とにかくインターネットが大好きな人
国内でもブログが成長をはじめた2003年。いち早く個人向けブログサービスを提供し、そのノウハウやシステムを活かした法人向けブログサービスを相次いで展開したのがドリコムだ。その後、創業わずか4年で東証マザーズへと上場を果たしたのも記憶に新しい。そのドリコムを学生時代に起業し、ブログビジネスのパイオニア的存在として語られることも多いのが、代表取締役の内藤裕紀氏だ。斬新なWebサービスを次々と展開していくドリコムにおいて、必要とされるエンジニアの資質を内藤氏はこう語る。
「インターネットが好きということが前提です。新サービスがまったくゼロから発生することは少なく、既存サービスを組み合わせたり、加工をしたりすることで生まれることが多いですからね」
あのGoogleでさえ、Webサービスの基本中の基本ともいえる検索エンジンから 発展してきた。まさに既存のサービスを知り尽くすことが新サービス開発への第一歩。そのためにも、“好き”であることは大きなアドバンテージとなるのだ。
それに加えて、ドリコムのエンジニアに必要なのは「プログラミングをはじめとした確固たる技術力を持っていること」だと内藤氏は語る。
「既存のプロジェクトでありがちな、プログラミングができないマネジャーというのは通用しません。マネジャーがエンジニアよりもプログラミングスキルが低いようだと弊社では厳しいですね」
ドリコムの新サービスは、少人数で素早く、とりあえず形にしてしまうことが多いため、仕様書やスケジュールがないことも当たり前。このような環境では“工数管理をするだけのマネジャー”は必要なく、自身でもシステム構築ができるようなスキルを持っていなければならない。また、サービスの質を判断したり、開発期間をマネジメントしたりするためには、自身がその技術をよく知ってないと指示も出せないのである。
仕様書はいらない、完成形のイメージを持て
続けて内藤氏は現場で求められる具体的な能力について、「瞬時に完成形をイメージできることと、荒削りでもいいから短期間で形にできることだ」と語る。
「料理に例えてみましょう。レシピ(=仕様書)を書いて、それに基づいて食材を買って野菜を切って、料理(=サービス)を作るのが従来のシステム開発だとすると、ドリコムは“冷蔵庫のなかにあるもので気の利いた一品を作れる人”。味が薄ければ、できあがったあとに調味料を足せばいい。それでもおいしい料理を作れる人のほうが、料理ができるという意味では上なわけです」
最近のWebサービスでは、アイデアがひらめいてからサービスが開始するまでの期間は、1カ月後でも遅いほどだ。そこでサービスとしてとりあえず形にできる能力が必要となる。あとはリリースしてからユーザーのフィードバックで改善していけばいいし、そのほうがよりユーザーにフィットしたサービスが提供できるだろう。
また、エンジニアといえども自分の仕事をビジネスとして捉えられることが重要だ。
「コンピュータのスキルが高ければいいかというと、そうではありません。ビジネスは、収益が上がらなければ成り立ちません。選択と集中で事業ドメインを明確に設定することと、ビジネスには投資して成長して利益拡大したうえで投資したコストを回収する必要があること。エンジニアといえども、これを念頭に置く必要があります。それをふまえて、撤退すべきだと思ったら自分で作ったものをつぶせる勇気、サービスを中止する勇気を持っていることが大切です」
自分の仕事のビジネス的評価には興味がないというエンジニアも多いものだが、それがどう形になって成果が出るのか、それがどのような意味を持つかがわかれば、スキルもよりアップしていくことだろう。