実は“お得”な成長フィールド「金融SEへの転職」が正解なワケ

IT技術者の中でも、特に高度な技術力と業務遂行能力があることで定評ある金融SE。しかしなぜ、金融業界でIT技術者として働くことが、人材としての価値を大きく高めることになるのだろうか。識者と現場技術者の声からその理由を検証するとともに、これから金融IT業界への転職を考える技術者の活躍できるフィールドを探る。
【Word/MASARU YOSHIHARA(E-type) Photo/TETSUJI OSHIMA】2008年5月号より
世取山 進二氏
Shinji Setoriyama
株式会社NTTデータ
金融ビジネス事業本部

『FINALUNA』の適用でシステム開発の劇的な改善を

レガシーシステムのオープン化対応は、ここ数年の金融業界における主流なトレンドだ。NTTデータではこれらのニーズに対し、業界初の金融分野向け情報系システム構築ソリューション『FINALUNA』の提供を開始し注目を集めている。

金融ビジネス事業本部の世取山進二氏は、まさにこの『FINALUNA』をはじめとするシステム基盤フレームワークに惹かれて同社に転職した技術者の一人だ。

「もともと前の会社でも、金融SEとして銀行のシステム開発を手掛けていました。しかし前職では目の前の課題解決に追われるばかりで、『抜本的なソリューションの提供に至らないのでは』と疑問を抱くようになったんです。そんなころ、共通のシステム基盤フレームワークを整備することで、システムの開発生産性を総括的に向上させる、というNTTデータのソリューションと出会ったのです」

『FINALUNA』は、オープン系システムのQCD向上のための手法・技術を集約したソリューション。開発基盤となるJavaのフレームワークだけではなく、オープン&デファクトスタンダードの製品を組み合わせた動作検証済みのアプライアンス製品と、様式や記述例を整備したドキュメントガイドラインを提供し、より短期間にコストパフォーマンスの高いシステム構築を実現する。

「『FINALUNA』の導入をいくつか支援させていただきましたが『オープン系で開発するのは初めて』、『Javaを使用した開発は初めて』といったプロジェクトが意外と多いことに驚きました。このような初めて尽くしのプロジェクトも、『FINALUNA』というソリューションの上にシステムを構築することで乗り越えられました。システム開発の土台となるソリューションの重要性を感じましたね」

優れたソリューションを通じて恩恵を蒙るのは、顧客だけではなく開発に携わる技術者も同様。安定したシステム基盤フレームワークの上で構築することで、開発リスクを低減し、業務開発により注力することを可能にする。

「さまざまな案件で開発に携わっている技術者から、技術と業務の両面でのアドバイスを求められる機会は多いです。あらゆる可能性の中から最適解を導くプロフェッショナルとして、自分が着実に成長している、という実感があります」
      
業界初の金融向けソリューション『FINALUNA』
NTTデータの豊富な金融系情報システム開発実績に基づくノウハウを結集したソリューション。情報システムを全体として最適なものにするためには、技術の方向性や世代を把握し、共通の技術参照モデルに準拠した情報システムを構築する必要がある。同社では、豊富な金融系情報システム開発実績に基づくノウハウを、技術参照モデルに相当するFINALUNA(フィナ・ルナ)推奨構成に集約した。
熊安 隆志氏
Takashi Kumayasu
株式会社電通国際情報サービス
金融ソリューション事業部

確かなコンサルティング力を武器に最適なシステム導入を実現

「外資系金融機関の参入や他業種からの金融サービス参入意欲の高まりなどにより、日本の金融業界はますます競争が激化していくでしょう」

そう語るのは、数多くの金融機関を対象に、幅広いITソリューションを提供している電通国際情報サービス(以下、ISID)で金融デリバティブ業務システム開発に携わる熊安隆志氏だ。こうした状況では、ITを使った新たなビジネスモデルの創出が金融機関の勝敗を左右していくといっても過言ではない。 デリバティブをはじめとする市場系金融業務の隆盛により、そうした業務に特化したパッケージソフトが台頭してきたのもここ数年の金融ITトレンドの一つだ。熊安氏が現在、同社で取り組んでいるのがまさに、金融デリバティブ業務を包括的にサポートするパッケージソフト、『Calypso(カリプソ)』の導入案件の数々だ。

「パッケージソフトはいわば『型』そのもの。お客さまの業務スタイルや要望に最初から完全にマッチするのはレアケースです。お客さまのニーズを的確にくんだ上で、そのニーズに合わせたベストソリューションとは何であるか?に頭を巡らせることが肝心なので、技術者にもコンサルティング能力が大きく問われますね。自信を持ってお客さまにソリューションを提案するためにも、システムと業務知識の両面に精通することが必要です」

ISIDに転職する以前の会社では、パートナーとして大手SIerで業務に従事していたが、ひたすら目の前の作業に没頭するだけだったという熊安氏。

だがISIDで現在の業務に従事してからは世の中の動きや新技術・金融制度などに幅広くアンテナを張るようになったとか。なぜなら頻繁な法改正や制度変更など、変化の激しい市場系業務に対応するためには、多くの情報ソースを常にウォッチすることが欠かせないからだ。そうした日々の生活レベルにまで及ぶ意識改革が、より顧客満足度の高いシステム提案へとつながっているのだろう。

「お客さまのご要望を取り入れつつ、今後の金融市場の変化にも耐え得るシステム導入提案・開発をするのが使命です」

ISIDの持つ金融工学と先端のシステム開発ノウハウの中で揉まれる経験が熊安氏を優れたコンサルティング能力を備えた技術者へと成長させたようだ。
      
市場系商品統合管理システム『Calypso』
近年、活発化するデリバティブ取引に対応するため、ISIDは高い柔軟性と拡張性を備えた市場系商品統合管理システム『Calypso』に着目。2007年には、日本マスタートラスト信託銀行への導入を、業務要件分析からサービスインまで5カ月という短期間で成功に導いた。高度な業務知識が必要とされる市場系取引分野で多くのソリューション提供の実績を誇るISIDならではの仕事だ。

「金融SEへの転職」が正解なワケを語る
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