キャリア Vol.487

「絶望」から「羨望」の職場に変わったのはなぜ? サイボウズの営業部を変えた男が“超ブラック企業”時代を振り返る

ノー残業、フレックス、テレワーク……世の中では“働き方改革”が進んでいるが、営業職に限ってはなかなか長時間労働から抜け出せない企業も多いのではないだろうか。「お客さまありきの仕事なんだから、そう簡単には改革なんて進まない」という現場の諦めムードも漂う。

働き方改革の先進をいくサイボウズでも、営業部は独自の文化を持ち、いわゆる「ガラパゴス化」していたという。その脱却を図ったのが、同社パートナー営業部の伊藤英高氏だ。彼はどのようにして、営業部のガラパゴス化を救ったのだろうか。

2017年11月9日、幕張メッセで行われた『CybozuDays 2017』内のセッション、『営業はガラパゴスと言われたリーダーの逆襲』から紹介する。

パートナー営業部の伊藤英高氏
サイボウズ パートナー営業部 伊藤英高氏

朝7時出社に飛び込みノルマ……そんな風習は営業部だけだった

かつては「残業上等」で、属人化している仕事だらけ……社内で‟ガラパゴス”と呼ばれる部署。それが私の所属するサイボウズの営業部でした。

私が入社した2008年、全社は朝9時出社でしたが、営業部の新人だけ朝7時にくるように言われていました。朝早く来て、その日の日経新聞の読み合わせをして、気になった記事を発表するのです。

その後は新人にのみ課される「100万円研修」と呼ばれる飛び込み研修ををこなします。新人に渡されるのは自分の営業エリアの地図1枚。飛び込み営業で売上100万円を達成するまでは、正式に配属してすらもらえません。「営業部署の社員」として見なしてもらえないんです。

また、当時20名程度の部署で、先輩たちは忙しく社内にほとんどいません。他部署では先輩が丁寧に新人を指導していましたが、営業部の新人はとにかく1人で現場に出て、経験で覚えるしかなかったんです。

この世界しか知らない私は、営業といったらこんな仕事が当たり前だと思っていました。ですがある時、近くにいたマーケティング部の部長に言われたんです。「全社ルールに馴染まないガラパゴスルールでやっているのは、営業部だけだよ」と。

「仕事ってこんなもんだろう」と思って頑張っていたものの、この一言を聞いて絶望しましたね。 あぁ、うちの部署だけ閉鎖的で古臭い体質だったんだと。他の会社でも、営業部ってどこかそんな風習があったりしますよね……。まさに、会社の中で“ガラパゴス化”してしまっていたんです。

このままじゃマズい!ブラック企業からの脱出のヒントは「仕訳と共有」にあり

入社して1年が経ち、私は大阪異動を命じられました。行った先は、ガラパゴスのさらに僻地のような部署。なんと営業担当者は私と上司の二人だけで、近畿二府四県をカバーしなければいけない激務の環境だったのです。朝早く出社し、終電帰りが当たり前の毎日でした。さらに二人しかいないのに、突然上司が辞めると言い出して。あぁ、さすがにヤバイなと思いました(笑)。

営業メンバーは自分一人。担当は近畿二府四県。しかも会社からメンバー補充はしばらくできないといわれて絶望していたのですが、私には幸いにも営業アシスタントが一人いたんです。

そこで、まずは自分が持っている業務の棚卸と仕訳をしました。交渉やセミナー講師、打ち合わせ、案件同行などの自分しかできないことと、日程の調整、製品問い合わせ、カタログ発送などの自分でなくてもできることを分けてみたのです。

パートナー営業部の伊藤英高氏

自分でなくてもできる仕事をアシスタントに手伝ってもらえたおかげで、業務は少しだけ楽になりました。しかしお客さまからの連絡は全て自分宛てに来ていて、対応してほしい仕事をメールでアシスタントに転送するスタイル。全ての業務に自分が介在していたんです。それってすごく非効率ですよね。

そこで思いついたのがメールワイズというメール共有のソフトです。全てのメールを私とアシスタントで共有して、彼女でも対応できそうな案件にはどんどん返信してもらいました。ツール上で「この案件は対応したので伊藤さんはやらなくて大丈夫です」というメモを残しておいてもらえれば、連携ミスもなくなります。

それまでの私は、「僕宛にお客さまからメールがきてるんだから、僕から返さなきゃ」と思い込んでいました。でもお客さまが求めてたのは、問い合わせに対する速くて正確な返事。それって実は、「私がやらなくてもいい仕事」だったんですよね。

パートナー営業部の伊藤英高氏

そうして空いた時間で、打ち合わせなど「営業の自分にしかできない仕事」に充てることができました。

ITツール1つ入れただけでチームの風土が変わった

しばらくして私は東京に戻りましたが、そこには‟ガラパゴス第二章”が待っていました。東京部署でも同じく、増えない人員に鳴りやまない電話。やむなく土日も仕事する事態になっていました。

さらに特定の販売店のみを担当する体制だったので仕事は属人化。とはいえ個人のメールは「必要であれば転送する」というルールでした。そのため一人でも抜けたら現場がまわらなくなってしまいます。

私は大阪での体験から「メールワイズ」の導入をすぐに決めましたが、導入当初はメンバーから非難轟々でした。「個人に来ているメールを共有したくない」、「絶対に業務効率が落ちると思う」と嫌がられたものです。

しかし運用を開始して3カ月目には良い変化が生まれてきました。例えば今まで各自オリジナルで対応していた返信メールのテンプレートができたり、効果的な使い方を考えるようになったのです。

結果的に、運用してから1年が経った今では週3で18時に退社できるようになりましたし、休みたいときは安心して休めるようになりました。さらにチームの売上は6億円から12億円にアップ。ITツール一つ入れただけですが、メールが共有できたことで、メンバーがやりたいことを実現したり、お互いに良いおせっかいを焼くようになったりと、風土も少しずつ変わってきた実感があります。

会社のメールは会社の資産です。個人のものではありませんし、こういった属人化が営業の働き方改革を阻んでる要因の一つなんだと思います。「私が対応しなきゃ」という既成概念を疑えば、ガラパゴス部署になりがちな営業部でも、働き方改革を実現することはできるはずです。

「それ、本当にあなたにしかできない仕事ですか?」まずは疑うことから始めてみてください。

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取材・文・撮影/大室倫子

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