人材営業から男子プロバスケ・B.LEAGUEの企画職に転身!好きではじめたボランティアを、本業につなげた男の話
「自分のアイデアを活かして、企画の仕事がやりたい」。そう考える営業マンは多い。さらに付け加えるなら、「せっかくなら興味のある業界で」というのも“あるある”だろう。
その双方を実現させたのが、人材業界の法人営業から、『B.LEAGUE(Bリーグ)』を運営する公益社団法人の企画部への転身を果たした勝井竜太氏だ。2016年秋にスタートしたプロバスケットボールリーグの立ち上げに携り、話題のプロリーグへと育て上げている。もともとスポーツが大好きだったという彼だが、なぜ営業マンからこの“超レア”なポストに就くことができたのか。その理由を探った。
“社外活動”をきっかけに見付けた、本当にやりたい仕事
新卒で大手建設会社に入社し、建設現場のプロジェクト管理をしていた勝井氏。スピード感のある“ベンチャースピリット”が芽生えたことから、入社4年が経ったころに退職。次に選んだのが、人材系企業の営業職だった。
「大手企業の組織は、伝統もあり、一般的には『長年勤め上げれば安定した生活を送れる』という定説もあるかもしれない。だけど、もっと主体的にビジネスの最前線で働きたい気持ちがずっとありました。だからベンチャー意識がある会社に行きたかったのと、組織について考える機会が多かったので、『人材業界×ベンチャー』を軸に転職活動しました。営業は未経験でしたが、挑戦心の方が強かったんです」
職種も業種も異なる転職。当然覚えなければならないことは多く、とにかく人一倍量をこなしてPDCAを回していく日々。その甲斐あって、最初の半年で新人賞を受賞し、その後も継続的に目標を達成。そんな順調な日々を過ごしていた頃、知人に誘われたことをきっかけに、スポーツ選手のセカンドキャリアを支援する社外プロジェクトに参加した。
「会社とは関係のない社会貢献活動のプロジェクトで、副業ではなくボランティア。何となく面白そうだなと思って、フットサル選手の引退後のキャリアについて考える活動に参加していました」
小さい頃からスポーツが好きだったという自分の嗜好と、人材業界での経験が合わさった。元アスリートを社会が受け入れる体制がなく、アスリート自身もうまく能力を発揮できない。この課題に1年近く取り組んでいたことが、現在の仕事に繋がる。
「転職サイトの広告営業マン時代、このプロジェクトをやっていたことがきっかけで、今の会社の営業担当にアサインされました。広告を作るために取材へいったら、そのインタビューがとてもエキサイティングで。プロスポーツの立ち上げって、何て面白そうなんだと衝撃を受けました。今まで趣味でやっていた社外プロジェクトの経験も、人材営業の仕事も活かせるなと感じ、すぐに転職を打診しました。開幕前のリーグでしたし不安も有りましたが、20代はいろいろな経験を積んで市場価値を上げることが大事だと思っていたので、環境の変化はあまり気にしなかったですね」
できることや知識が増えていくほど、理想までの距離感が分かるようになる
営業マンからBリーグ立ち上げの企画職に変わり、今はクラブの支援や選手の研修など、クラブと選手の価値を上げるための仕事を中心に行っている。
立ち上がって2年目のBリーグをビジネスとして成立させるためには、きちんと収益を上げる必要がある。そのための肝となるのが、「選手の価値を上げること」と勝井氏は話す。
「スポーツ業界だって、あくまでビジネス。スポーツであることを理由に、“やりがい搾取”があってはいけません。クラブや選手、そしてバスケットボールの認知が上がり、試合に来るお客さまが増え、収益が増え、それが選手の給料に跳ね返っていく。そのためには、お客さま、コーチ、経営者のそれぞれから、選手が何を求められているのかを理解し、逆算してアクションに変換することが必要です。選手が外側からの視点を意識しながら試合をして、かつ勝利にこだわることが重要。同時に、評価するコーチやスタッフも変わっていかなければいけない。もちろん勝つのはすごく大事だけど、長期スパンで見たら、それだけじゃ足りません」
その構造は、なんだか営業マンと会社に似ている。まるで目の前の売上を上げたい営業マンと、長期的な視点で売る以上のことを求める上層部だ。「『スポーツは特殊』っていう雰囲気が妨げになっている」と勝井氏が話す通り、一般社会でのビジネス経験が活かせる場面は多くありそうだ。
「ビジネスを経験してからスポーツ業界に行ったことが、プラスにならないといけないと思っています。正直今は目の前の仕事を全うしていくことで精一杯ですが、理想を高く持つことが大事です。理想が高いと苦労も多いけど、理想がないとどこにもいけない。最初の会社にいた時、でかいことをしてやろうっていう思いと現実との差に苦しむことがあったけど、できることが増えていくと、なんとなく理想との距離感が見えてきたんですよね。Bリーグや選手の価値を高めるっていう理想と現実の距離感も、いずれどこかで見えてくるんじゃないかと思っています」
仕事の中身は変わっても、ビジネスの基本的な考え方は変わらない
目標数字を目指して法人の顧客を回っていた営業の仕事から、企画の仕事へ。やっていることも、考えることも、仕事の中身はガラリと変わった。しかし、「考える時のベースは同じ」と勝井氏。
「『見立てる、仕立てる、動かす』っていう考え方が前職にあって。現状を見立てて、それに対して何ができるのか仕立てて、そして仕立てたことを動かす。営業をやる中で身に付いた考え方ですが、企画の仕事をするときも、考え方はほとんど同じです。当時から営業というよりは採用コンサルタントという感覚で仕事をしていたので、そういうマインドの部分もあまり変わらないですね」
これまでの経験の中から共通点を探し、それを応用して生かす。異業種・異職種転職の際のポイントとなるスキルだが、勝井氏自身は「できる」という自信があって転職したわけではなかったという。
「元々そんなに自信があるタイプではないんです。人って達成の可能性が全くないと動かないじゃないですか。そういう意味では、アスリートのセカンドキャリアの課題に取り組んでいたこともあって、『やってみよう』と思えた。だったら可能性はゼロではないだろうっていうくらい。自分のレベルからすると、今の仕事は要望のレベルが高いけど、それだけ成長実感もあります」
誰もが“やってみたい”と思う仕事は、経験者採用に限られていたり、ポストが少なかったり、狭き門であることも多い。「どうせ無理だろう」と諦めてしまいがちだが、勝井氏のように、社外の活動でやりたい仕事と関連する経験を積むという道もある。そして、今の仕事が次にやりたい仕事にいかに活きるのか、自分なりに考えてみよう。
社会全体で残業が削減され始め、国が副業を推奨している今、社外活動へのハードルはぐっと下がった。やりたいことがあってモヤモヤしているなら、今の仕事を続けながら、プライベートで興味のある分野に飛び込んでみること。勝井氏のキャリアがそれを証明するように、積極性と熱意が持てた時、きっと「やりたいこと」への道は開けるはずだ。
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取材・文/天野夏海 撮影/大室倫子(編集部)
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