南 直哉(みなみ じきさい)1958年、長野県生まれ。禅僧。青森県恐山菩提寺院代(住職代理)、福井県霊泉寺住職。早稲田大学第一文学部卒業後、大手百貨店勤務を経て、1984年に曹洞宗で出家得度。同年から曹洞宗・永平寺で約20年の修行生活を送る。『禅僧が教える心がラクになる生き方』(アスコム)など、著書多数。
「子どもができても仕事を続けられるのか不安」営業マンの“モヤモヤ”を、恐山の禅僧・南直哉さんに相談してみた(4)
「僕、営業に向いてないみたい」、「仕事を続けられるか不安」……。営業としても、ビジネスパーソンとしても、まだまだ自信が持てない若手は多いはず。上司や同僚には相談しにくい、営業type読者から寄せられた‟心のモヤモヤ”を、元会社員であり現在は恐山の禅僧として活躍する南直哉さんにぶつけてみた。日々さまざまな人の心を救ってきた直哉さんの一言が、若手営業マンの悩みの突破口となるかもしれない。
子どもができても営業を続けられるのか不安です
→犠牲を払うことを嘆くのではなく、犠牲を意味のあるものに変えていこう
【お悩み】今の会社も、営業の仕事も大好きなのですが、忙しすぎて子どもができても働けるとは思えません。今年結婚したので子どもが欲しいと思う反面、子どもができるのが怖いと思う時もあります。仕事は私の人生の一部といえるほど大事だと思っていますが、家族のことを優先すべきでしょうか? (27歳/広告)
あなたの中に、既に答えがあるように思います。「営業の仕事も大好き」で、「結婚したので子どもが欲しい」のであれば、両立できるように工夫するしかありません。夫と相談して家事・育児の分担を決めたり、保育園を探したり、会社や自治体の制度を活用したり、あらゆる手段を駆使して打てる手を打っていくことです。
もちろん両立をするには、手間やコストがかかることは間違いありません。どれだけ手を尽くしても両立は難しいとなれば、仕事か子どもか、どちらかを選ばなければならないでしょう。
誤解のないように言っておくと、私は女性に大きな負担をかけている現状が正しいとは思いません。仕事も子育ても誰もが無理なく両立できるのが、あるべき社会の姿だと考えています。
ただし現実に、仕事か家庭かの選択を迫られる人もいます。さまざまな事情で全ては手に入らない、どこかで何かの犠牲を払わなければならないという場面が、人生にはたびたびあります。
その時の問題は、犠牲が出ることではなく、犠牲をどう受け止めるかです。代償を払って手に入れたものを大切に守り、育てていくことができれば、「あの時に払った犠牲には意味があった」と納得することができるでしょう。
意味があると感じられるかどうかは、人間関係が大きな鍵を握ります。例えば仕事を捨てざるを得なかったとしても、夫や子どもとの関係、両親や親戚、地域の人々の関係が良好で、ますます充実したものになれば、犠牲を払った甲斐があるというものですし、後悔も小さくてすむのではないでしょうか。子どもも仕事も手に入れて、自分の時間やゆとりは失われても、職場でも家庭でも、皆に必要とされている実感が持てれば、乗り切っていけるはずです。
近い将来、大きな決断をしなければならないのであれば、今のうちから身の回りの人間関係を整えておくと良いでしょう。気を付けてもらいたいのは、「一方的に相手の理解を得ようとしない」こと。相手に理解してほしいのであれば、きちんと自分の思いや考えを伝えましょう。夫婦のような身近な関係であっても、「言わなくても分かる」なんてことはあり得ない。お互いに声を掛け合い、いたわり合って、コミュニケーションを深めていってください。
バックナンバー:営業マンの“モヤモヤ”を、恐山の禅僧に相談してみた
1・「直哉さん、僕もう営業辞めたいんですけど……」
2.「職場・お客さまとの関係構築ができなくてつらい」
3.「私、営業に向いてない気がする」
取材・文/瀬戸友子 写真/大室倫子(編集部)
本書は、不安・執着・嫉妬といったさまざまな感情から起こる苦しみの正体を知り、その「取り扱い方」を身につけられる本です。
「悩みや苦しみの原因は、ほとんどが人間関係」
その問題をクリアに見ていけば、じつは解決の糸口は意外に身近なところにあります。>>詳細はこちら
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