スキルアップ Vol.304

「コワモテなのに丁寧」でトップセールスに~目標175%超えの任侠系営業マンが大事にする愛されギャップ活用法

額に入った深い剃りこみに、陽に焼けた浅黒い肌。深く刻まれた眉間の皺からは左右に細い鋭角の眉が伸び、その下からのぞく眼光は目を合わせた者に緊張感を与える。

そんな任侠映画さながらのビジュアルを持つのは高山勝博氏。彼の仕事は、営業だ。

『銀のさら』などのサービスを運営するライドオン・エクスプレス。高山氏は同社で、人気レストランの宅配代行サービスを行う『fineDine』の営業リーダーとして、加盟店開拓を行っている。彼は同社で、営業目標の175%達成を記録するトップ営業マンなのだ。

怖すぎる見た目を活かして顧客の心を掴む高山氏から、成果を出すために必要な自分スタイルの確立術を学ぶ。

ライドオン・エクスプレス finedine 高山勝博氏

株式会社ライドオン・エクスプレス
ファインダイン事業部 市場開発グループ 営業リーダー デリバリーコンサルタント
高山勝博(たかやま・かつひろ)

大学卒業後、二度の転職を経て、2014年4月、株式会社ライドオン・エクスプレスに入社。現在は『fineDine』の営業リーダーとして後輩メンバーを指導しながら、自らもプレイヤーとして活躍中

飛び込み営業の生命線は、印象に残れるかどうか

「見た目についてはよくお客さまからもイジられますね。『昔、ヤンチャしてたの?』とか、『怪しい会社の人だと思った』とか。一度、名刺交換のときに『これ、本物の名刺だろうね?』って聞かれたこともありました」

そう言って笑う顔は、仁侠映画のようなビジュアルとは打って変わって好青年。そう、高山氏は迫力満点の容貌とは裏腹に、謙虚で誠実。名刺を渡すときも、誰より腰を低く落とし、恭しく頭を下げる低姿勢営業マンなのだ。

高山氏はこの見た目とのギャップを武器に、多くの飲食店オーナーや企業担当者から頼られ、愛されている。

とはいえ、高山氏も最初からこの“ギャップ作戦”をアドバンテージにしていたわけではない。彼がこのスタイルに行き着くには、ある先輩のアドバイスがあった。

ファインダイン 高山勝博氏

「大学卒業後はある一部上場企業でコピー機の営業をしていました。雨の日も雪の日も、ひたすら飛びこみ営業を繰り返す毎日。どれだけ汗をかいても、全然成果につながらなくて。どうやったら売れるんだろうってよく考えていましたね」

新人営業マンの多くが陥る悩みの中にいた高山氏は、ある日、何となく丸刈りにしてみた。すると、出社した自分に社内の視線は集中。面白がった先輩が、こうアドバイスした――お前、そのまま営業に行ったらいいんじゃない?

「それで普段通りに飛び込み営業をしてみたら、これまでと反応がまったく違ったんです。僕はいつもと同様、丁寧に接しているつもりなんですけど、この見た目のギャップのおかげで、同じことを言ってもいろんな人が笑ってくれて。それがアイスブレイクになって、どんどんお客さまと仲良くなれるようになりました」

当時、入社2年目。320人いる営業マンの中で、高山氏の成績は100番台が関の山。3桁の壁を破ることすらままならなかった。しかし、丸刈りにしてから間もなく成績は急上昇。320人中11位まで上りつめた。怖すぎる見た目が、本人も予想外の強力な武器となったのだ。

「飛び込み営業では、お客さまに覚えてもらうことが命。何かあったときに思い出してもらうためには、短いやりとりでも焼きついて離れないくらいのインパクトが必要。それからは意識してこの“ギャップ作戦”を貫くようにしました」

徹底した事前準備でギャップが活きる

ただし、この“ギャップ作戦”を成立させるには、相手の予想を裏切る腰の低さが不可欠だ。そこで、高山氏が心掛けているのが言葉遣い。会話の端々に“クッション言葉”を挟みこんで、一層印象を和らげている。

