Q.伊坂さんは新卒で大手銀行に入行されています。どのような経緯で、SEの道に進むことになったのですか?
私が就職したころは、まだ銀行が高収入という時代。漠然と銀行か商社がいいと思い、たまたま最初に内定の出た都銀に入りました。情報部門の社員として入社したのではなく、最初の3年間は都内の支店で、預金・外為・融資という基本業務をしました。しかし、預金集めがカッタルイ(笑)。東京以外に転勤するのも嫌。それで、ずっと本部勤務が続く情報部門へ志願したんです。銀行オンラインシステムの基本設計の勉強をイチから始めて、検証、保守、運営をずっとやっていました。
1日の平均スケジュール
6:00 | 起床 |
---|---|
8:00 | 出社 メール処理/技術情報などのサイトチェック |
9:00 | 社内のプロジェクトメンバーとの打ち合わせ |
12:00 | ランチ |
13:00 | 顧客、協力会社などを数社回る/進行中のプロジェクトの打ち合わせ/展示会など行って情報収集 |
18:00 | 帰社 新たな提案企画を立案 |
21:00 | 帰宅 |
22:00 | 読書 |
24:00 | 就寝 |
Q.30歳の時点で年収1000万円を超えていますね。収入的には恵まれていたと思うのですが、なぜ転職しようと考えたのですか?
銀行の情報システムというのは、基本的に設計から開発までメーカーに丸投げといった構図です。当初は自分でも基本設計はしていましたが、あるときから会社の方針が変わったのです。「設計は考えなくていい、ベンダーに対する提案能力を上げていこう」となり、システムの方向性などの企画だけに集中することになったわけです。要するに、メーカーさんへ“おまかせ主義”と。これでは、エンジニアとしての実力がつかないと思ったのが転職をしようと思った大きな理由です。また、合併に向けて、合併相手先のシステムに統一することになったのも辞めようと思った理由です。別メーカーのシステムになるんじゃ、辛いだけですから。
Q.その後、現在の外資系ベンダーへ転職。この転職は大成功だったようですね。
ええ。次は世界的に著名で技術力もある外資へ行ってみようと思ったのです。「日経コンピュータ」などの雑誌で今の会社を選び、直接応募で入社しました。現在は、入社以来、実質的にプロマネとして、だいたい月に100人程度のメンバー(協力会社やコラボ先の人も入れて)の案件を回しています。
Q.業績、収入も1100万円といいですね。具体的にはどんな仕事を?
コンピュータメーカーと協業して、ネットワーク構築の案件を担当しています。この会社は外資系だけに、業績評価が徹底しており、一個人として独立したセールスエンジニアのような形です。コンサルタント的ともいえるし、プロマネでもあります。主な仕事はメーカーへの売り込みと、その後のプロジェクト管理です。
Q.業績がいい秘訣とは?
まず第一に時代の波に乗っている部門(ネットワークソリューション)に配属されたこと。そしてもう一つ大事なことは、エンジニアといってもサービス業なので、営業力をもっていることです。とにかく頑張って成約を取ってくることに尽きます。今、伸びている某外資コンピュータメーカーも、営業力の部分で気合が違います。私の営業法は、展示会に顔を出し、業績がよく設備投資が増えそうな会社を聞きまくること。それと協業先となるメーカーの人との人間関係を増やしていくことです。新規先を常に紹介してくれる協業メーカーをどれだけ持てるかが勝負ですね。要するに、技術と営業の両方の力を併せ持つことが大事ということです。
Q.最後に、今後の伊坂さんのキャリアプランというと?
今後も、プロマネとしてずっとやっていくつもりです。ただキャリアや年収といっても、自分の扱っている技術やサービスの市場が冷え込んでしまったらアウトです。だから、その防衛策として、コンサルティング能力を今後も伸ばしていくしかないと思っています。客の悩みを聞き、どんな商品を組み合わせるかという戦略的思考を磨いていくのみです。
戦略的思考を磨くため、プライベートではビジネス書を読みまくっているという伊坂氏。開発から営業的な領域に踏み出したときは不安だったというが、現在では営業力を武器に収入を伸ばしている。伊坂氏曰く「営業ができないと職を失う危険すらある」。エンジニアが30代後半を超えて年収を上げ続けるには欠かせない視点だ。
持ち物チェック
今年のボーナスで買ったロレックスデイトナ。この他、時計は何本か持っていて気分によって変えている。
ビジネス書を大量に読む。最近のお気に入りは、御立 尚資 (著)『戦略「脳」を鍛える』(東洋経済新報社刊)。戦略的思考力を身に付けるにはベストだという。