ひと足先に選ぶ次世代のMVE : 服部恭之
「CPUやOS、ERPなどの業務アプリケーションや検索エンジンは、すべて欧米企業がデファクトスタンダードを握っています。日本のIT産業が世界を相手に戦うためには、どんな企業にも役に立つ標準的なソフトウエアを作る必要があります。それは製品でもいいし、SaaSのような形でもいい。誰かが、それをやらなければいけないと思ったのです」 コネクティ社長の服部恭之は、起業にかけた思いをそう語る。確かに、日本では個別企業向けのSIが大きな比重を占め、国産の製品は苦戦が続いている。ユーザー企業の側も数年に一度のサイクルで、膨大なコストと時間をかけて情報システムをバージョンアップすることに疑問を持ち始めている。その点、開発済みのソフトウエアを複数の企業で利用するSaaSは潜在的なパワーを持っている。 服部は1998年に大学を卒業してソニーに入社した。配属先は、技術とは一見縁遠い人事部門である。「当時、ソニーには1万人以上の新卒応募があり、短い選考期間のなかでは1人当たりにかける時間が少なくなります。もっとじっくり人材を発掘することができないだろうかと考えて、インターンシップに注目しました。日本ではまだなじみのない制度だったので、海外事例をかなり調べました。この分野に関しては、誰にも負けないくらい詳しくなりましたね」 こうしてソニーはインターンシップを導入したのだが、その応募者も増え続けるなかで、服部は次第にジレンマを抱えるようになった。「リアルの仕組みには限界がある」。ITで何かできないかと考えて、『StudentsGate.com』という学生向けの会員制サイトをスタートさせた。服部がインターネットの本質に触れたと感じたのは、このときである。 ?「作る場」としてのインターネットの可能性? 「StudentsGate.comは直接採用を目的とするサイトではなく、学生のための情報交換や議論の場です。国内外含めて毎年5万人ほどの学生が登録していましたが、彼らのパワーに驚きました。こちらが決めなくても、みんなでルールを決めながらさまざまなプロジェクトが立ち上がり、コンテンツが成長していく。Web2.0という言葉もなかった時代ですが、そうした動きがサイト内で広がっていたのです」 時間と場所の制約にとらわれることなく多くの人たちが参加する、「作る場」としてのインターネット。そこに大きな可能性を見た服部は、次に『Generator』というイントラ環境で、社員がコラボレーションを推進するシステムを作り始めた。「大きな目的は生産性の向上。CMS(ContentsManagementSystem)とSNS、ブログの3つのシステムで構成されていて、同じ専門性を持つ社員同士が知り合って、プロジェクトをネット上で立ち上げていくような使い方を想定していました」 もともと事務系で採用された服部だが、こうしたシステム構築の企画や要件定義を行っていくなかで、次第に技術への見識と理解を深めていったという。コネクティ創業時から二人三脚で事業を進めてきた藤田朋晴(現・コネクティ副社長)や、富田新、若狭正生といった創業メンバーともその頃出会った。 その後、服部は商品企画やB2B事業部門の戦略を担当。店舗など人の集まる場所にディスプレイを置き、電子広告を表示する事業などを担当した。「電子広告事業は単体の製品で勝負するのではなく、ディスプレイやセットトップボックス、ネットワーク、配信システムなどをそろえたトータルソリューションが必要になります。ハードウエアやソリューションのことをほとんどゼロから勉強しました。そこで感じたのは、海外のベンチャーのすごさです」 そんな経験が、服部の起業家マインドを呼び起こしたのかもしれない。PCに届いた一通のメールが目にとまった。タイトルは「1人シリコンバレー創業プロジェクト募集」。パッケージソフトで急成長するワークスアプリケーションズが中心になって実施した初の試みで、狙いはプロ経営者の発掘と支援だ。投資額の上限は1億円で、ベンチャー支援としては非常に大規模なものである。服部は「他社はどうやって事業をスタートさせるのだろう」という興味から、説明会に参加した。そこでワークスの創業者たちに接して、チャレンジスピリットに火がついたという。 |