技術が世の中に与える恩恵に目を向けられる人
「創業当時、『ネットオタクと旅行マニアが始めたカイシャ』などと言われていましたが、最近は増員に伴っていろんな種類の人間が増えてきました。まるで『動物園』の様相を呈してきましたね(笑)」
そう語るのは、旅行予約サイトと旅行者とをマッチングさせる旅行メディア『旅行のクチコミサイト フォートラベル』(以下『フォートラベル』)を運営するフォートラベル代表の津田全泰氏だ。
「技術力はもちろんですが、Webというメディアの新しい可能性を見出せる柔軟さが大事だと考えます」
徹底したサービス志向とやわらかアタマを持て
『フォートラベル』というサイト自体が、そもそも津田氏の「なぜ旅行予約サイトも旅行者向けのガイドサイトもあるのに、それらを1つに融合させたサイトがないのだろう」という素朴な疑問から生まれたサービスだ。ほんの少しの発想の変化ができるかどうか。これからのWeb技術者に問われるのはそれができるアタマの柔らかさだといえそうだ。そしてその発想の変化を可能にするのが、徹底したサービス志向にあると津田氏はいう。
「Webの世界では、日々当たり前のように新しい技術やサービスが生み出されています。そのトレンドを追うのは結構ですが、『その技術によって世の中に対してどんないいことがもたらされるのか』という視点を持ってほしいですね」
技術やサービスそのものを追い続けると、あまりの情報量と変化のスピードに「ここまで何もかもが出そろった今、これ以上新しいことなど生まれない」という悲観的な考えを抱きかねない。そうした限界の決めつけこそ、技術者にとって致命的だと津田氏は考えている。
「もうこれでインターネットのサービスは出尽くしたと考えるか、まだまだインターネットが本当に世の中を変えるのはこれからだと考えるかで物事はいくらでも見え方が変わってくるのです。そこでまだ可能性があると信じられる技術者でなければ、新しいサービスの実現は難しいでしょうね」
『フォートラベル』は、1998年にまだ社員が7名しかいなかった楽天に入社した津田氏が、2003年に独立して立ち上げたサービスだ。小規模ベンチャーだった楽天に勤務していた頃に営業から開発、新規事業(楽天トラベル)の立ち上げまであらゆる仕事に携わったノウハウを活かし、創業者2人でサイトを構築した。オープンソースの活用などで開発コストを徹底的に削減。システム開発に要した資金はたったの17万円だったという。
「特に当社のようなベンチャー企業の場合、資金が豊富にあるわけではありません。だからエンジニアであってもコスト意識を持つことは大切ですね。また、Webサービスを構築する際にはアプリケーションが動作するだけでなく、サーバにかかる負荷などインフラへの配慮がなくてはいけない。特定分野に詳しいだけでは、Webサービスの提供者としては不十分だといえるのではないでしょうか」
自分の得意分野のみに精進するだけでは、サービスはビジネスとは呼べないのだ。
これからのWebエンジニアに求められる4つの条件
そうした津田氏自身の経験から導かれたのが、以下に挙げる4つの条件だ。
まず1つめが、「スケーラビリティに配慮する」こと。Webサイトは、不特定多数のユーザーがいつアクセスしても運用に耐えうるものでなければならない。2つめは、「増大するサイトのデータ量を見越したサイト設計ができる」こと。ユーザーからの記事投稿などで、サイトに蓄積されるデータは日に日に増えていく。そうした膨大なデータをどう格納し、検索できるようにし、見やすく表示するか。考慮すべき点は無数にあるのだ。ここでもやはりアタマの柔軟性がカギを握る。そして3つめが、「新技術や新機能を習得し、それが何に有用かを見極める」こと。技術オリエンテッドというよりは、あくまでよりよいサービスを提供するうえでその技術が必要かを見る視点が必要だ。最後の条件は「コスト感覚を持つ」こと。特にベンチャー企業の場合は、ソフトウエアだけでなくハードウエアにかかるコストを最小限に抑えることが企業の運営には大きな意味を持つことになる。
いうなれば、エンジニアという枠を超えた総合プロデューサー的な視点で、Webサービス全体をみることができる人材が求められているということだろう。