ひと足先に選ぶ次世代のMVE : 篠原俊一
フューチャー初のオープンソースを公開 従来の開発手法やノウハウにとらわれることなく、幅広く最新・最先端の技術動向にも視野を広げて試し、自身の新しいスキルとして確立していく---。ここに篠原ならではの柔軟な姿勢と自由な発想がある。何より「Rubyとの相性が良いみたいで、自分が直感でやりたいと思ったことがサクサクできる」のだという。業界標準とまでいわれるJavaから離れ、使いやすい言語と精度の高いテスト駆動開発を組み合わせ、2006年9月、篠原が同社の加藤究氏と開発した『AP4R(Asynchronous Processing for Ruby)』をオープンソースとして公開したのである。 AP4Rは既存のWebアプリケーション・プラットフォームに、非同期処理を追加するメッセージング・ライブラリだ。システム全体の負荷を平準化しながら非同期処理が行えるため、素早いレスポンスが可能になる。まさに数多くのプロジェクトでさまざまな課題解決に取り組み、実用面や機能面に目を向けながら独自の開発手法を活用してきた篠原らしいライブラリがここに実現した。 「これがゴールではありませんが、機能の1つをモデルとしてカタチにすることができました。自分が活用してきた言語と手法が、有益な結果に結びついたことは大きな自信になりました」 実はAP4Rをオープンソースとして公開することは、同社にとって前例のない試み。そもそも自社で開発された独自のライブラリは自社だけが優先利用できるよう蓄積しておくのが“常識”だ。 「AP4RはRubyやその他多くのOSSがなければ実現できなかったライブラリです。そして、幅広く利用してもらえたり、意見やフィードバックをもらえたりと、多くの利点があるため、AP4R自体もOSSとして公開したいと考えました」 2007年に入って、篠原はRuby関連のカンファレンスや展示会に出席して講演なども行っている。また、彼が把握しているだけでAP4Rはすでに、イギリスやアメリカのSNSベースのサービス企業など、複数の企業に採用されている。 現在の興味は、コモディティH/WとOSSを用いた分散環境を実現すること、そして“楽しい”システム構築に自らが貢献していくことと話す篠原。物理学者からプログラマーへ転身して間もなく5年を迎える彼が目指すフィールドは、社内外から熱い注目を集めている。 |