OSS(オープンソースソフトウェア)とは、ソフトウェアのソースコードをインターネットなどを通じて無償で公開し、誰でも改良や再配布が行えるようにすること、また、そのようなソフトウェアをいいます。
ソースコードはソフトウェアの設計図ですから、ソースコードがあれば、そのソフトウェアの類似品を作成したり、技術を転用したりすることができるようになります。
もっとも有名かつ成功したオープンソースソフトウェアといえば、Linux(リナックス)でしょう。Linux は、1991年にフィンランドのヘルシンキ大学の大学院生(当時)Linus Torvalds(リーナス・トーバルズ)氏によって開発されたOSです。その後フリーソフトウェアとして公開され、全世界のボランティアの開発者によって改良が重ねられています。
企業や地方自治体でも、オープンソースソフトウェアの採用広がる
先に述べたように、ソースコードはソフトウェアの設計図ですから、これまで企業などでは自社で開発したソフトウェアのソースコードは極秘扱いとし、他社に供与する場合にはライセンス料をとっていました。ソフトウェアの開発には、多大な費用と期間が必要になりますから、これは当然のことともいえます。
しかし近年、クラウドコンピューティングの登場などで、その潮目は変わりつつあります。
例えば、OSのWindowsやオフィスソフトウェアのMicrosoft Officeを開発しているマイクロソフト。同社は以前、オープンソースに否定的な立場をとっていました。同社から「オープンソースソフトウェア、特に Linux がマイクロソフトの製品と競合して、マイクロソフトによるソフトウェア産業の支配を脅かす」という内容の内部文書がインターネット上に流出し、同社のオープンソースソフトウェア対抗戦略が暴露された「ハロウィーン文書事件」というものもあったほどです。
しかし今では、同社はオープンソースソフトウェアの開発を手がける子会社、米マイクロソフト・オープン・テクノロジーズを設立するなど、オープンソースソフトウェア採用へ大きく舵を切っています。
また、日本国内でも、一部の企業や地方自治体などで、ライセンス費用の削減などを目的に、オフィスソフトウェアをMicrosoft OfficeからオープンソースのOpenOffice.orgに入れ替えるといった動きも出ています。
このように、IT業界においてオープンソースソフトウェアに対する扱いが変化したのは、オープンソースソフトウェアが商用ソフトに代わって、IT産業のトレンドを決める主役になったからといえます。
これまでは、大手ベンダーが開発した商用ソフトや、大手ベンダーが主導する標準化団体が、ソフトウェアのトレンドをリードしてきました。しかし今では、大手ベンダーが決めた標準仕様が、オープンソースソフトウェアによってひっくり返されるような事態も起きているのです。
オープンソースソフトウェアライセンスの要件
オープンソース文化を啓蒙する非営利団体「The Open Source Initiative(OSI)」は、オープンソースソフトウェアライセンスの要件として、以下のような定義を掲げています。
1. 自由な再頒布ができること
2.ソースコードを入手できること
3.派生物が存在でき、派生物に同じライセンスを適用できること
4.差分情報の配布を認める場合には、同一性の保持を要求してもかまわない
5.個人やグループを差別しないこと
6.適用領域に基づいた差別をしないこと
7.再配布において追加ライセンスを必要としないこと
8.特定製品に依存しないこと
9.同じ媒体で配布される他のソフトウェアを制限しないこと
10.技術的な中立を保っていること
これに準拠しているオープンソフトウェアライセンスには、OSIより「OSI認定マーク」が付与されます。「OSI認定マーク」を付与されてはじめてオープンソースソフトウェアと認められます。
今後、ますますトレンドをリードしていくと思われるオープンソースソフトウェアが、IT業界をどのように変えるのか楽しみでもあります。