キャリア Vol.93

営業女子の産後のキャリアを考える~スキルを生かした「回り道」でレベルアップ

ファイナンシャルプランナーの氏家祥美さん

バリバリ働き、仕事に邁進している営業女子たち。しかし、程度に差はあれど、皆「出産したら仕事はどうしよう」「この働き方で結婚できる?」といった不安を抱えているという。

5月15日に開催された『@type営業適職フェア』の中で、そんな不安を解消するために、ファイナンシャルプランナーの氏家祥美さんによるワークショップ『営業女子ナイト!結婚・出産に「営業女子」は不利なのか!?ぶっちゃけ討論会』が行われた。

営業女子を取り巻く環境と、抱えている悩みを踏まえ、彼女らが結婚・出産を経験しても営業を続けるために必要なことを、氏家さんに教えてもらった。

プロフィール画像
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ハートマネー代表 氏家祥美お金と仕事の相談室「ハートマネー」代表。立教大学卒業後、旅行会社で営業職を担当。結婚や出産を経てファイナンシャルプランナーの資格と出会い、2005年にFP会社を仲間と設立。2010年より独立。結婚・出産・マイホーム購入時の家計相談のほか、転職・起業時のマネープランを得意とする。「いちばんよくわかる!結婚一年生のお金」(学研パブリッシング)、「35歳を過ぎた女性に贈るこれからのお金のお作法」(秀和システム)ほか著書多数。http://www.heart-money.net/

5つの質問から見えてくる営業女子のホンネ

まず氏家さんは営業女子の現状を明らかにするために、参加者に5つの質問をした。

その日初めて出会った、年齢も業種もばらばらの女性たちが4~5人で1グループになり話し合って答えた主な回答は以下のとおりだ。

Q1、営業がつらい、不安だと感じるのはどんなとき?
A、代役がきかないこと、営業先に合わせるので時間のコントロールがしにくいこと

Q2、営業って楽しい、好きだと思うのはどんなとき?
A、さまざまな業界の話が聞けること、成長がお金として反映されやすいこと、お客さまから「ありがとう」と言ってもらえること

Q3、営業女子のお金、良いところ、大変なところは?
A、(良いところ)接待で食費が浮く、細かい分男性営業マンよりも決済が下りやすい
  (大変なところ)ストッキング代・美容費がかかる、立て替えることが多いとやりくりが大変

Q4、結婚・出産できるか、不安に感じるのはどんなとき?
A、会社によって出産に関する考え方が異なる(社内に保育園がある会社もあれば、結婚したら寿退社を進められる会社も)、営業先を失うリスク、キャリアがリセットされる

Q5、理想の結婚相手やライフスタイルは?
A、家事を分担してくれる人、ともに成長していける人、「家に入ってくれ」と言わない人、仕事の話ができる人

これらの回答を見ると、営業女子は成長意欲が高く、出産後も変わらず営業職として働いていきたいと考えており、結婚相手にも協力を求めていることが分かる。しかし、実際に営業職に復帰できるかどうかという点では強い不安を感じているようだ。

営業女子の産後を支える3つのポイント

氏家さんがワークショップで出た意見を踏まえて考えた、営業女子が結婚・出産を経ても仕事を続けるために必要なポイントは3つ。

【1】時間

営業は相手との信頼関係が重要な職種のため、代役を立てることができず、プライベートの時間まで仕事が侵食するものと考えがち。しかし、訪問と訪問の間に私用を済ませられるなど、実は時間が作りやすい職種。社内でクライアントを調整し、自らの勤務時間と顧客の訪問可能時間が合うようにするなど工夫した例もある。

【2】お金

インセンティブなどで給与が月によって変わったり、ストッキングなどこまめな出費も多いので営業女子の家庭はお金の管理がしにくい。出産後、早く職場復帰したいのであれば、最もお金がかかる0歳~2歳までの間は子どものことにお金を惜しまず使うべき。その期間は出費が多かったとしても、夫が内勤で妻が専業主婦の家庭と比べると、結局残るお金は営業マン夫婦の方が多い。

【3】パートナー

柔軟な相手を選び、「イクメン」に教育することが必要。例えば、子どもの保育園への送りを任せて、周囲のパパと交流させることで、育児することが普通だという意識を持たせる。すると子どもも父親に懐くし、父親本人も喜ぶ。

一生モノの営業スキルを生かす、「あえて」の遠回り

「営業力は一生モノのスキル」と話す氏家さん。営業女子は結婚・出産から復職しても工夫次第でそのスキルを生かした働き方ができるという。

「営業は業務時間が不規則なため、産休前と全く同じ労働環境で復職するのは難しいと思うかもしれません。そんなときは一人で悩まず、誰かを頼ってみてください。例えば、クライアントを変えてもらうことで時短勤務が可能になるかもしれません」

20代の営業女性はどうしても視野が狭くなりがち、と氏家さんは話す。

「営業スキルを生かせる仕事は営業職だけではありません。総務や経理など、内勤の仕事でも営業の気持ちが分かる人は重宝されるでしょう。その後、チャンスが来たら、また営業をやればいい。そうすれば内勤の気持ちが分かる営業マンとしてレベルアップしているはずです」

ECサイトの営業をしているという参加者の女性も「昨年結婚し、将来出産したいという思いと、営業をいつまで続けられるかという不安が交錯していました。でも、子どもが小さいうちは内勤、手を離れたら営業、というキャリアプランを聞き、新たな視野が開けた気がします」と少し気持ちが楽になった様子。

営業女子にとって出産後の働き方がどうなるのがベストかは人それぞれ。しかし、いろんな人の意見を聞いて、「営業だから難しい」という不安は解消されたみたい。むしろ、営業というスキルがあれば、他職種でのキャリアも営業職で稼ぎ続けるための有効な“回り道”となり得ることに気付いた人が多かったようだ。

取材・文・撮影/佐藤健太(編集部)

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