Q.新卒で都市銀行に入ったころは、将来をどのようにイメージされていたのですか?
大学の就活時は、為替ディーラーか経営コンサルタントが目標でしたね。都市銀行と外資系ITコンサルティング会社に内定し、外資系はいつでも転職できると、都市銀行に入ったのです。最初は支店勤務となり、為替ディーラーになるために、自分なりに国際金融などを勉強していました。しかし、支店では為替ディーラーになるのは難しいとわかり、やはり将来は経営コンサルタントになろうと思いました。
コンサルタントになるには、ビジネス系の大学院に行くことが必須。当時の上司に相談したところ、いまの仕事で成果を出せば行かれるとのことでした。それから預金と融資の仕事に全力投球し、支店でトップになりました。その後、本店の外国業務の研修生に抜擢され、都心の支店へ。ここで外資系企業を集中的に開拓して全国で2番の成績まで行ったのですが、そろそろ経営コンサルタントの道に行きたいなと、夜間に通えるビジネススクールに入学しました。当時は、社費のMBA留学も海外勤務もできない時代だったんです。
1日の平均スケジュール
6:30 | 起床 |
---|---|
8:30 | メール、事務処理 |
11:30 | ランチ |
12:30 | 弁護士、会計士、投資先候補会社の人などとのミーティング |
18:30 | 帰社し、夕食 |
19:00 | 資料作成および勉強 (オフィスに500冊の本を置いている) |
23:30 | 退社 |
24:30 | 帰宅 |
25:00 | 就寝 |
Q.ビジネススクールが転職のきっかけになったと?
そうです。周りには同じ都市銀行の人や証券会社や総合商社、外資系金融機関などの人たちがいましたね。当時、銀行は一番いい職場であり、銀行員は転職しないものと刷り込まれていたんですが、彼らと話していて世の中にはもっと面白い会社がたくさんあると知りました。実際、別の都銀のエリートコースの人が外資系金融機関にさらっと転職したりしていた。自分も、このまま銀行にいてもポストは減るばかりだから、転職を考えないといけないと思いようになったんです。
たまたま転職サイトに登録して出会ったのが、IT業界のカリスマが新たに設立する投資・戦略コンサルティング会社でした。この社長と一緒に働いてみたいという一心で大学院在学中にその会社に転職しました。
Q.この転職先ではどのような経験をされたのですか?
ちょうど30歳のとき、銀行が合併する直前で転職しました。環境はガラリと変わりましたね。当時、銀行は社外へのメールができないくらいIT化が遅れていたのですが、この会社はIT分野の最先端企業から来た人が多くいました。ここで、エクセルから始まってパワポまでPCとITの知識をインストールされました(笑)。
仕事は業績が落ちたオールドエコノミーの会社に投資をして、IT化のコンサルティングを行ない、株価を上げて利益を回収することでした。その1号案件である地方メーカーの担当となり、経営企画室の人間として毎週2日間地方に通う生活を2年間していました。
都内のベンチャー企業のコンサルティングも行い、こちらにも毎週通って事業企画を行なっていました。このベンチャーはレストランやホテルのプロデュース会社ですが、コンサルティングを開始したときの売上げ規模は20億円。それが2年後には60億円規模に成長。日々ベンチャーが急速に大きくなるさまを肌で感じるという刺激的な仕事でした。
この会社にはベンチャーの錚々たる社長が取引先として集まっており、自分も黒子の社員としてではなく、経営者になりたいという思いが募りました。そのとき、たまたま知り合いを通じて、ある若手ベンチャー企業家の方と親交を深めることになったのです。
Q.ベンチャーの経営陣として転職するわけですね?
ええ。最初はCFOに誘われたのですが、それは断り、関連会社の役員になりました。この会社は韓国のオンラインゲームやネットカフェのシステムを日本で展開する会社。海外関連の仕事は初めてで、いい経験になると思ったのです。私はネットカフェのシステムの国内販売を担当していました。
その1年後に上場準備が始まり、私はCFOになりM&A業務と公開準備業務を経験しました。公開を目指して準備を積極的に行っていたのですが、この会社に引っ張ってくれた社長が他社に行ってしまったこともあり、自分も辞めることになりました。
Q.それで転職活動を始めて、現在の投資会社に入ったわけですね。
そうです。人事系の外資コンサルティング会社と、どっちにしようか迷いましたが、年収が1500万円と高かったのでこの投資会社に決めました。この会社は投資をしたらバリューアップさせるのがモデル。すると、ファイナンスの知識、経営の経験、投資先を開拓するという営業力が問われます。私は銀行時代も含め、このすべての経験と実績をもっていた。それが高収入を提示された理由です。
投資先を開拓し、デューデリ(会社の価値を精査すること)し、投資実行となったら、公開まで支援するのが仕事です。現在は、投資先である技術系ベンチャーの建て直しということで、社長を探し、私はCFOとしてほぼ常駐し経営をみています。来年にはIPOできそうな目処がたち、楽しみにしているところです。
Q.投資業務で成功する秘訣というと?
この仕事は投資だけでなく、投資先に入って経営のノウハウを提供する。だから、経営の経験が必要だと思っています。ない人はならないほうがいい。経営の経験があるのなら、あとは好奇心。何にでも興味を持ち、納得するまで調べることです。
もうひとつは、何があっても逃げない覚悟。これだけあれば、投資業務に限らずどんな仕事でも成功すると思います。
Q.今後のキャリアプランは?
最終的にはビジネススクールの教授になりたいと思っているんです。現状、本当に経営を知っている教授は少ないですから。自分は経営者になって成功し、得た資金でベンチャーに投資し、またその会社を成功させる。その実績ができたら教授になり、経営ノウハウを広めたいと考えています。
経営者として成功し、その後は投資家として後進を育てる。このキャリアプランを神谷氏は大学院を卒業したころからずっと追いかけている。現在は会社の資金で投資業務を行なっているが、これを成功させて資金を貯めたら次は投資家として独立するという。神谷氏のキャリアヒストリーは、若手銀行員がいかに飛躍するかを考える上で大いに参考になりそうだ。
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