ひと足先に選ぶ次世代のMVE : 杉山 竜太郎
近年、インターネットで動画を楽しむ人は増えているが、動画を手軽に編集できる環境が十分整っているとはいえないのが現状だ。そんな中、高速映像処理エンジンを採用し、従来のイメージを打ち破る画期的な動画編集ツールが発表された。LoiLoが2008年8月にリリースした『LoiLoScope』だ。 これは、Web上で動画や音楽、写真のサムネイルをドラッグ&ドロップするだけで、シンプルかつ直感的に動画を編集できるというもの。サムネイルを好きな方向に投げて仕分けしたり、マグネット機能でひとまとめにしたりと、あたかも机の上で写真を自由に並べ替えながら作業しているような使用感が特長だ。出来上がった動画はワンクリックで『YouTube』に投稿することもできる。 この『LoiLoScope』開発の指揮を執ったのが、LoiLoの杉山竜太郎だ。杉山がデザインとPMを担当し、弟・浩二がエンジニアリングを担当。2人は役割を分担し、バランス良く業務が進められるよう、自分がすべきことをまっとうしている「僕は常に走り回っている孫悟空で、弟はそれを手のひらの上で走らせている観音さまのような存在」と杉山は言う。そんな杉山も、スーパークリエータとなるまでには、就職活動の失敗など紆余曲折を重ねてきた。 好きなことをやり続けたゲーム・デザイナー時代 日本大学芸術学部・映画学科映像コースでアニメーションCGを専攻していた杉山は、主にビデオ編集とコンポジット(映像のデジタル合成)を学んだ。 「僕はバックパッカーだったので、世界中どこにいてもできる仕事がしたかった。手に職を付けるためにも、日本が世界で成功しているゲームのクリエーターになりたいと思いました」 だが、大手ゲーム会社への就職に失敗。1999年に大学卒業後、テレビの制作会社でアルバイトを始めるが、あまりのつらさに3カ月で音を上げた。それなら好きなことをやろうと、クラブで映像を流すVJ(ビジュアル・ジョッキー)のアルバイトを始めた。思いがけないチャンスが訪れたのは、そんな折のこと。セガのゲーム・クリエイター水口哲也氏と出会ったのだ。「今度うちの会社に遊びに来て」と誘われ、杉山はさっそくセガを訪問。「何でもいいからバイトさせてください」と頼み込んだ。 新しいアルバイト先となったセガのゲーム開発会社CS4研 (後のUGA)は、「イノベーティブなモノを創りたい」という機運に満ちあふれていた。そんな職場での仕事を失いたくない一心で、杉山は猛然と仕事をした。仕事が一段落しても手を休めず、「何かすることないですか?」と聞いて回った。「ゼロからキャリアを積むのって、かなりエネルギーが要る。何かしていないと辞めさせらる、とにかく仕事を見つけなくちゃと必死でしたね」と当時を振り返る。 |