「何かご提案したりお伺いするときは、必ず頭に『おこがましいんですけど』や『差し支えなければ』と入れてみる。それだけで相手も気持ちいいですよね。人によっては、お客さまにナメられると嫌がる人もいるかもしれませんが、僕が相手の立場だったら高圧的な態度の営業マンより、腰の低い営業マンの方が絶対にいい。だから、とにかく丁寧に対応することを徹底しているんです」

ライドオン・エクスプレス finedine 高山勝博氏

この低姿勢ぶりは、対面だけに限ったことではない。商談後のお礼メールはもちろん、ここ一番の勝負どころでは心を込めて直筆の手紙を送る。

「お恥ずかしいのですが、こう見えて、昔、書道を習っていたんです。ですから、字は人よりも綺麗な方かな、と。このギャップもお客さまに好評です」

高山氏の“ギャップ作戦”はこれだけにとどまらない。

「よくお酒が強そうだと言われるんですが、カシスオレンジしか飲めないんです。以前、飲食店のオーナーとお酒のメニューについて話をしているときに、それを言ったら大ウケで……。以降、僕の鉄板ネタになっています。仕事を始めてからというもの、ビジュアルで得したことばかり。怖い顔に生まれて良かったなと思います」

そうやって鉄板ネタをいくつも仕込んでおくことで、顧客とスピーディーに距離を縮め、受注確度を上げていく。売れっ子営業マンが大事にしているのは、笑いと共感だ。相手と共感の接点を結ぶためにも、初回訪問前は先方のSNSやブログを調べて好きなものをチェックするなど、情報収集にも手を抜かない。

「やっぱり笑って盛り上がった商談の方が上手くいく可能性が高いんですよね。だから、お客さまから見た目についてイジッていただけるのは大歓迎。むしろ相手からイジッてきてくれたら、『よしきた!』って感じですね」

自分の強みは、周りに聞け

生まれ持ってのコワモテを強みに、営業マンとしての資質を開花させた高山氏。だが、誰もが分かりやすい特徴に恵まれているわけではない。自分だけのスタイルを見つけるには、どんな工夫が必要なのだろうか。

ファインダイン 高山勝博氏

「結局、自分の強みなんて自分でいくら考えてもよく分からないもの。だから人に聞くのが一番です。僕もよく学生時代の頃から友達に“顔が怖い”とか“面白い”とか言われていました。そんなふうに他人が自分をどう見ているのか、周辺をリサーチしてみるのは、ひとつの手だと思います」

高山氏を例に挙げれば、怖すぎる見た目は営業をする上でハンデにもなりかねない。それをプラスに変えたのは、「丸刈りで営業してみたら?」という先輩のアドバイスをストレートに実践してみた素直さだ。

「まずは何でもやってみるのが大事。特に若いうちは何回失敗したって、いくらでも取り返せるチャンスはありますから。人から勧められたら、素直に実行してみる。それが思ってもみない自分のスタイルを見つけるきっかけになったりするんですよね」

高山氏のようにインパクト大の外見は持ち合わせていなくも、自分でも見過ごしているギャップは意外とあるものだ。軽くてお調子者に見える人が、意外とマメだったり。いつも真面目なしっかり者に実は抜けているところがあったり。そんな小さなギャップが、人間的魅力となり、自分の強みとなるのだ。

ライドオン・エクスプレス finedine 高山勝博氏

「お客さまだって同じ人間。やっぱり面白い人が商談に来ると楽しいし、何かあったときに声をかけたくなると思います。ちょっとしたギャップを活かして自分の新しい一面を見せれば、今よりもっと仲良くなれるかもしれませんよ」

取材を終えた高山氏は、不安げに「こんな話で大丈夫でしょうか?」と確認した。見た目とは正反対の、このいい人オーラが、顧客をファンへと変えていくのだろう。

取材・文/横川良明 撮影/竹井俊晴

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