「優秀な人と仕事をすれば勝機は見えてくる」 元・お荷物営業マンが成長企業の役員として活躍している理由
お客さまにも上司にも怒られる、売上成績も全く上がらない――。営業マンであれば誰しも、そんなスランプの時期を経験したことがあるのではないだろうか。「自分に営業は向いてないのかもしれない」「このまま営業を続けていって、何になるんだろう」そう悩む人も少なくないはずだ。
現在、日本最大級のファストファッション通販サイト『SHOPLIST.com by CROOZ』などの通販事業や『エレメンタルストーリー』をはじめとした数々のヒットゲームアプリなどで頭角を現すCROOZ株式会社。その執行役員を務める諸戸友氏も、若手時代はそんな営業マンの一人だった。一度は挫折を経験した彼が今、六本木ヒルズにオフィスを構える急成長企業の役員として活躍できているのはなぜなのだろうか。彼が営業マン時代に学んだ仕事の哲学に、その答えが見えてきた。
「1社でも多くアプローチしろ!」を辞めたら、「お荷物会社員」からトップ営業マンになれた
大学を卒業後、諸戸氏が最初に選んだキャリアは求人広告代理店での営業職だった。入社当時は、同期の誰よりも大きな口を叩き、「トップ営業マンになる」と高らかに宣言していたというが、実際は入社して半年近く経っても、全くといっていいほど売れない日々が続いた。
「毎日名刺を100件もらってこいと言われ、とにかくしらみつぶしに当たっていました。飲食店のお客さまなのに、ランチ時間とかでも飛び込むんですよ。相手からしたら迷惑極まりないので、水をかけられたことも、帰れと怒鳴られたことも何度もあります。そこまでしても半年近く全然売れないから、もう電話も飛び込みも怖くなっちゃって。毎月のランキングを発表されるのが嫌で会社の会議から逃げ出したこともあります」
誰よりも売れる営業マンになるという目標を掲げていた彼でも、過酷な環境の中でモチベーションを保つことは難しかったようだ。
「営業中に空を見上げては『俺は何をやってるんだろう……こんなことをするために大学を出たわけじゃないのに……』って何度も思いましたし、いっそ辞めてしまおうかと考えていました。そんな時に追い討ちをかけるように、社内のトップ営業マンに『お前みたいなお荷物社員は、さっさと辞めちまえ』って言われる始末でした」
しかしそんな彼を救ったのは意外にも、そのトップ営業マンの存在だった。
「辞めちまえと言われていた先輩から、ある日突然、『お前をトップ営業マンにしてやるから、今日から俺の言うことだけを聞け』って言われたんです」
当時トップの成績を誇っていた先輩の指示とは、「とにかく経営者と仕事をしろ」というもの。経営者というのは代表という意味ではなく、決裁権を持って、会社の方向性を決めていける人のことを指す。「自分で仕事を決定しながら動いている、“かっこいい仕事”をしている経営者とだけ仕事をするべきだ」と教えられた。
「『とにかく多くの企業に飛び込む、1件でも多く電話をかける』というのが当たり前だと教わってきたので、当時は衝撃的でしたね。そして今まで何百件と集めた名刺を見返してみると、“経営者”と言えるのはたった10名くらいだったんです。経営者は10名しかいません、と伝えると『じゃあこの1カ月間、その10人のところにだけ顔を出せ。他の会社は一切行かなくていい』と言われて。そして実際に同じ会社だけにアプローチをし続けたら、受注が入ったんですよ。それからは毎月目標も達成し、数カ月後にはMVPを獲得するまで成績が上がっていました」
その時に諸戸氏は、経営者と仕事をすること、経営者に頼られることの楽しさを学んだという。そんな先輩の教えを実直に守り続け、その後は自身もトップ営業マンの道をひた走ることになった。
営業時代に培ったヒアリング力が勝機をつかんだ
経営者相手に営業をし続けることで見えてきたのは、「こちらが売りたいものじゃなく、相手が買いたいものを売るべき」ということだった。
