2008年の成功事例から次のトレンドを読む ニッポン席巻ビッグプロジェクトの裏側

2008年9月にグーグルがリリースしたオープンソースのWebブラウザ『Google Chrome』。日本語や中国語を含む40以上の言語に対応し、ユーザーは現在、Windows Vista/XP版を無料でダウンロードできる。オープンソースブラウザに独自開発の検索技術を盛り込んだ、同社からの新たな提案だ。

「多機能ワンボックス」と呼ばれるアドレスバーには、文字列入力の途中でキーワード候補を先読み表示する「Google サジェスト」や新開発の「ナビゲーションサジェスト」機能などが追加された。ナビゲーションサジェストの開発は日本人チームの手で行われ、発案者である原田昌紀氏がリーダーを務めた。

「漢字、ひらがなやカタカナ、ローマ字でも検索でき、キーワードの一部だけが入力された状態でも、行き先として予想されるサイトがあれば、それを直接表示します」

開発のきっかけは原田氏自身が感じていた素朴な疑問。ITは劇的に変化しているのに、検索手順はここ10年、キーワードを入力して検索ボタンを押すというスタイルはほとんど変わっていない。2005年、「違う方法を試してみたい」と個人的に開発を始めた。業務時間の20%を自分のやりたいことに費やせる、グーグルの「20%ルール」を最大活用した。

デモ版の評判が良く、2007年に正式な開発プロジェクトへ昇格。インフラ部分からの構築を目指したが、『Google Chrome』に求められるスピードの確保などでプロジェクトは難航していた。原田氏は開発方針を転換し、Googleサジェストのインフラ活用を決断する。そもそもアドレスバーと検索機能が一体化している『Google Chrome』では、Googleサジェストは必須の機能。ナビゲーションサジェストとの相乗効果でWebサーチ・アクセスの大幅な利便性向上が見込める。

「先行するイスラエルのGoogleサジェスト開発チームの全面協力を得て、短期間で1つのブラウザ内に統合できました」

『Google Chrome』のダウンロード数は今なお高水準を維持。今後もさらにユーザー数を増やすための必要な開発を進めている。「ナビゲーションサジェストでは、早く表示し過ぎてもおせっかいだし、遅すぎたり、間違いが多くても使ってもらえない。今後も膨大なユーザーデータに基づいて改善に努め、少しでも目的のサイトにたどり着く時間を短縮したいですね」と原田氏は2009年の開発見通しを語った。
『Google Chrome』の機能 シンプルで合理的なデザインながら、Web上の行きたいところにすぐ行ける特長がある

モバイル端末向け検索技術が発展

世界的にケータイやゲーム機などのモバイル端末からWebサイトにアクセスするユーザーが増大している。文字入力の手間をできるだけ省きながら、目指すサイトに最短でたどり着ける検索技術が発展

オープンソースを活用したブラウザの進化

ソースコードが公開されているGoogle Chromeでは、社外のエンジニアを巻き込んだ機能追加開発が本格化する。幅広いエンジニアの多様な開発思想が加わることで、Webブラウザのさらなる進化が起こる
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