意外性のあるものを型にハマらず楽しめる人
欲しい人材像はズバリ、……イカ?
ユーザー数48万名を超え、個人ユーザー向けレンタルサーバーとして圧倒的なシェアを誇る『ロリポップ!』。このサービスを主力事業とするpaperboy&co.(ペーパーボーイ・アンド・コー)の家入一真社長はこう語る。
「意外性があって、何でも型にはまらず楽しめる人と一緒に仕事をしたいです。」
ユニークなコンセプトと高いデザイン性を備えたサービスが特色な同社だけに、スカウトしたい人材に求められる能力もまさにユニーク。
実際に応募者を審査する際にも、家入氏は「履歴書はほとんど見ない」と断言。
「いつかやりたい」では永遠に何もしないのと一緒
「仕事で高いパフォーマンスを上げるのはいわば“当たり前”。だから会社の業務で大きな実績があっても、実は重視していないんです。それよりも、休日や仕事が終わってからのプライベートな時間を使って、個人でWebサイトやブログを運営している人のほうを評価しますね。なんでもいいから自主的にアウトプットを生み出していることが重要なんです」
「?がやりたい」と言いながらその時点で実際にアクションを起こしていない人間は、永遠に何もしない。本当にやりたいと思ったら、人はその時点でなんらかの行動を起こしているものだ――。それがさまざまな経験を通じて家入氏が身につけた人を見る視点なのだろう。かつては「これだ!」と思える人材を見つけたら家入氏が直々にスカウトし、口説いて入社させることも珍しいことではなかったとか。なかには、一度も会うことなくブログへのコメントのやりとりだけで入社が決まった例もあるとか。経歴を問わないという言葉に嘘偽りはないのだ。
デザインと使い勝手にこだわれるエンジニアであれ
具体的な志向やスキルでいえば、同社が求めるのはまず、クリエイティビティの高さ。これは、企業理念である“We Host your Creativity.”を実現するうえで欠かせない要素といえる。
「ここでいうクリエイティビティというのは、Webサイトのデザインや使い勝手など、ユーザーの五感を満足させることに創造力を巡らせて仕事ができることです。当社のサービスを利用するユーザーは、自分の創作意欲をWeb上で表現したいと思っています。そのためにはまず、サービスの提供者である我々がユーザーよりもクリエイティビティ豊かでなければいけないわけです」
ただ単に機能が搭載されていれば良い、プログラムが正常に動作しさえすれば問題ないという価値観でサービスを提供していては、同業他社と同じ。paperboy&co.ならではの色を出すためには、より使いやすく、よりキレイに、より好きになれるサービスを提供し続ける必要があるといえそうだ。そうしたマインドを持った社員を採用してきているせいか、Webを扱う企業で起こりがちな『技術者と社内デザイナーのケンカ』も起きたことがないとか。
社風について聞かれると、苦笑しつつも家入氏はこう答えてくれた。
「頭が柔らかい社員が多いのはいいのですが、組織体としては柔らかすぎてグニャグニャしてる(笑)。たとえば仕事の進め方を見ても放任主義に近いですね。私自身がそうされるのが嫌いだからという理由もありますが、上司が上からモノを言うというスタンスで仕事をすることはまずありません」
最近は企業規模も拡大してきたことを受け、規模に見合った社内制度を確立する必要性を感じることもあるという。現在、そうした制度を確立しようとする動きがあるというが、そこで家入氏がこだわろうとしているのが、育児や介護をしながら在宅勤務ができるような手厚い福利厚生面だという。新興IT企業ではあと回しになることが多い、そうした側面に力を入れているのはなぜだろうか。
「当社には、若くして妻子持ちの社員が不思議と多いんですよ。だから、基本的には徹夜で働いたり、休日出勤したりする社員はあまりいないんです。土日は家族と過ごすものという暗黙の了解が浸透しているのかもしれません」
会社を好きになってくれるのはうれしいが、会社のために自分を犠牲にするような働き方はしてほしくないという。
家入氏がスカウトしたい人材とはつまり、自分をきちんと愛せる人間のことを指しているといえそうだ。仕事に振り回されて自分の夢やこだわりを忘れることなく働ける技術者なら、脈アリかもしれない。