「担当者の『これが足りないから買いたい』という瞬間的・短期的な注文とは違い、経営者に対して中長期的な経営の課題やビジョンをヒアリングし、『こういう問題があるから、これが必要なのではないですか』と提案する。そういう営業スタイルを続けるうちに、経営陣が今何を考えていて、抱えている課題には何が必要なのかというニーズを的確にとらえるのがクセになっていたんです。自分の会社の社員にも言えないような経営者の悩みやニーズを引き出すことが、本当に楽しかったんです」
そう微笑む彼はその後、ベンチャー企業の立ち上げを経験し、新卒時代から付き合いのあったCROOZに入社した。その時彼に与えられたのは、営業ではなく、企業の中核ともいえるブランディングを担うポジション。「ビジョンや理念など経営上重要な決定をする時に、諸戸を隣に置いておけば、自分の考えを引き出してくれる」という経営陣のニーズがあったという。
「あなたは結局、何がやりたいの? どうなりたいの? というのを引き出して、その後の戦略を練ることができる。それが僕の価値なんです。ヒアリング力って、営業ではない仕事にも大事なスキルだと思いますね」
しっかりと経営陣のニーズをとらえ、将来のビジョンを逆算しながら戦略を考える、という彼の経験値は、もはや営業スキルを超えた武器になっていた。
優秀な人と仕事ができるなら、愚直にやり続けた方がいい
「一番分かりやすく身に付く営業のスキルって、“根性”だと思うんですよね」
営業は楽しいことばかりではなく、むしろ辛いことも少なくない仕事ではある。しかしどんなに辛くても諦めない、という信念が必ず自分の足腰になっていくのだと、当時を振り返る。
「今の仕事だって、辛くて大変なことの連続ですけど、僕は絶対倒れないんです。愚直にやり続ける、っていうのは大事です。時代が変わっているので、それが今の人たちに必要かどうかは分からないですけどね(笑)」
CROOZに入社してからは、営業時代に培ったヒアリング力と根性を武器に、経営企画、広報、ブランディング、ユーザーサポートなど幅広く担当してきた諸戸氏。多くの経験をしてきたからこそ、ビジネスにおいて大切なことが分かったという。
「結局は“何をやるか”よりも“誰とやるか”が一番大事なんだと思います。優秀な人、尊敬できる人と仕事して、何を吸収できるかが肝なんですよね」
諸戸氏は、若手時代に先輩から言われた「経営者と仕事をすること」を今でも守り続けている。
「僕は営業時代も今も、生意気な話ですが仕事をする相手は自分で選んでいました。この人はお金を出して取引してくれそうだなって思うと、つい飛びつきたくなっちゃいますけど、相手が自分の共感できる考えじゃなかったり、尊敬できない人とは深く仕事はしません。逆に、この人の考えがすごい、と思えばとことん一緒に仕事をします。本気で仕事をしている人の側にいれば、この人には何が何でも必要とされたい、って思えるから自分も頑張れるんです。そういう優秀な人との仕事を愚直にやり続けていれば、チャンスは自然と舞い込んでくると思っています」
そしてそれは、自社内の社員であろうと、クライアントであろうと関係ない。諸戸氏は今でも、尊敬するクライアントと定期的に会って話をするという。ビジネスとは関係ない話題であっても、決まって叱咤激励してくれる「人生の兄貴・師匠」に出会えたことも大きな財産だ。
営業に向いていない、仕事がイヤだ、と落ち込んでいる営業マンこそ、自分の周りを見渡してみてはどうだろうか。営業だろうがどんな仕事だろうか、「自分が尊敬できるビジネスマン」と仕事をすることこそ、人生の勝機をつかむヒントなのかもしれない。
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取材・撮影(インタビューカットのみ)/佐藤健太 文/大室倫子(ともに編集部)
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