「Growth Hacker(グロースハッカー)」という職種をご存知ですか?
Growth Hackerとは、簡単にいえば、「プロダクトを通じて、ユーザの声やデータをすくい上げ、それをプロダクトに組み込むことでユーザーを増加させていくスペシャリスト」のことです。企業やサービスを急成長させる必殺仕掛け人ともいえます。
Growth Hackerの職域は、非常に広範囲にわたります。プロモーションの内容や進め方だけでなく、ユーザーからの反応に応じてユーザーインタフェースを変えたり、サービスや製品そのもののコンセプトを変えてしまうことすらあります。ユーザーの反応次第で製品そのものさえも変えてしまうほどの権限をもつのが、Growth Hackerなのです。
まだ日本では耳慣れない職種ですが、昨今シリコンバレーで成長中のWEBサービス系スタートアップの中では話題になっており、その求人も急増しています。なぜなら、FacebookやTwitterといったWEBサービスから大統領選挙まで、成功の陰にはGrowth Hackerの果たした役割が小さくないからです。
米大統領選で約140億円の個人献金を集めた凄腕Growth Hacker
ITサービスから少し離れますが、有名なGrowth HackerのひとりにAaron Ginn(アーロン・ジン)という人物がいます。まだ20代前半の彼は、2012年の米大統領選挙において、共和党ミット・ロムニー候補の陣営で活躍した凄腕のGrowth Hackerとして名を馳せています。ジン氏は、WEBサイトやメール、ソーシャルメディアなどを用いたマーケティングを実行し、さまざまな支持者との接点から得られたデータを分析、施策の改善を重ねた結果、1億8000万ドル(約140億円)の個人献金を集めることに成功しました。
Growth Hackerと近しい職種に、マーケティングを行うマーケッターがあります。両者の違いをざっくりと説明すると、「マーケターは、スキルを学んだ上でそれを実行する。Growth Hackerは、実行することによりスキルを学んでいく」といいます。アプローチの手法の違いともいえますが、Growth Hackerは、まず理論ありきなのではなく、複数の解決策を実際に試してみる中で、一体問題の本質はどこにあるのかを探り当てていくところに特徴があります。
試行錯誤が急成長への最短ルート
とはいえ、Growth Hackerにもまったく理論がないわけではありません。Growth Hackerは、「AARRRモデル(アーモデル)」と呼ばれるフレームワークを用いて施策を策定し、実行します。AARRRモデルとは、「海賊指標」とも呼ばれますが、
・Acquisition(ユーザー獲得:広告宣伝などで登録や訪問を促す)
・Activation(ユーザー活性化:初めての利用したユーザーに”良い体験”をしてもらう。楽しさを知ってもらう)
・Retention(継続:ユーザーのリピート率を上げる)
・Referral(紹介:SNS上などでユーザーがそのサービスを周りに紹介するようにする)
・Revenue(収益:ユーザーがより多く課金行動を取るようにする)
という一連のフローになっています。このフレームワークで注目すべきなのは、Revenue(収益)が一番最後に来ていること。目先の利益よりも、ユーザーの満足度とサービスの成長を実現することで、収益につなげていくという考え方です。
昨今はビジネスの動きが速く、過去の戦略の延長ではユーザーも増やせず、売り上げも伸ばすことも難しくなっています。そうした中、サービスを急成長させるためには、Growth Hackerが実行する試行錯誤が最短の道といえるかもしれません。