ひと足先に選ぶ次世代のMVE : 猪子寿之
自社開発のモノづくりを世界に発信したい インターネット業界で起業した猪子は、既存事業の拡大や新エンジンの開発を進めると同時に、事業領域をハードまで含めた情報産業全般へと拡大している。これは創業の目的達成に向けたステップでもある。 その一環として、チームラボは2007年夏、KDDIの「au design project」から2種類のケータイの新しいコンセプトモデルを発表した。 ケータイのボタン操作は、電話をかけたりメールをするために仕方なく行うものだ。しかし同社は、インターフェースの概念を変えたいと、ハードとアプリケーションを連動させた開発にチャレンジし、ボタンを押すこと自体が楽しいという付加価値をつけた。 テクノロジーに裏付けられたアイデアとデザインは大きな反響を呼んだ。昨年12月には「第11回文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門審査員推薦作品」に選出されている。 「日本の家電業界がバブル崩壊後に地盤沈下してしまったのは、文化輸出が不足していたからだと思います。アメリカのハリウッド映画やヨーロッパ各国の芸術しかりで、文化の輸出量が多いと、必然的にその国の産業の付加価値は高まるのです」 すでに日本からは、マンガやアニメ、古来の伝統などが世界に発信されている。だが、猪子は「ウォークマン」のように世界の人々のライフスタイルを一変させる商品・サービスの開発はエンジニアにしかできない文化輸出だと考えている。 世界中の人々から「ライフスタイルの生みの親」と呼ばれたとき、猪子は“技術立国日本の再生”に貢献できたと胸を張って言えるだろう。 |