのプロたるゆえんなんだろうなと思いました」（山崎さん）

良い仕事をするために「チームを組む意味」を考える

アイドルとして、ミュージカル俳優として。映画やドラマに限らず、さまざまな現場で多くの人たちとチームを築きながら仕事をしているという共通点を持つ2人。

最後に、チームでいい仕事をするために心掛けていることを、それぞれ教えてもらった。

「現場をぬるま湯にしないことですね。

『その人らしく』『その人のペースで』というのももちろん素晴らしいけれど、『なぜチームを組んでいるのか』を考えて動ける人でありたい、というのが僕の考えです。それはどのチーム、どの現場にいても変わりません。

チームで成果を出せる人って、表面上はさらっとやってのけているように見えても、裏では超汗をかいていると思うんです。僕自身、幼少期にやっていたサッカーでも、学生時代の合唱コンクールでも、今の活動でも、そう思って前衛に立ってきました。

チームの全員が血流を上げて良い仕事をするためにも、これからも前衛に立ち続けて場の温度を上げていきたいですね」（中島さん）

中島さんの言葉にうなずきつつ、山崎さんも自身が大切にしていることを語った。

「どんな環境でも『なぜ自分たちが集まったのか』『どのゴールに向かっているのか』は共通認識を持っておきたいと思っています。

時には『ちゃんと同じゴールを目指せているか』を確認し合いながら、観てくれる人のために面白い作品を作っていきたい。これは、ミュージカルで映画でも変わらない考えです」（山崎さん）

それぞれが唯一無二のプロフェッショナルでありながらも、他者と共に働く意味を問い続け、大切にする。そんな2人だからこそ、周囲から信頼されるのだろう。

2人の言葉は、チームで働くことの意義を私たちに教えてくれた。

中島健人さん
1994年、東京都出身。2011年、Sexy Zoneのメンバーとしてデビュー。アイドルとして活躍する一方、『スクラップ・ティーチャー　教師再生』で連続ドラマ初出演を果たすと、その後『大切なことはすべて君が教えてくれた』、『生まれる。』『ドロ刑-警視庁操作三課-』、『未満警察 ミッドナイトランナー』、『彼女はキレイだった』など俳優としても活躍。主な映画出演作に『劇場版 BAD BOYS J 最後に守るもの』、『銀の匙 Silver Spoon』、『黒崎くんの言いなりになんてならない』、『心が叫びたがってるんだ。』、『未成年だけどコドモじゃない』、『ニセコイ』など ■YouTube ■X（旧Twitter） ■Instagram

山崎 育三郎さん
1986年、東京都出身。大学在学中にミュージカル『レ・ミゼラブル』のマリウス役に抜擢。以後、数々のミュージカルに出演するほか、映画、ドラマなど多岐にわたり活躍。主な出演作にTBS系テレビドラマ『下町ロケット』、NHK連続テレビ小説『エール』、大河ドラマ『青天を衝け』、フジテレビ系『イチケイのカラス』、『リエゾン -こどものこころ診療所-』、映画『ラジエーションハウス』など ■YouTube ■X（旧Twitter） ■Instagram

取材・文／阿部裕華　編集／秋元 祐香里（編集部）

作品情報

『おまえの罪を自白しろ』2023年10月20日(金) 全国公開

政治家一族の宇田家の次男・宇田晄司（中島健人）は建築会社を設立するも倒産し、やむなく政治スキャンダルの渦中にいる国会議員の父・宇田清治郎（堤 真一）の秘書を務め、煮え切らない日々を送っていた。そんなある日、一家の長女・麻由美の幼い娘が誘拐された。

犯人からの要求は身代金ではなく、「明日の午後5時までに記者会見を開き、おまえの罪を自白しろ」という清治郎への脅迫。それは決して明かすことが許されない国家を揺るがす“罪”だった……。

権力に固執し口を閉ざす清治郎に真っ向から対立する晄司は、タイムリミットまでに罪に隠された真相を暴き、家族の命を救うことができるのか！？

警察×マスコミ×国民を巻き込み、巨大な闇に切り込む前代未聞のタイムリミットサスペンス！

出 演： 中島健人　堤 真一 池田エライザ　山崎育三郎　中島 歩　美波 浅利陽介　三浦誠己　矢柴俊博　柏原収史　中村歌昇　佐藤恋和　アキラ100%　山崎 一 尾美としのり　池田成志　橋本じゅん　春海四方　小林勝也　菅原大吉　升毅　平泉 成 尾野真千子　金田明夫　角野卓造 監 督： 水田伸生 脚 本： 久松真一 原 作： 真保裕一『おまえの罪を自白しろ』（文春文庫刊） 主題歌 ： B’z「Dark Rainbow」（VERMILLION RECORDS） 配 給： 松竹 （C）2023『おまえの罪を自白しろ』製作委員会